第107話 帰り道は、ちょっとだけセンチメンタル
こうして学園祭は終わった。
私は片づけに追われるみんなを横目に、ひと足先に学校をあとにする。
だって仕方ない。今の私は優だから。
唯がいないこと、きっとみんな不思議に思ってるだろうなあ……。
途中から姿を消しちゃったんだから。
心の中で「ごめんね」とつぶやきながら、さっきのことを思い出す。
帰ろうか残ろうか迷っていた私に、流斗さんがそっと近づいてきて、耳打ちした。
――「あとのことは任せてください」
その一言で、私は腹をくくった。ここは流斗さんに任せようって。
だけど、校門を出たところで――とつぜん発作がきた。
胸がドクドク暴れて、視界が揺れる。
気づくと、私は唯に戻っていた。
「あ、危なかった」
思わず胸を押さえ、辺りを見回す。
蘭がいなくてほんとよかった。いたらどう対処していいか混乱しただろう。
きっと今ごろ、彼女はクラス代表として後片づけに追われてるはず。
テキパキ指示してる姿が目に浮かんで、つい笑みがこぼれる。
蘭ってほんと元気だよね。ああいうところ、好きだし憧れる。
……でも、勝手にいなくなったこと、きっと怒ってるんだろうなあ。
まあ、あの子のことだから、明日にはもうけろっとしてそうだけど。
今日、蘭ほんとに楽しそうだったな。
優になって良かった。なんて少しでも思えるのは、間違いなく彼女のおかげだ。
そうでなければ、この変身に感謝なんてできそうにない。
ふと足を止め、自分の姿を見下ろす。
唯の顔に、男子の制服。やっぱりかなりややこしい。
理事長室に戻れば着替えられるけど……さすがに今さら面倒だし、また誰かに見られたら余計ややこしい。
「うん、もういいや。帰ろ」
小さくつぶやいて、制服の袖で顔を隠すようにしながら歩き出した。
人気の少ない道を選んで、少し足早に家へ向かう。
今日は本当に、いろいろありすぎた。
大きく息が漏れる。
――はあ……疲れた。




