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――エムリス――
淡い紫色の魔力光が迫り、瞬く間に視界を遮っていく。
見ただけで判る。放出される魔力量、肌にビシビシくる熱気、本能にまで訴えてくる禍々しい程の圧力。これこそが正真正銘の純であり、魔力の祖なのだと言わんばかりの高位の魔力。人間の持つ魔力など魔王の劣化版、ただの模倣でしかないのだと見下しているかのよう。一介の学生など場違いもいい所だ。
ましてや学院入学したてのあたしなんか一瞬で蒸発する。
今更だけどなんでこんな場所に来てしまったんだろうか?
夢から醒めたと思ったら学院の生徒全員が催眠に掛かって関所の前はパンク状態。何がなんだか解らず困惑していたら今度は学院の方で大爆発が起きるし。気づいたら教師陣の目を掻い潜って学院に足が向いていた。無我夢中のまま爆心地まで来てみれば帝国最強の聖騎士長たるアルトさまが魔王なんかと戦ってるし。
こんな場違いな所にのこのこ顔を出したあたしは間違いなく死んだと悟った。
しかし――
「……あ、アルト……さま?」
「……」
彼は何事もなかったかのようにバケモノの魔力砲を両断し、気づけばあたしの小さな身体はアルト様の腕の中に抱かれていた。
けれど呼吸は乱れ、言い知れない悪寒で毛肌は逆立ち、冷や汗は止まらず、手足は小刻みに震える。腰も引けて意識を保つ事すら無理――
「大丈夫だ。落ち着け」
「……え?」
アルト様はそっとあたしを下ろし、頼もしい背を向けながら自信ありげにたった一言。
オメーに傷一つつけさせやしない、と。
「……あ」
その瞬間、あたしは壮観した。
気づけば悪寒は消え手足の震えは止まり。アルトさまの背から伝わってくる断固たる意志が、畏怖やら恐怖やらで圧し潰されそうだった自分を忘れさせてくれる。
見惚れてしまう――自国を守らんとする守護神の姿に。
心奪われる――オルゴンの剣を構える彼の姿に。
伝わってくる――騎士としての在るべき姿が。
その光景を言語化するのであれば、たった二文字で言い表せられる。
希望、と。




