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義兄に恋してたら、男になっちゃった!? こじ恋はじめます  作者: 桜 こころ
とまどいの学園祭

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第103話 変身は突然に。お化け屋敷デート

 中は薄暗く、赤いランプがぼんやりと辺りを照らしていた。


 空気までひんやりしているのは、ドライアイスのせいらしい。足元には白い煙がもくもくと漂っている。


 壁には血の跡のような赤い染みが点々とつき、不気味な木のオブジェが等間隔に置かれていた。

 葉っぱに触れるとひやりと冷たく、背筋がぞくりとする。


「唯さん、大丈夫ですか?」


「あ、はい」


 怯える私を気遣って、流斗さんが寄り添って歩いてくれる。

 頼るように、そっと彼のそばへ身を寄せた。


 しばらく進むと、古びた井戸を模したオブジェが現れる。


 ……絶対、あそこから出てくるやつだ。


 足がすくんで立ち止まると、流斗さんが軽く笑った。


「大丈夫ですよ。僕が先に行きますから」


 そう言って、私の手をぎゅっと握り直す。

 その温もりと優しさに、ほっと胸がゆるむ。


 私は流斗さんの背中に隠れるようにして歩き出した。


「わあっ!」


 案の定、井戸から幽霊役の生徒が飛び出してきた。

 けれど私は流斗さんを盾にしていたおかげで、それほど驚かずに通り過ぎることができた。


 流斗さんはまるで動じてない。

 振り返ると幽霊役の子がぽかんと私たちを見送っていた。


 ……なんだか、申し訳ないな。あの人は脅かすのが役目なのに。


 それにしても、流斗さんってこういうの全然平気なんだ。

 怖がりな私からすれば、これ以上頼もしい人はいない。


「ね、大丈夫でしょ?」


 振り向いて微笑む彼に、私は素直に頷いた。


「は、はい」


 流斗さんと一緒だと、不思議と安心できる。

 何があっても守ってくれる――そんな気がした。


 もし、本当に流斗さんを好きになれたなら。どんなに幸せだろう。


 私は彼の手をそっと握り返した。




 その後も、私は流斗さんのおかげで暗闇の中をなんなく進むことができた。

 本来なら、わあっ、きゃーと叫ぶ場面ばかりなのに。落ち着いて歩けることが不思議なくらいだった。


 そして「ゴールまでもうすぐ!」の看板が目に入った瞬間――油断した。


 横から、化け猫の仮装をした生徒が奇声を上げながら飛び出してきたのだ。


「きゃあーっ!」


 思わず流斗さんにしがみついた。

 しかし、化け猫はそのまま走り去り、辺りはすぐ静まり返る。


 ……やば。私、なにやってんの。


 密着する体に、意識がもっていかれる。

 頬が熱くなり、息が詰まる。


 気まずさに耐えきれず顔を上げると、至近距離に流斗さんの顔があった。


「流斗さん……」


「……唯さん」


 静かに見つめ合う。

 沈黙の中、胸の鼓動だけが妙に大きく響いていた。


 流斗さんの顔が、ゆっくり近づいてくる。


 ダメ、それだけはダメ。

 心の中で必死に叫んでも、身体が動かない。

 鼓動がどんどん速くなっていき――


 そのとき。


 ふいに流斗さんの表情が変わった。

 驚いたような目で、じっと私を見つめてくる。


 いやな予感がした。


「また……ですか?」


 恐る恐る尋ねると、彼は困ったように微笑んだ。


「また、です」


 そう、私は再び――優に変身してしまったのだった。


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