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皇城カリス。

帝都キャメロットの中心部に聳え立つ巨塔でまさに帝国の象徴。杯のような形状をしている事から別名を『金の王冠』とも揶揄されており、その中枢には皇帝と皇族の他、帝国の守護神たる最強の聖騎士長もその身を置いている。

革命の果て僅か十七歳にして騎士の最高位『パラディン』の称号を得た後、ロイヤル・オブ・ラウンズ聖騎士長の座に就いた若き神童『アルト=ドラン』。

銀髪のロングヘアを靡かせ。白い聖職者のような正装と赤いマントを羽織り、少年は騎士長室で日々多忙に追われていた。

ロイヤル・オブ・ラウンズは聖エクス帝国における最強の騎士集団。皇帝直属の組織として帝国の平和と秩序を守護する為に存在し、その下に他国から国を守る為の国防騎士団『ガディナイト』と、帝都の治安維持を目的とした『ワルキューレ』が存在し。更に陰の掃除屋として諜報騎士部隊たる『ナンバーズ』が存在する。

互いは表裏一体。ガディナイトが泥棒から殺人に至るまでの多種多様の『表』を担当するのに対し、一方のナンバーズは表沙汰には出来ない『裏』を担当している。

 言ってしまえばラウンズの聖騎士長とは国防の総括役。ロイヤル・オブ・ラウンズという集団をまとめるだけでなく、表と裏の組織も同時に動かさなくてはならない重責を担っている。

 ゆえに聖騎士長は普段からデスクワークが主。日々法律の本棚に囲まれては散乱した紙の山に埋め尽くされて紙の匂いを嗅がない日はなく。ただひたすらと本をめくっては紙に判を押しペンを走らせるばかりの毎日だ。

ぶっちゃけ聖騎士長なんて拷問だ。部屋に軟禁されては常に書類と睨めっこ……。こんなん地獄やろ。革命前の圧政も窮屈で肩身が狭かったけど、革命が成功しても結局は地獄。

今にして思えば、俺って年相応の青春ってものを謳歌してなくね?

勉強や鍛錬なんてモンばっかで友情やら恋やらしてなくね?

聞けばユーサー政権になってから学院都市には修学旅行やら文化祭、部活から剣闘会とかの次々に色々なお楽しみイベントを導入したと聞く。嗚呼、もし今一度学生に戻れたなら――……ってアホか。文字列ばっか見てたせいか、つい下らない妄想をしてしまった。

「――さて続き続きと……ン?」

 ふと。

 何気なく。

 ほんの一瞬、一冊の古い本が視線を横切った。

あれ、こんな物あったっけ? ――と思いつつ、箸休めならぬ判子休めがてら何も考えず何となくページをめくってみる。


 題名:堕天使の我儘。

『神々は不死であり、不老であり、不変である。

 至高の世界にとってそれは必然であり必定。

下界の子等からしてみれば夢であり地獄かもしれない。

 悠久の刻の中で存在し続ける我々にとっては後者である。

 下界に降り立った我らにとって永遠とは停滞と同義。

 変わらぬ荒野を延々坦々と歩き続ける毎日。

 比べてヒトの子はどうであろうか。

 不死でも不老でもなく不変にも非ず。

 儚き命を燃やすように日々を輝かせ、その日その日を精一杯の労にて己を磨いていく。

 特に幼き刻はあまりにも短く、児戯の日々は命よりも儚い。

 児戯は神々にとって至福であり安寧である。

 無邪気にて無垢、純粋にて尊く、穢れ無き日々は唯一の幸なり。

 嗚呼、願わくはこの光射す日々よ、永久であれ。

 我は一ノ「個」として唯一の願望と我儘を此処に記し、この言葉を送ろう。


 児戯よ、永遠で在れ――


                        我は我儘な元神にして堕天の王なり』


 ……。

 …………。

 ………………。

「……ロリ本?」

 とりあえず神様は子供が大大大好きなんだって事は解った。

 けれどコレは何なのだ?

 誰の趣味だ?

 誰が置いた?

 何故こんな本が聖騎士長室にあるのだ?

(――ハッ!? ひょっとして前聖騎士長の私物とか!?)

 アイツにそんな趣味が……と、まさかの真実に唖然している最中。

突如、聖騎士長室のドアがノックされ、そのまま流れるように「どうぞ」と口にする。

「邪魔するぞアル。実は最近貴族連中が集まってセレクションなる組織を立ち上げてるっつー情報が――って……。……え?」

 ユッサーか。

 入室するや何やら鳩が豆鉄砲を食ったかのような顔をしているが、まぁいい。

「あー、オメーの首を撥ねようと躍起になってる連中か。めんどくせーな」

「あ。え? ん? お前は……アル、なのか?」

「……はぁ? ……なんだその質問? ナゾナゾか?」

「いやそういう意味でなくてだな……」

「質問の意図が解らん。というかさっきから歯切れ悪くね?」

「いやだって……」

「だって?」

 と。

 ユッサーは自身の目を改めるように俺の身体を視ながら言った。


「だって今のお前どっからどう見ても初等部低学年位のガキにしか見えないっつーか……」


 ……。

 …………。

 ………………。

「……はい?」


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