第99話 幸せな時間に、すきま風
観賞を終えた私たちは体育館を出た。
そのとき、ふと風に乗って軽やかな音楽が耳に届く。
運動場の方から流れてきているようだった。
その音に誘われるように向かってみると、そこではファッションショーが開催されていた。
ランウェイの上では、煌びやかな衣装を身にまとった生徒たちが堂々と歩いている。
カラフルな照明がステージを照らし、軽快な音楽が場を盛り上げていた。
モデル役の子たちは、ポーズを決めたり手を振ったりしながら、観客の視線を集めている。
「すごい……」
目を輝かせると、流斗さんがくすりと笑った。
「見て行きましょうか」
「はい!」
観客席はかなりの混雑ぶりだった。
その中で、流斗さんは人混みからかばうように、背中へそっと手を添えてくれる。
伝わる温もりに、胸の鼓動が落ち着かない。
ほんと、まいっちゃうよね。こういうとこ。
彼氏として言うことなしなんだから。
ぼうっと見つめていると、流斗さんがふとこちらへと視線を向ける。
目が合ってしまい、私は慌ててステージへと視線を戻した。
ステージを見終わった私たちは、またあてもなく歩き出す。
「はぁ~、素敵だったぁ……」
ぽつりとこぼしたとたん、ぐぅ、と私のお腹が鳴った。
「ははっ、可愛い音ですね」
「わ、笑わないでください!」
顔が熱くなって、俯いてしまう。
そういえば、朝から準備や接客でバタバタしていて、食事をとる暇がなかった。
お腹を抱える私に、流斗さんが困ったような笑みを向ける。
「気がつかなくてすみません。唯さん、すごく頑張ってましたもんね」
「……え、まあ。いえ、そんな」
こっぱずかしいあの服装が脳裏に浮かんで、私は苦笑いを浮かべる。
でも、頑張りを認められるのは、やっぱりちょっと嬉しい。
流斗さんがにこっと笑って、私の手を取った。
「模擬店、行きましょう。なにか美味しいものを見つけに」
その笑顔につられて、思わず笑みがこぼれる。
でも――
兄のことが、ふと頭をよぎる。
いま、この時間は幸せなはずなのに。
……どうして、こんなに心がざわつくんだろう。




