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04

ちょっと、待てよ・・・。ミコちゃんと血がつながっている、それってつまり・・・


「闇野さん、お父さんを俺に紹介してくれたんだね!」


そうだよ、大総統はミコちゃんを作ったんだもんな。うちと同じ作り方で。つまりミコちゃんのお父さんだ。


「私が紹介したのは暗黒闇極悪軍団の暗黒大総統」


ミコちゃんはいつもの冷静な感じで俺の言葉を訂正するが、お父さんを紹介してくれたことには変わりはない。


「お父さんの仕事が暗黒闇極悪軍団の暗黒大総統って事だよね!」


父親の職業を教えてくれるなんてもはや結婚前提ってやつだな。よくあるよな。ドラマとかで。まあ職業が大総統っていうのは珍しいけど。


「・・・比呂君。驚かないの?」


「何が?」


「暗黒闇極悪軍団の暗黒大総統って言われて怖いとか思わないの」


ミコちゃんの質問に俺は改めて考えると確かにおかしいよな。普通に考えてヤバい人だと思うし、いろんな意味で怖いと思うのが通常の思考だと思うが、なぜか恐怖を感じない。俺の頭の中が当たり前のように暗黒闇極悪軍団の存在を受け入れているのだ。

  

 ホント、なんなんだろうな。俺はわりと常識的な人間だと思っていたが、なぜかこの悪の組織の事については当たり前の事のように受け入れるのが普通になっている。


 これが常識的な事ではないと理性ではわかっているのだが、本能的にこの組織が本物の悪の組織だと理解したうえで恐怖を抱いていていない。これは虚勢でも何でもなく事実だ。

 

 「全然怖くないよ。だってミコちゃんのお父さんじゃないか」


 俺はそれらしい理由を言ってみる。


 「そうだけど、あまりそこを強調されたくないかも」


 いつもクールなミコちゃんだが、大総統(お父さん)の事になると普通の14歳の女の子みたいだ。


 神秘的なミコちゃんもいいけどこんなミコちゃんも親しみやすくていいな。


 「しかし、こいつはなんか冴えん顔しておるなあ。悪の組織にビビっておらんし、すこし愚鈍な感じがするぞ。本当にこいつは素質があるのか?この顔じゃあせいぜいなれても下級怪人で、もしかしたら戦闘員にすらならんかもしれんぞ」


 俺たちのやり取りに置いてけぼりにされていた大総統(ミコちゃんのお父さん)が無理やり話に入ってくる。


 怪人?戦闘員?何の事だ?俺はただミコちゃんの家にお呼ばれしただけなんだが。俺がそう思っているとミコちゃんが反論するように言う。


 「大総統様、論より証拠。エナジーちからの測定をお願いします」


 エナジー力?また聞きなれない言葉が出てきたな。


 「エナジー力をか?まあ、そうすれば結論は早いが・・・」


 大総統のおっさんはぶつぶつ言いながらスマホくらいの大きさのよくわからないボタンがいくつかついた機械を懐からとりだして、


「ほれ、小僧。ちょっと右手をだしてみろ」


 と面倒くさそうに言ってくる。


 あれで、エナジー力とやらを測るのか?正直嫌な予感しかしないが・・・


 俺が右手を出すのをためらっていると大総統は目にもとまらぬスピードで無理やり俺の右手を引き寄せると装置のスイッチを押す。


 「いてっ!」


 チクッとしたと思うと右の手のひらに少し血がにじんでいる。


 「何するんですか!」


 思わず俺が抗議の声を上げるが、大総統は素知らぬ顔で説明してくる。


 「仕方なかろう。エナジー力を測るには少量の血液が必要なのだ」


 なるほど。そのために血液を採取したということか。それにしても少し痛かったぞ。先に言っておいてくれればいいのに。俺だって心の準備とかあるんだから。


 「エナジー力は血の中に含まれてるのですか?」


 「うむ、熱き血潮ほどエナジー力は含まれているのだ」


 自信満々に言う大総統だが、一気に胡散臭くなったな。なんだよ熱き血潮って。手のひらをすかすのか?


 俺のあきれた視線に気付かないのか大総統はエナジー力測定装置を操作している。


 「後はこのエナジー力測定装置が自動で測定してくれるが果たしてどんなものかのう。期待はしていないが・・・。ほう、なかなか数字が順調に上がっているではないか。おっ、怪人レベルを越して・・・さらにあがって・・・ん?まだあがるのか・・・そろそろ止まっても・・・・うそだろう?・・・マジか!?エナジー力が十万越えだと?!これではミコと並ぶ大幹部クラスではないか!」


 「十万・・・!信じられない・・・」


 なんか大総統とミコちゃんがめちゃくちゃ驚いている。ていうかなんでミコちゃんも驚いてるの?俺に強力なエナジー力がとやらがあるとわかっていたから測定を大総統に促したんじゃないのか。


 それともエナジー力が十万超えるってそんなにすごいのか?基準がよくわからんが。


 「それってすごいんですか?」


 「すごいってもんじゃないぞ!だいたい一般戦闘員のエナジー力が10くらいで500あれば下級怪人。上級怪人でも5000あればいい方じゃ。10000あれば幹部じゃぞ」


 大総統が興奮気味に早口でまくし立てる。戦闘員は幹部の1000分の1の力か。ずいぶんとインフレがあるな。センスのないチート系主人公みたいだ。


 「ちなみに普通の一般戦闘員でも銃を持った普通のギャング数人を制圧できるぞ」


 例えがわかりやすいようでわかりにくいが、どうやら十万エナジー力はかなりすごい事らしい。だけど、俺はギャングどころか同じ中学校の不良にすらケンカで勝てないぞ。実際にはケンカしたことないけど多分そうだ。負ける自信がある。本当にこの測定あってるのかな。

 

 そんな俺の不安をよそに、


 「暗黒闇極悪軍団大幹部が一人、闇巫女よ!よくやった!これほどの才能をある者を連れてくるとはさすがは闇巫女じゃ」


 小躍りして大喜びしている大総統に、ミコちゃんが頭を下げながら


 「お褒めにあずかり光栄です。暗黒大総統様」


 おお、あまり感情を表さないミコちゃんが自然に微笑んでいる!


 これは、俺への好感度もアップしたんじゃねえ?


 あ、俺にウインクしてくれた!これはもう、結婚ですか!?少なくとも婚約はしたようなもんだな!


 「結婚はまだできないよ」


 あれー?心の声聞こえてた?


 「顔に出てるもの」


 なるほど。これも愛の力だということか。

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