表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます  作者: 桜 こころ
衝撃の真実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

114/152

第112話 月明かりの下で、泣いた夜

 今は、両親とも顔を合わせたくないし、話す気にもなれない。

 私は部屋にあったパーカーを羽織り、玄関に転がっていたスニーカーを無造作にひっかけると、そのまま家を飛び出した。


 何も考えられない。足だけが勝手に動く。

 夜風が冷たく、街灯の光がにじんで見えた。

 通りを曲がったのか、まっすぐ歩いたのかすら覚えていない。


 どれくらい歩いただろう。

 気がつけば、近所の公園に立っていた。



 夜の公園は、妙に静かで……不気味な雰囲気が漂う。

 でも、不思議と怖いとは思わなかった。


 街灯の明かりが闇夜を照らし、暗い空にはまんまるの月が浮かんでいる。


 誰もいない。遠くの車の音や風のざわめきも、どこか遠くに感じられた。


 いつもの私なら、こんな場所に一人でなんていられない。

 でも、今は平気だった。何の感情も沸いてこない。


 私は近くのベンチに腰を下ろした。

 大きく息を吸い込んで、夜空を仰ぐ。


 母の死の真相――私だけが知らなかった。


 胸がじんじん痛む。

 視界が滲み、一粒の涙が頬を伝っていった。


「はあ……」


 大きく息を吐き出した、そのとき。


「唯さん!」


 闇を裂くような大きな声が響いた。


 街灯の下、息を切らせて走ってくる流斗さんの姿が見える。


「ると、さん?」


 駆け寄ってきた彼が私の前で足を止める。

 肩で息をしながら、ほっとしたように目を細めた。


「よかった……。まったく、女の子がこんな時間に、一人で危ないでしょう?」


 そう言って、ふわりと優しく微笑む。

 いつもの笑顔。


 それにつられるように、私も少しだけ笑った。


「ふふっ、でも今の私は男です。だから大丈夫」


 そう――さっき、優に変身してしまった。


 流斗さんが、改めて私の姿を見つめ、はっとしたように目を見開いた。


「一本取られましたね。でも、優くんの姿でもやっぱり危ないですよ。

 だって、唯さんは男でも可愛いですから」


 流斗さんは軽く笑って、私の隣に腰を下ろした。


 しばしの静寂が流れたあと、彼がゆっくりと口を開いた。


「咲夜から連絡があって。唯さんのこと、すごく心配してた。

 でも自分では行けないって……僕に頼んできたんです」


 お兄ちゃん……。

 あの傷ついた顔が、よみがえる。


 また、涙がにじんだ。


「唯さんの気の済むまで、お付き合いしますよ」


 流斗さんは優しくそう言った。

 そして、それ以上何も言わず、ただ隣にいてくれた。


 私は、自分の中のぐちゃぐちゃした気持ちをどうにかしたくて、ぽつりぽつりと話し出す。


「……私、もう、わけがわかんなくなっちゃって。

 気持ちの整理がつかないんです」


 言った途端、こらえていた涙がいっきに溢れた。


 声を押し殺そうとしても、嗚咽は止まらない。

 (せき)を切ったみたいに、涙が流れ続けた。


 流斗さんがそっと肩を抱き寄せてくれる。

 その胸に顔を埋め、私はただ泣き続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ