第100話 甘い匂いと、甘い視線
模擬店が並ぶエリアにやってきた。
校門から玄関までの通路沿いに、たくさんの食べ物屋が立ち並んでいる。
焼きそば、たこ焼き、フランクフルト、ホットドッグ、うどんにそば。
さらにはクレープやわたあめといったデザートまで揃っていて、甘くて香ばしい匂いがそこかしこに漂っていた。
「うわ〜、いい匂い」
私が鼻をクンクンさせると、流斗さんがクスクスと笑う。
「な、なんですか?」
「いえ、なんでも」
ニコニコと笑う流斗さんは、なんだかとてもご機嫌。
「さ、何を食べたいですか?」
そう問われて、私は少し考え込む。
「うーん、たこ焼きと……わたあめがいいです」
そう言った途端、流斗さんは笑顔のまま固まり、顔を背けてしまった。
「え? る、流斗さん?」
わけがわからず顔を覗き込もうとすると、ほんの少し距離を取られてしまう。
……いったい、なに?
私が戸惑っていると、
流斗さんはすぐに振り返って、いつもの柔らかな笑顔を浮かべた。
「すみません。ちょっと……あまりに唯さんが可愛くて、自制しておりました」
「えっ?」
言ってる意味がわからない。
「じゃあ、僕が買ってきます。唯さんは、あそこの席で待っていてください」
指さされた先には、模擬店用に用意されたテーブル席がいくつか並んでいる。
混んではいるけど、空席もちらほら見える。
「わかりました。じゃあ席、取っておきますね」
流斗さんを見送ったあと、私は空いている席へと向かった。
ほんと、みんな楽しそう……。
行き交う人たちの笑顔を見ていると、こっちまで嬉しくなる。
私は席に腰掛け、ぼーっと人並みに目を向けていた。
それにしても、カップルが多い?
私と流斗さんも、あんなふうに見られてたのかな。
がやがやとしたお祭りムードに酔いしれていると――
人混みの向こうから、流斗さんがこちらへ駆け寄ってくるのが見えた。
私は手を振って合図した。
「お待たせしました」
流斗さんは微笑みながらトレーをテーブルに置いた。
目の前に並んだのは、たこ焼きとわたあめ。お願いした通りだ。
つい目が輝いてしまう。
そのまま向かいに腰を下ろすと、流斗さんはなぜかじっとこちらを見つめてきた。
視線の意味がわからず、問いかける。
「ありがとうございます。あの……何か?」
流斗さんは一瞬口を開きかけ――けれど、子どもみたいに照れた笑顔で誤魔化した。
「ううん、さ、食べましょう」
なんだろう。さっきから流斗さん、謎の行動がおおいな。
それに、彼のテンションがいつもより高いような……?
まさかね、あの流斗さんだよ。浮かれるなんてこと。




