第121話 アイスのルール、二人だけの秘密
セーターの入った紙袋をぎゅっと抱えながら、兄の横を歩く。
モールの通路には、家族連れやカップルの笑い声があふれていた。
こんなふうに二人で並んで歩くの、いったいいつぶりだろう。
あの日から続いていた気まずさが、まるで嘘みたい。
しかも、兄からプレゼントまでもらえるなんて……嬉しくて泣きそうになる。
このまま、少しずつでも前のような関係に戻れたら――。
そんな淡い期待を抱いて微笑んでいると、兄がふいに声をかけてきた。
「なあ、アイス食べるか? おまえ、好きだろ」
「う、うん」
私が頷くと、兄がふっと優しく笑った。
トクン……胸がときめく。
やっぱり、お兄ちゃんの笑顔、好きだ。
こんな時間がずっと続けばいい――そう思いながら、私は兄と一緒にアイスクリーム屋さんへ向かった。
私が選んだのはストロベリー、兄はバニラ。
どちらも、私の好きな味だった。
ストロベリーを選べば兄はバニラを、バニラを選べば兄はストロベリーを――
そうやって半分ずつ分け合うのが、昔からの私たちのお約束。
レジでアイスを受け取り、そのまま店の端にある小さなテーブルへ向かう。
兄と向かい合って椅子に座ると、すぐにストロベリーアイスにかぶりついた。
「んーっ、美味しい〜!」
その声に、兄がくすっと笑う。
ちらりと兄の様子を窺う。
今回は、どうするんだろう。
今までと同じには、きっといかない。
私は兄の気持ちを知ってしまったし、兄だって私を意識しているはずだ。
「なんだよ、欲しいのか?」
視線に気づいたのか、兄が自分のアイスを私の方へ差し出してきた。
「うっ……」
ど、どうしよう。
でも、ここで変に意識して気まずくなるのは避けたい。
きっと、いつも通りに振る舞うのが一番だ。
思いきって、そのアイスにかぶりつく。
「……っ」
その瞬間、兄が小さく息をのんだ。
えっ? 今、私、何か間違えた? でも差し出したのはお兄ちゃんでしょ?
そっと顔を見れば、頬がほんのり赤く染まっていた。
「ご、ごめん……ちょっと気が、動転した」
視線を逸らし、焦ったように兄がつぶやく。
な、なにそれ……こっちまで恥ずかしくなるじゃん……。
二人とも黙り込んでしまう。
「も、もうそろそろ母さんたちに連絡取ってみるか」
兄はいそいそとスマホを取り出し、電話をかけた。
な、なによ……私と二人じゃ息が詰まるってこと? ひどい。
なんだか、むしゃくしゃする。
その気持ちをぶつけるみたいに、私はアイスにもう一度かぶりついた。




