UFOキャッチャー
「ねー、じんちゃん聞いてる?それでさぁ…」
そう言って、朝からマシンガントークの如く話してくるのはおかぴーだった。
入社して3週間後ぐらいには、出勤時に私を見つけてはこうして話しかけてくるようになった。
「うん、うん…」
そして、私は毎回頷き相槌を打つ。おかぴーは話したいことが終わったら離れていくか、お客様が来たら接客に行く。
それがもはやルーティン化としていた。
「……疲れる」
一方、私はというとマシンガントーク過ぎて話がほぼ入ってきていない状態だった。
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「ねー、じんちゃん」
そんな午後、私はおかぴーから話しかけられた。それまでおかぴーの言動を見ていたわけでは無かった。
「あ、これ?」
しかし、おかぴーが何かを伝える前に私はきっと必要であろうハサミを渡した。
おかぴーは目をまん丸くし、言葉を少し飲んだ。
「…え、なんで…」
「え?これじゃないの?なんとなくそう思って」
淡々と答える私に、驚きを隠せていないおかぴーが少し面白くて、私はふふっと笑う。
自分でもどうしてだか分からない。だけど本当に直感でそうだと思ったから渡した。ただそれだけだった。
「あ、いや…ありがとう」
驚きを隠せないまま、そう言い残しておかぴーは接客に戻って行った。
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「あ、じんちゃん。これあげる」
退勤後、バックヤードで帰宅準備をしていた私におかぴーはそう言った。
おかぴーが手に持っていたのは、チェーン付きの小さなぬいぐるみだった。
「え?なにこれ?」
誕生日でも、何かの記念日でも無く全く検討がつかない。ありがとうという言葉を忘れて、出てきた言葉だった。
「かわいーでしょ?UFOキャッチャーで取った」
「…そうなんだ。え、でもお金…」
「えー、要らないよ。すぐに取れたし」
そうだった。彼はゲーセンの元副店長だった。おかぴーはケラケラと笑って、とりあえず貰ってくれと無理やり私の両手に閉じ込めた。
そして、その謎に『UFOキャッチャーで取った』という言葉で、いくつかのぬいぐるみや置き時計を貰った。
「ねぇ、なんか裏でもある?」
「え?どういうこと?酷くない?」
あまりにも突然に、そして唐突に繰り返される。少し、疑ってしまった。
「いや、だって…。なんで急に?」
「貰えるもんは貰っとけば?」
そういう事じゃなくて。
そう言ってむくれる私に、おかぴーはまたむくれてると笑った。




