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王宮のパーティ・閑

◇王宮のパーティ・閑話◇



 王宮パーティの当日朝。


 ブルーノは父、シェルキー伯から執務室へ呼ばれた。


 中に入ると、父と家令が並んで、険しい顔をしている。

 日頃温厚な父の、厳しめの顔を見たブルーノは、唇が乾く。


「何で呼ばれたか分かるか?」

「さ、さあ……」


 父は執務机の上に、バサリと何かの書類を置いた。


「見覚えがあるだろう」


 チラッと見たブルーノの顔が見る見る白くなる。

 先日、ロアナにねだられて買った毛皮の購入書だ。

 月賦支払いのために、父の承諾サインを偽造した……。


「な、なんで……」


 毛皮店からの問い合わせでもあったのだろうか。

 売れれば良いというような、少々胡散臭い店だったのだが。


「毛皮店の店主が、王宮直属の警吏に取り調べを受けている。その過程で、毛皮を購入した者たちにも調査が行われているのだ。購入記録を基に、な」


 そんな……。

 ブルーノは言葉を失う。


 しかし、毛皮店の店主が取り調べ?


「その毛皮店は、違法販売を行っていたようです」

「い、違法!?」


 家令がブルーノに目を向けずに告げる。


「捕獲禁止となっている動物の毛皮を不当に入手。それだけではなく、魔獣の毛皮をも販売していたそうです」


「え……」


「ちなみに、ブルーノ様が購入されたブルーフォックスの毛皮ですが、実際は捕獲禁止の銀糸アナグマの毛皮だそうです」


 シェルキー伯はフンと息を吐く。


「大方、あのゴーシェ家の後妻とか、その娘に騙されたのだろうな。安い毛皮が買えるとかなんとか」


 ロアナを馬鹿にされたように感じたブルーノは、思わず声を上げる。


「父さんは、元々ロアナのことが気に入らないんだ! 男爵家出身だからって!」



 シェルキー伯は目を剝く。

 家令も思わずブルーノを見つめる。


「バッカモ――ン!!」


 邸を揺るがすような大声だった。

 今まで、父からこれ程の叱責を受けたことがなかったブルーノは、身を竦め涙目になる。


「今のお前の発言こそ、爵位の低い者や平民を蔑むものだ! 爵位の高低を問わず、ひたむきに勉学に励み、粉骨砕身の努力を続ける者はたくさんいるぞ」


 そう言ってシェルキー伯は家令を見やる。


「彼とてそうだ。平民の身でも高等学園を卒業し、文官試験に合格したのだぞ。優秀な人材だから、わしが引き抜いてきたのだ」


 家令は目を伏せる。


「それがなんだ、お前は! ミーヤ嬢との婚約を白紙にしたのは致し方ない。あれはウチのが無理を言って結んだものだったからな」


 ビクビクしながらも、ブルーノはキョトンとした顔になる。


 嘘!

 ウチの、って母さんのことだよね。

 母さんが無理を言って、ミーヤと婚約させたの?


 俺に惚れたミーヤが我儘言って、婚約したんじゃないのか?

 だから、俺が冷たい態度取っても、文句ひとつ言わずに付き合ってくれていたんだろ?


――とにかくミーヤちゃんを大切にするのよ。そうすれば……。


 何度か母に言い聞かされた。

 ミーヤを大切にすることに、何かメリットがあるのか?

 家同士、親同士の関係があるのは分かるけど。


 でも、それだけじゃなかったのだろうか……。


「ロアナ嬢でも構わんよ、婚約者は。ただな、今すべきことは何だ? 買い物か? 観劇か? お前は伯爵家と領民たちの将来を、どう考えているんだ!」


 シェルキー伯が机を叩き、書類が散った。


 将来のことなんて、今言われても分からない……。

 父さんも母さんも元気なんだから、考えたくないのに……。

 ロアナと結婚して、孫の顔でも見せてやるくらいなら出来るけど。


 だいたい専門店で、違法な商品を売っているなんて、知らなかった。


 知らなかったんだから、しょうがないだろ?

 怒鳴られるなんて心外だ。


 父に何かを言いたいのに言葉が見つからない。

 何より、ミーヤがブルーノを求めていたのではなかったと聞いて、彼は床に座り込んだ。


 平民出身の家令は、そんなブルーノにそっと手を差し伸べた。




 一方、ゴーシェ家では、ラスディがふらふらしながらも、王宮に向おうとしていた。


「あの、旦那様……」


 家令が来客を告げる。

 誰だ、このクソ忙しい時に……。


「王室警吏官です」


「何だって?」


 まさか……。

 別邸でミーヤの、し、死体が見つかったとか……?


 客間に入ると、王家の紋章を付けた二人の警吏官が立ち上がる。


「申し訳ないが、これから王宮の……」

「存じておりますが、我々も国王直々の命を受けておりますので、ご協力を」


 陛下の?


「ゴーシェ伯爵家で購入した製品の一部に、捕獲禁止とされている動物の毛皮が見つかりました」


「え、捕獲、禁止? 何の毛皮でしょうか」


「先ほど廊下で確認しました。稀少生物の一種、『ダッチフィリー熊』です」


 あの熊の……。

 妻のレイラが買ってきたものだ。自分は知らない。関係ない。

 そう言いたいが体が震えている。


 国王陛下直々の警吏官だ。

 下手な言い訳は利かない。

 おそらくは、殆ど調査済で裏を取りに来ているだけだろう。


 ラスディ・ゴーシェの目が死んだ魚の様になった。

そしてパーティ会場に話は戻ります。

こんな男たちはイヤだの回でした。

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[一言] 自業自得ですなあ( ˘ω˘ )
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