第126話 『好き』伝えられた想い
ドキドキドキ――。
胸の音が、自分でもわかるくらい響いていた。
「俺、唯のこと好きだ。
ずっと前から……。
誰にも渡したくない。流斗にも」
「あ……」
“私も”って言いたいのに、喉が詰まって何も言えない。
ずっと願ってきた奇跡が、今、目の前に――。
想いがあふれて、胸がいっぱいで、言葉にならなかった。
「今さら、遅いかもしれないけど……」
「遅くない!」
ようやく、声が出た。
「私も……お兄ちゃんが、好き!」
その言葉に、兄の目が大きく見開かれる。
周囲の人たちも、ちらちらとこちらを振り向く。
しまった。お兄ちゃんって……つい言っちゃった。
ちょっとまずかったかも、と慌てる。
兄は何も言わず、ふいに視線を落とした。
ど、どうしたんだろう……。
不安になりかけたそのとき、兄がゆっくりと顔を上げる。
そして、静かに私の方へ歩み寄ってきた。
すぐ目の前で立ち止まった兄が、まっすぐに私を見下ろす。
至近距離で見つめられて、心臓が暴れるみたいに鳴った。
やばい、このままじゃ変身しちゃう……。
必死に息を整えようとするけど、うまくいかない。
「唯……本当か? 俺のこと、好き?」
不安げに問いかける兄の表情が、可愛くて――笑みがこぼれた。
「うん、好きだよ。
お兄ちゃんのお父さんのことも、大丈夫。
気にしてないって言ったら嘘になるけど……
でも、この“好き”って気持ちは、変わらない」
私の言葉に、兄の表情がゆっくりとほどけていく。
「ありがとう、唯。俺、幸せだ」
「私も……」
自然と、おでこがくっついた。
すぐ目の前に兄の顔がある。
どうしていいかわからなくて、視線をさまよわせた。
「なあ、俺のこと……咲夜って呼んで」
顔が一気に熱くなる。
恥ずかしい……。
優のときは呼んでいたけど、唯としては、これが初めてかもしれない。
何かを吹っ切るように、私はその名を口にした。
「咲夜」
「っ……唯、大好きだ」
兄が私を、ぎゅっと抱きしめる。
その腕の中にいるだけで、胸がきゅっと締めつけられて、息が苦しい。
すぐそばにある大好きな人の体温、吐息、鼓動――全部が重なって、くらくらしてしまう。
そして、兄は愛おしそうなまなざしで私を見つめてきた。
頬が熱い。
私は今、どんな顔をしているんだろう。
ゆっくりと距離が縮まっていく。
兄の顔が、ほんの少しずつ近づいてきて――
鼓動が、破裂しそうなほど高鳴った。




