月光の雅鮨
美食を探求する旅、埼玉県編はいかがでしたでしょうか。
さて、我々の旅はいよいよ、首都、東京にやってまいりました。
あなたがこれまで聞いたことのないようなS級料理をご紹介いたします。
東京都
S級グルメ
「月光の雅鮨」
概要
銀座の超高級鮨店が提供する、完全予約制の特別な握り寿司セット。
「月光の雅鮨」は、夜光貝や金箔をまとった、ALL東京湾産の食材を使用し、美しさと味を極限まで高めた究極の江戸前寿司。
価格は**¥1,200,000**(1人前/一日限定5組)。
料理の詳細
1主役食材: 夜光貝と金箔マグロ
◦夜光貝の刺身を使った特製握り寿司。貝殻の輝きを再現するため、表面に透明な昆布ゼリーを施す。
◦銀座特選の本マグロには金箔をあしらい、美しさと豪華さを演出。
2調理技術
◦握りは銀座の名店で修行を積んだ職人が、己の魂を天に捧げる事で提供。
◦シャリには地下300メートルから汲み上げた東京湾の海水を使用して炊き上げた特製米を使用。
◦仕上げに「月光酢」と呼ばれる一子相伝の酢を霧状に吹きかけ、全体に淡い輝きを与える。
3付け合わせと演出
◦皿の周囲には、雲取山の溶岩を加工した器を使用し、握り寿司をまるで月夜の庭園のように見せる。
◦提供時には月光をイメージした特別な照明演出が施される。
ストーリー性
「月光の雅鮨」は、江戸前寿司文化を象徴する一皿として開発された。
江戸時代から続く「職人の魂」を今に伝えつつ、東京の現代的な洗練を融合させた究極の鮨。
「寿司は食事ではなく芸術である」という哲学を具現化し、食べる者に東京の歴史と未来を味わわせる。
価格
¥1,200,000(1人前/完全予約制、銀座の特定店舗で提供)。
レビュー
•「これが江戸前寿司の極み。東京が誇るべき芸術だ。」
•「一貫一貫に職人の魂を感じる。一生に一度の体験。」
•「聞いたことはあるが味わった事がない。この料理はその良い例。」
飯沼一口メモ
食文化の首都、TOKYO。
「本物のSUSHIを食ってから死ね」は世界中の美食家の用いる慣用句として親しい。
こと、「月光の雅寿司」に関しては、いかなる政治家も、総理大臣も、どの国の王だろうが皇帝だろうが、
最高責任者だろうが、食すことを許されないという孤高の一品である。
基本的に神への供え物であり本物の「神」以外口にする事は叶わない。
よって、この料理を食した人間は未だに一人もおらず、伝説のみが一人歩きしている状況である。
職人も、握った直後に魂を天に奪われてしまうため、この料理に対しては憧れと畏怖との二律背反の感情を抱いている。
Z級グルメ
「新宿歌舞伎町の残飯ケバブ」
概要
新宿歌舞伎町の夜の喧騒をイメージし、残飯をテーマにしたケバブ風料理。
見た目は完全に残飯そのものだが、実際には高度な調理技術と独特の食材選びで作られた「芸術的ゴミ」を目指している。価格は**¥1,500**(1本/注文時に自己責任同意書への署名が必要)。
料理の詳細
1主役食材: リアルな残飯風ミックス
◦チキンケバブ用の肉を食べ残し感が出るよう粗くカットし、焦げ目を強調。その上から人間の口で歯形をつける。
◦野菜はクタクタになるまで煮込み、特にレタスは茶色く変色したように見せるため醤油で色付け。最後に実際に5日ほど土に埋めて掘り返す。
◦最後に、チップスやクラッカーを、調理場の床と靴で踏み砕いてトッピングし、カリカリの「ゴミ感」を演出。
◦誰かが噛んだガム、誰かが吸ったタバコ、カァーっぺ!! 全てを惜しみなくトッピングする。
2調理工程
◦食材を一度すべて混ぜ合わせ、ランダムな形状を作り出すために回転焼き機に投入。
◦「包むナン」は、汚れた新聞紙を使用。
◦最後にケバブ全体を調理人が歌舞伎町の床に放置し、通行人に踏ませる等、手間だけはなぜか異様にかけている。
3味の特徴
◦外見に反して味は濃厚なスパイスが効いており、意外と美味しい。
◦ただし、噛むごとに不規則な食感(柔らかい肉、ドロっとした野菜、カリカリのクラッカー、土、ゴミ)が混ざり、「味のカオス」を体験できる。
ストーリー性
「新宿歌舞伎町の残飯ケバブ」は、東京の夜の多様性とカオスを象徴する料理として作られた。歌舞伎町という街が抱える「多様性」「雑多さ」「混沌」といった特徴を、ケバブという多国籍な料理形式で具現化。その外見と名前から「何を食べさせられるのか?」という恐怖を与えつつ、食べ終わると「案外いけるかも」と思わせる奇妙な満足感を提供する。
価格
¥1,500(一人前/特定の店舗で提供)。
レビュー
•「私中卒やからね仕事、もらわれへんのやと泣いた」
•「去かないで向日葵、この都会の隅に生きて」
•「変わらない馬鹿な空を見上げ男は、ちょっと戸惑い変わり続けた」
•「都会の暮らしに憧れて、君は出てきたんだね」
飯沼一口メモ
この料理を初めて見た時、私は料理というものの可能性を感じた。
最初、なぜ料理人はこんなものを真剣に調理(?)するのか理解ができなかった。
しかしそこには、喧騒の中の孤独、汚れっちまった灰色のコンクリートジャングル、
新宿都庁の膝下で堂々と違法薬物の売買、売春行為を行うならずもの。地下道の謎の臭さ。一生終わらない渋谷駅の工事。その全てがそこに凝縮されていた。
流行病を患っているのにも関わらず仕事を休めない弱者。不正の限りを行う強者。どちらであっても、出すものは同じようなゴミだ。
それがたとえゴミでも、それを出す人間もまた、ゴミなのだと。
この料理は私に教えてくれた。