第98話 ふたりきりの学園祭
校舎の中も外も、どこを歩いても華やかだった。
通路の奥から音楽が聞こえてきたり、香ばしい匂いがふわっと漂ってきたり――。
まるでお祭りの町みたいで、あちこちに人の笑顔と賑やかな声があふれている。
流斗さんに手を引かれるまま、私はいろんな場所を巡った。
まず最初に挑戦したのは、通りすがりの輪投げ。
私は一投目から全滅だったけど、流斗さんはあっさり全ての輪を通してしまった。
「さすがですね……」
「いやあ、たまたまですよ」
照れたように笑って、景品のキャラメルを差し出してくれる。
包みを開けて口に入れると、甘くて、ほろっと優しい味がした。
ふたりで顔を見合わせて笑う。
なんだか、少しくすぐったい。
そのあと、隣のクラスで見つけたクレーンゲームにも挑戦。
私は空振りばかりだったけど、流斗さんは迷いのない手つきでアームを操り、まるで簡単そうに箱を取ってしまった。
「これ、なんでしょうね?」
首を傾げた流斗さんが箱を開け、中を確かめる。
「あ、可愛い……」
ピンクの花柄の写真フレームを、彼はそっと私に差し出してくれた。
「どうぞ。唯さんに似合いそうです」
それを素直に受け取る。
……照れる。けど、すごく嬉しい。
「ありがとうございます」
私が笑うと、流斗さんも嬉しそうに笑った。
次はどこへ行こうかと、ふたりでぶらついていると、廊下ですれ違った生徒からチラシを受け取った。
そこに書かれていた「プラネタリウム」の文字に目をとめる。
体育館でやっているらしい。
「行ってみませんか?」
「ええ、ぜひ」
微笑むと、流斗さんはさりげなく私の手を握った。
抑えきれない鼓動に、思わず視線を落とす。
そんな私を見て、彼はふっと笑った。
その笑みを横目に捉えながらも、私は繋いだ手をぎゅっと握り返すことができなかった。
体育館の中は想像よりもずっと暗く、天井には無数の星が静かに瞬いていた。
ドームいっぱいに広がる星々が、ゆっくりと流れ、まるで本物の夜空の下にいるみたい。
学園祭の出し物でここまでのクオリティって、すごい……。
流斗さんがそっと私の手を引く。
そのまま導かれるようにして、彼の隣に腰を下ろした。
しばらく星を眺めながら、静かな音楽とナレーションに浸る。
ふと横を見ると、流斗さんの横顔が星の光に照らされ、やさしく浮かび上がっていた。
綺麗……息をするのも忘れそうになる。
はっとして、すぐに目をそらした。
違う! なにやってんの、私。星を見に来たんでしょうが。
自分にツッコミを入れて、慌てて気を引き締める。
それに……私にはそんな資格ないもの。
少し落ち込みつつ、そっと目線を上げる。
瞬く星々が、やけにまぶしくて――胸の奥の痛みをそっと浮かび上がらせた。




