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好き″でした″



「私、佐々木さんが好きなんですけど。でも全然振り向いてくれなくて!!」


そう言ってきたのは、私が大阪に異動している時だった。またも別の可愛い後輩からの悩みだった。そういうものは同期で相談するものじゃないのかと思うが違うらしい。


「あぁ…、そうなんだ?」

甚内じんのうちさん、どうしたらいいですか?」

「…んー…、なんで私?」


なんだか、この台詞は前にも言った気がする。そんなことを思いながらも一応聞いてみる。そしたらやっぱり同じような答えが返ってきた。


「だって甚内さん。佐々木さんと長いし仲良いし…」


たしかにもうすぐ2年半ぐらいにはなる。ただ私が持っている佐々木さんの情報といえば、からかってくる先輩。というイメージしかない。もちろん、しっかり指導してくれたり悩みを聞いてくれたりもするが、そこまで人の好みの話などはよく分からない。


「んー……、どこに惹かれたの?」

「優しいじゃないですか。紳士的だし…」

「……うん、そっか…」


優しいは認める。が、紳士とは思ったことが無かった。なんとも言えずに、どうしようかと頭を悩ませる。


そもそも、おかぴーはどうしているんだろうか。同じ職場なのに、この状態を知らないというわけもないだろうに。


「どうしたらいいですか…」


そんな悩みを夜中の3時頃まで語られ、フラフラな状態になりながら出勤し、退勤後にはおかぴーの仕事の愚痴を聞く生活が4ヶ月ほど続いた。



__



「おかえりー」

「ただいま…」


大阪から帰ってきた。とは言いつつ、おかぴーとは何だかんだで連絡をしていたし、日報も読んでいたから久しぶりという感覚は無い。


ただ、なんとなくの変化はあった。


(ねぇ、じんちゃん)

(……え、なに)


なんとなく。もうよく分からないけど目線で会話が出来ていた。ふと目線に気付いたらおかぴーと目が合い、何かを言われている。

しかも不思議とおかぴーが何を言っているかも分かり、私が伝えたいことも伝わる。


(仕事しなよ)

(いや、仕事してよ。今こっちやってるじゃん)


側からしたら、完全に睨み合ってる(みつめあってる)だけかもしれない。


「ちょっと、じんちゃん!」

「だから無理ってば!」

「さっきから夫婦漫才かいちゃつくのやめて?」


さらっと止めに入る佐々木さんにムッとし、真顔でイチャついてません。と抗議すると呆れた声で「はいはい…」と返ってきた。


__


なぜだか帰ってきたら、佐々木さんとおかぴーを好きだと言っていた後輩が付き合っており、佐々木さんを好きだと言っていた後輩は辞めることが決定しているようだった。


「おかぴー、なんでこんなことになってんの?」

「え?俺の所為じゃなくね?」


完璧に八つ当たりなのも分かっているけど、私の4ヶ月の労力を少しは返して欲しい。


「あとさー…、俺も辞めることにした」

「……そっか。いいと思う」


辞めたいと言っていることは知っていた。安月給だし、おかぴーには割が合わないことも分かっていた。知っていたけど、ずっと知らないフリをしていた。知らないフリをすれば、まだ一緒に居られるんじゃないかと思った。



__



「あ、おかえりー」

「みおさん、ただいま」

「…岡登米おかとめさん、辞めるって」

「……みたいですねー」

「一緒に辞めてもいいんだよ?」

「いや、いいですよ」


みおさんから見ても、そう思われていることに驚いた。そして、その言葉に泣きそうになった。一緒に辞めて、一緒に歩いていくことが出来たならよかった。これが両想いならよかった。その未来が見たかった。


でも違う。

恋人未満、トモダチ。

トモダチ以上にもきっとなれていない。


むかつく。

だから、私は残って独りでも大丈夫って証明する。


おかぴー、ありがとう。

私はずっと好きでした。


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