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企画・コンテスト応募作品

サンタ・トレーニング

作者: おおらり


 12月24日、深夜。

 暗がりでそっと、子どもたち3人の枕元にプレゼントを配り終えたある夫婦の前に、その男は現れた。


 リビングの窓にへばりついていたのは、赤い服を着たムキムキマッチョの男。身長およそ2m。横幅も1mはある。

 陸軍教官のような風貌。筋肉隆々で、上下の赤い服は今にもはち切れんばかりにパツパツだ。頭に赤いトンガリ帽子を被り、白く豊かな髭を蓄えている。


 男はどうやったのか、リビングの窓を通り抜けて夫婦の前に現れる。


「力が欲しいか……」


 夫婦は(不審者だ!)とスマホの緊急通報ボタンを押そうとしたが、ムキムキマッチョのサンタはふたりの動きを左腕と右腕で同時におさえる。

 

「力なんて、欲しくはない!」

「いいや。願っただろう、正月に」

「正……月……?」

「最近太ったから、痩せられますように。できれば筋肉をつけたいと。ふたりとも」

「あ、貴方はいったい……」

「私はサンタクロース。

 サンタクロース見習いたちを、導く者なり」


 サンタは夫婦を力でねじふせ、ふたりに命じた。腹筋100回、腕立て伏せ100回、スクワット100回。夫婦は不審者に怯えながらも、サンタのトレーニングをこなした。

 サンタの激しいエアロビについていく中で、あまりに長いサンタダンスに、2人は意識を失った。



 翌朝。

「ママー パパー 起きてー」

 3人の子どもたちが賑やかに疲労困憊のふたりを起こす。

「なんだかとんでもない悪夢を見た気がする……」

「同感……」

 しかし夢であるなら、この筋肉痛と疲労感と寝た気がしない感じは何なのであろうか。



 12月24日に得た筋肉は、12月31日にはもう無くなっているような気がした。しかし『体を動かすのも悪くはない』と感じられたことだけが、あの夜得たなかで唯一のよかったものであった。


 寒空の下、夫婦は除夜の鐘と初詣の列に子どもたち3人と並ぶ。

 末っ子がきらきらした瞳で夫婦に聞いた。

「パパとママは、何をお願いするの?」


(お願いしたら、)

(また変なかたちで叶うかも知れないからなあ……)

 夫婦は願いごとを思いつかないまま、参拝の列はどんどん進んでいく。ムキムキマッチョのサンタの姿だけが、ふたりの脳裏に思い返された。

 

 お賽銭を投げ、

 二礼、二拍手、一礼をする。

 ふたりの氏神様への挨拶は、


(あけましておめでとうございます!

 去年は大変お世話になり、ありがとうございました!

 今年もよろしくお願いします!)


なろうラジオ大賞6のお題、ぎりぎりコンプリートです。

お読みいただいた方々、ありがとうございました。


マッチョサンタは先達者がいらっしゃるだろうなあと思って、「マッチョ サンタ」や「サンタ トレーニング」で検索したところ、やはり面白い作品たちが眠っておりましたので、これを読んでもっとマッチョなサンタに触れたくなった方は、偉大な先達者さまたちの作品もお読みいただけると幸いです。


またweb上を検索しますと、マッチョサンタのステッカーが売っており、マッチョサンタの映画もあるということがわかり、少なからず愛好家が存在していることがわかりました。大晦日に、そんなことが知れるとは思っておりませんでした。


みなさま、良いお年をお迎えください。

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