第122話 予想外の一言、遠ざかる距離
それから両親と合流して、残りの時間は家族みんなで過ごした。
賑やかで、笑顔があふれていて――
それはそれで、すごく幸せな時間だった。
でも、本音を言えば、もう少しだけ……二人でいたかった。
それでも、確実に前に進んでいる気がする。
今日みたいに柔らかな空気の中で過ごせただけで、十分満足だった。
こんな機会をくれた両親には、ほんと感謝だよ。
帰り道の車の中。
父が運転席、母が助手席。
そして、私と兄は後部座席に並んで座っていた。
膝の上に抱えたセーターの包みを見つめる。
思いがけない兄からのプレゼント。
嬉しくて、自然とまた頬がゆるんだ。
「なあ、唯」
ふいに兄が声をかけてきた。
「なに?」
そのときの私は、まだふわふわした気持ちに包まれていた。
今日はいい日だったな――なんて、呑気に思っていた。
けれど――
次に放たれた兄のひとことで、その気持ちは一瞬で吹き飛んだ。
「流斗と、うまくいってるんだな。
俺、おまえの彼氏が流斗でよかったって思ってる。
あいつの前にいるときの唯は……なんかすごく幸せそうでさ。
俺、応援するから」
……は?
え? えええ!!
ちょっと待って、なにそれ。
この前言ってたことと、全然違うじゃん。
流斗さんと一緒にいる私を見るのは辛いとか、
私のこと、好きだとか、
誰にも渡したくないって……言ってたよね?
あれ、夢だったの?
唖然として、言葉が出てこない。
兄はそれっきり何も言わず、黙り込んでしまった。
私の方を見ようともしない。
二人のあいだに、じわじわと重たい空気が広がっていく。
私はただ戸惑いながら、兄の横顔を見つめるしかなかった。
……こんなはずじゃなかった。
こんな展開、予想できるわけない。
だって、今日はいい感じだったじゃない。
お兄ちゃんとの距離が縮まった気がして、嬉しくて。
まさかの急展開に、気持ちが一気にずーんと沈んでいく。
そんな私の気持ちとは裏腹に、車内の前方では両親が明るい声で談笑していた。




