表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

ルール違反


「えー…、ということで退職となりました」


その一言でより一層、重たさを増した。

店長であるみおさんはそれ以上何も言わず、その場にいた佐々木さんやおかぴーも何も言えなかった。


身界みかいさんが退職になると告げられた。身界さん自身から『もう、この仕事向いていないと思う』と相談を受けることが度々あった。出来ればみんなで乗り越えていきたいと思っていたし、カバー出来るところはと思って日々過ごしていたつもりだ。


「んー…、やっぱりかぁ…」


隣に居た佐々木さんが深いため息とともに言葉を呟いた。私も同感だ。

休館日の前夜に、私と佐々木さんが思っていたことが同じだった。


でも、どうしようもできない。

出来なかった。そう判断せざるを得なかった。




___


退職日当日。


どこに居ても感じる視線があった。身界さんだ。接客をしていても、誰と話していても視線を感じる。そして振り返れば身界さんが必ずいる。


「……あの身界さん」

「はい!!」


いつもより早く、そしていつもより元気に返事をしてくれる。それはとても良いことだ。どうせなら、元気がある職場の方が楽しい。だか今は少し状況が違う。


「自分のことに集中してくださいね?」

「はい、大丈夫です!」


一体、何が大丈夫なのだろうか。皆目見当がつかない。分かりたくないといったほうが正しいかもしれない。


「…あの、何か言いたいことでも?」

「…じゃあ…帰ってからLINEするのでスルーしないでください」


もう、その言葉で少しだけ分かってしまった。だけど、分かりたくなかった。


「………分かりました」


___


退勤後、私は寮に戻り唸っていた。


「……どうしよう」


身界さんがどう言ってくるのだろう。何を伝えてくるのだろう。


私は意を決して言葉を打った。


『身界さん、今までお疲れ様でした。少しでしたが一緒に働けて楽しかったです。私の思い過ごしだとしたら気にしないでください。

身界さんが私のことを想ってくれているのであれば、それに応えることはできません。ごめんなさい』


身界さんからの言葉を聞く前に打ってしまった。ルール違反なことは分かっている。だけど、私はどうしても待つことが出来なかった。


『そうですよね、分かりました』


ルール違反なLINEを送信し、既読になってから数十分後、ただ短い言葉でそう綴られていた。その短さがどれだけ傷付けてしまったんだろうと、身勝手に私は泣いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ