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4-2


――カール――


 俺は呪いによってアルトとしての本来の力が使えなくなった。

 今の俺の状態は言わば魔力湖から掬い出せる『器』が六歳児相応に小さくなってしまった事で本来行使出来るはずの魔力量が極端に少なくなってしまった状態だ。

 例えるなら風呂桶で掬っていた器がお茶碗サイズになってしまったようなもの。器そのものが小さくなってしまったが為に一度に掬い出せる魔力量が激減してしまったのだ。それにより俺は大技級の魔術行使が出来なくなってしまった。身体が縮んだだけでなく魔力量まで制限されてしまっては本当にただの男児だが――全く手がない訳じゃない。

 魔王の角とは第二の心臓。魔力を効率よく循環させるポンプの役割を持っている。万が一にも角を折られたり失ったりすると、膨大なまでの魔力湖の制御が効かずに暴走し、急激な膨張と収縮を繰り返して破裂する。その破壊力は学院都市を丸々更地に出来る程だと考えていい。故に魔王の角は身体の中で最も強固な部分とされている。だからこそ利用出来る。

「貰うぜ、オメーの力!」

「……なっ……やめろ、貴様ぁああああ……っ!?」

 イメージ。

 双角から流れる血管、魔力の流れを司る魔力回路に自身の魔力回路を強引に紐付ける。

 魔王の魔力に『カールの魔力』と言う異物を流し込み、魔王の力の源たる『魔力核』、厳密に言えば核から貯水されている『魔力湖』まで辿り着く。ここまで来られればもう充分だ。

カールは態勢を整える意味を兼ねて距離を取り。

「せっかくだからちょっとした昔話をしてやるよ。っつってもほんの一ケ月前の話だが」

「……なんだと?」

「むかーしむかし。とある帝国に美男美形、才色兼備たる天才的な聖騎士長が居りました。彼は二年前、当時同級生だった皇族の親友と後輩だった少女と共に国をひっくり返すクーデターを企てて見事成功しました。これにより全てを『血』と『力』だけで民を屈服させていた圧政に幕が下ろされました」

「……」

「けれど革命後、今から一ヶ月前皇城でとある事件が起きてしまいました。それは帝国最強の騎士団の長が幼児化してしまうと言う事件です。全てはたった一冊の魔導書『堕天使の我儘』なんつー訳の解らないロリ信仰本をふと手にしてしまったことが誤りでした。迂闊にも魔導書とは気づかずに。ほんの何気ない好奇心ゆえに」

「なるほど。確か貴様の前の聖騎士長、ヤツは生前神聖アルケミア連邦の物品を収集するのを趣味としていたな。あのような気味の悪い国の物品を集めるなど、悪趣味と言う他ないが」

「そんな理解し難い悪趣味のせいで現聖騎士長は身体から器に至るまでの全てが幼児化してまい、結果として力の大半が使えない状態となってしまいました」

「そうなれば当然民草、もとい諸外国に知れ渡れば国の内外でパニックとなろう。『力』こそを第一としてきたルヴァ大陸東部最大国家、その守護神が弱体化してしまったのだから。最悪、領土拡大を狙う各国が侵略戦争を起こしても何ら不思議もない」

「それらを回避するため唯一の目撃者である第二十七代皇帝:ユーサー=ジ=エクスは一つの決断を下しました。これらを最重要国家機密として扱い当の本人とその目撃者、そして諜報騎士ナンバーズの長たるコード01の人間以外誰にも知られてはならないと言うモノに」

「それ故に架空の子供、カール=ジュワースが生まれたと。経緯は判った。だが……何故今になってその話をする? しかもこのタイミングで」

「決まってんじゃねーか。時間を稼ぐ為だよ。ある術式を完成させる為の、な」

「――ッ!?」

 ㇵッ! と気づいたようにグハールが飛び出して来た。

 だがもう遅い。

カールは手を伸ばして魔方陣を展開する。

ヤツの『器』を奪う事で魔力湖から掬い出せる魔力量が格段に増えた。これなら幼児化して使用不可になってしまっていた『あの術』が使えるようになる。

「待たせたな。今一度是正してやるよ。聖エクス大帝国ロイヤル・オブ・ラウンズの第一席として、最強の騎士団の頂点に立つ長として。今一度その身に刻んでやるよ、聖騎士パラディンの称号は伊達じゃねーって事を。万物支配――デリート《断斬》」

「?」

 シュッと。

 カールが二本の指を軽く振ると、突如グハールの片足が消えた。

「……ばっ、バカなっ!? 一体何が……」

 表情こそ読めないものの、何をされたのか解らないという声をしている。

 そりゃそうだろう。攻撃しようと向かって行ったらいきなり片足が消えたんだ。おそらく今の頭の中はパニック状態。何をされたのか、状況を理解するのに必死なのだろう。

現に一本足で立てなくなったヤツは、今も地を這うトカゲのようになったまま動かない。

「この術は魔術の最奥にして極地。あらゆる万物の創作と切断が出来るチート。俺の育ての親たるオルクって名の化物が開発した魔術だ」

「オルク……聞いた事のない名だ。そいつは人間か?」

「育てられた俺自身が一番疑ってるよ」

 と、カールは続けてグハール四肢を斬り落とす。

「ぐっほぉッ……魔王の身体をこうも、容易く……」

「言ったろ。この術はあらゆる万物を断つって。いくらオメーが外殻を強固な鎧で覆おうが、この術は物理法則を完全に無視する。防御力を上げる事にそもそも意味なんてねーよ」

 コイツで終いだと。

 カールは容赦なくグハールの胴体に手刀を突き刺し、グハールの精神を断ち切った。

「く……っそ。ここにきて……我はまた……」

「それがオメーの器ってことだ。たとえ魔王の身体を得ようとも仮初の魂で魔王の力を十全に引き出すなんて出来やしねーのさ」


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