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05

 「そもそもエナジー力ってなんなんですか?」


 俺の疑問に大総統は「うおっほん」とわざとらしく咳払いをしてもったぶった感じで答える。


 「エナジー力とは特別な能力を発揮できる究極の戦闘スーツ『エナジースーツ』の力を引き出す能力の事だ。エナジー力の強さは生まれつきの要素が大きいが、鍛える事によってある程度増幅させることもできる。そしてエナジー力の強さによって扱える『エナジースーツ』の種類も変わってくるのだ。お前ほどのエナジー力があれば大幹部用スーツも使いこなすことができるだろう」


 なるほど。先ほどの普通の戦闘員でもギャングを制圧できると言ったのはエナジースーツを使用していることを前提にしているらしい。


 「エナジー力はほとんどの者が持っているが『エナジースーツ』を使えるほどのエナジー力を持っている者は少なく、戦闘員レベルでも貴重な存在なのだ」


 それならエナジー力を必要としない戦闘スーツを作ればいいんじゃないかと思うが、エナジー力を利用して作る方がはるかに高性能の戦闘スーツができると大総統は補足してくる。


 「闇野さんが僕を家に招待したのはこのためだったの?」


 「・・・そう。ゴメン。ちゃんと説明してなくて」


 なるほど。ミコちゃんが俺をここに呼んだのは甘い青春ではなく、悪の組織のスカウトのためだったのか。


 「別にいいよ。ちょっと驚いたけど」


 俺の返事にミコちゃんはホッとしたような顔になる。俺としては思っていた展開とは違っていたが、これをきっかけに仲良くなればいい話だしな。


 「それで、僕はこれからどうしたらいいんですか?」


 この流れからして俺も『エナジースーツ』とやらをもらえるんだろうか。正直、ちょっと興味はある。


 「そうじゃな、それにはまずお前の処遇を決めるべきじゃろうが・・・」


 大総統は少し悩むような仕草をみせたが、すぐに続けた。


 「お前はこれから悪の大幹部、極悪神官を名乗るといい」


 極悪神官?とげとげのこん棒でも両手に持たされるのか?俺がそんな事を考えていると、


 「大総統様!極悪神官を名乗ることを許されるのですか!?」


 ミコちゃんはやたら驚いている。


 「うむ。これほどの才能を持つ者なら極悪神官を名乗るのにふさわしいだろう」


 よくわからないが、極悪神官とはこの暗黒闇極悪軍団においてもかなりの地位を表すものらしい。


 「暗黒大総統様。質問があるのですか?」


 せっかくなので俺も大総統を様付けで呼んでみる。


 「なんだ?極悪神官よ」


 大総統は上機嫌で俺の事を極悪神官と呼んでくる。様を付けられたのが嬉しそうだ。


 「極悪神官はこの組織においてどの程度の位置にいるのでしょうか?」


 「ほほう、その辺が気になるのか?なかなか野心的だな、極悪神官は。他ならぬお前の事だから教えてやろう。極悪神官とはこのわし暗黒大総統と闇巫女であるミコに続く大幹部で序列で言えばナンバー3にあたるのだ」


 マジで?!思ったよりも上の地位じゃないか。っていうか今、会ったばかりの俺がいきなり悪の組織のナンバー3になってもいいんだろうか?さすがに不安になってきたぞ。スピード出世にもほどがある。


 「身に余る光栄です。しかし、新参者の私がそのような地位についてしまっては他の反感を買ってしまうのでは」


 俺はそれらしい事を言うが、大総統は鷹揚に答える。


 「そんな事は心配する必要はない。お前の才能はこの地位にふさわしいものだ。だいたい、まだ我が組織には他の者などいないからな!」


 「え・・・」


 「暗黒闇極悪軍団の現在のメンバーは大総統と私、そして極悪神官の3人のみです」


 ミコちゃんが補足してくる。


 「でも、先ほどエナジー力の説明の時に戦闘員とか怪人の話が出て来たような気がするけど」


 怪人なんて下級とか上級で分かれている雰囲気だったじゃないか。あの説明はなんだったんだ。


 「あれは、もしいたらという仮定の話。使用者こそ今はまだ集まっていないけどエナジースーツ自体は戦闘員用、怪人用と多数そろえているの。さすがに幹部用のエナジースーツは作成コストがかかりすぎるから数はあまりないけど」


 なるほど。この悪の組織はすごい武器があってもその使用者がいない状態なんだな。この話を信じるなら、だけど。


 総勢3人の悪の組織・・・。


 ていうか俺が入る前は親子2人だったんだよなあ。組織というよりはほとんど核家族だよね、これでは悪の組織じゃなくてただの悪人一家かなあ。


 急にスケールが小さくなったな。

 

 「例え戦闘員レベルでもエナジー力を持っている者は少ないのだ。かといって全くエナジー力を持たない者を入れていたら『あの組織ってよっぽど人手不足なんじゃね?』と思われかねないからのう」


 大総統はこれでも苦労しているのだばかりに愚痴を言ってくるが、正直それって誰から言われるんだ?正義の味方か?


 「でも、エナジー力がなくても人員がいないよりはマシなのでは?」


 「悪魔神官よ、お前は一般人並みの力しかない全身タイツの戦闘員が奇声を上げていたら怖いか?戦闘員といえどもある程度の戦闘力は必要なのだ」


 大総統が呆れたように言ってくる。何の力もない全身タイツ男が「イー、イー」言っていたところである意味怖いだけで、確かに実戦的ではない。


 「では、私にも戦闘力のあるエナジースーツを下さるのですか」


 やはり気になるのはここだろう。悪の組織にナンバー3(3人中3番目だが)になったとはいえ、それにふさわしい強さは欲しい。


 「さきほどから言っておるだろう。極悪神官は幹部用スーツの名前だぞ。お前には極悪神官スーツを与える」


 何を今さらという風に大総統は言うのだった。

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