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Gal Monk  作者: Futahiro Tada
10/10

ギャル、坊主になる

 夏休みもあと数日で終わる。

 俺の夏休みは、とにかく仏教色に染まったよ。

 歎異抄を読んでみたり、五木寛之さんの「親鸞」に目を通したり。

 親鸞聖人は知るほどに奥が深い人物だ。

 日本が生んだ、偉大なお坊さんでありながら、思想家でもある。

 俺も親鸞聖人の教えをもっと知りたい。

 そのために、今は色んな本を読み、勉強していくのだ。

 その日の夜――。

 美沙から連絡があった。

 どうやら、今日東京に向かって旅立つらしい。

 新幹線で行けば楽なのに、美沙は高速バスという選択を取ったみたい。

 新潟から東京の新宿まで向かうバスが、いくつか出ている。

 それに乗るらしい。

 出発は二十三時。

 俺は出発前にバスセンターに行き、そこで美沙の見送りをすることにした。

 すると、意外な美沙がそこにいた。

 なんと、美沙は坊主頭になっていた。

 帽子をかぶっていたけれど、ギャルの容姿に坊主というかなり奇抜な格好になっていた。

「坊主にしたのか?」

「うん、得度したから」

「得度って僧侶になる儀式だよな」

「女子は坊主にしなくてもいいんだけど、人生で一度くらい坊主にしてもいいかなって。まぁ、いいじゃない」

「可愛いと思う。小坊主みたいで」

「それ褒めてんの?」

「褒めてるよ。美沙頑張れよ。俺も頑張るから」

「うん」

 美少女×坊主×ギャル……。

 美沙、とにかくお前は凄い奴だよ。

「美沙、しばらくお別れなんだな」

「そうね。お別れね……」

 美沙は少し寂しそうな顔をした。

 その顔を見た俺は、思わず彼女を抱きしめてしまった。

「えぇぇぇぇ。ちょっとあんた何してるのぉ?」

「好きだから。それ忘れないでね」

「……き」

「え?」

「だからあたしも好き……、バカ!」

 そう言うと、彼女は俺にキスをしてきた。

 淡く触れるだけのキスが展開される。

 キスを終えると、美沙は言った。

「好き。だから、あんたも元気で……」

 そして、美沙は最後に親鸞聖人の言葉を継げる。


「煩悩を断ぜずして涅槃を得るなり」


「煩悩があっても悟りは得られるって意味か?」

 と、俺は尋ねる。

「そう。親鸞聖人はそう言っている。私たちは、煩悩の塊だけど、他力の力を信じればいいの。そうすれば道は拓ける。今にピッタリの言葉でしょ?」

「あぁ、そうだな。ありがとう……。美沙も元気で」

 俺たちは、こうして別れた。

 付き合えたのかな?

 それさえもよくわからないや。

 けど、俺の想いは伝わった。

 とにかく俺は目標に向かって突き進む。

 美沙のように仏教を学び、彼女といつか語り合えたらいい。

 その日を信じて、俺はやっていく!


〈了〉

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