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039

 「大総統様、構成員候補生をお連れしました」


 ミコちゃんに連れられて一人の少年が謁見の間に入ってくる。


 「へえ、お前が大総統か。俺が来たからにはもう安心だぜ。一気に世界征服してやるからよ!」


 入って来るなり何の根拠もないくせ自信たっぷりな言い方をするそいつに俺は見覚えがあった。


 基本的にノリと勢いだけて生きていて、あまり物事を深く考えないで思った事を「うえーい!」と「マジかよー!」を駆使して行動する事がその顔面からにじみ出ているそいつは俺とミコちゃんのクラスメイトでもある鎌井勇翔夢だ。


 ・・・よりによってこいつかよ。今となっては別に怖くはないがめんどくさいタイプの不良だ。


 以前ミコちゃんにいいところを見せようと意味もなく俺に絡んできた事もあるが、その時はミコちゃんに瞬殺されていたのだがこんな風に関りを持つとは思っていなかったし、正直、関わりたいないが、


 「おっ、お前赤井じゃないか。お前も悪の組織の一員なのか?おいー、マジかよー!」


 俺に気づいた鎌井がさっそく声をかけてくる。


 「そうだよ」


 あまり嬉しくない展開に俺は最低限の返事をする。


 「なんだ、なんだ、暗いな~。お前ってやっぱり暗いよな」

 

 うん、俺は普通に返事をしただけなんだけだけど根暗認定されている。


 まあ、鎌井はミコちゃんの方をチラチラ見ながら「暗いねー」を連発しているから単に俺を落としめたいだけなんだろうが、あまり気持ちのいいものではない。


 そんな鎌井をしり目に俺はミコちゃんを呼んで小声で話しかける。


 「鎌井はここが悪の組織だって知って付いてきたの?」


 「そう」


 「俺の時は何も知らせずに連れて来たよね?」


 その違いが気になったのだが、ミコちゃんの答えはあっさりしたものだった。


 「ステッカーで応募してきたから悪の組織ってわかってた。だから簡単に説明した」


 なるほど確かにあのステッカーの仕掛けではしっかり暗黒闇極悪軍団とアピールしていたからな。それで応募してきたやつに隠してもしょうがないだろう。


 「なんだ、なんだ。ナイショ話かよ。おいー、マジかよー!俺も混ぜてくれよ~」


 さっそくウザがらみしてくる鎌井に、


 「君はとりあえずエナジー力を測って。さっき説明したでしょう」


 ミコちゃんは冷たくあしらっている。


 確かステッカーではある程度のエナジー力がある事はわかっても、その量までは測定できなかったはずだ。だからエナジー力測定装置で正確な数値を測る必要があるのだ。


 大総統にエナジー力測定装置でチクっとされると鎌井は「おいー、マジかよー!いって、マジで死ぬわ~!マジで!」と大げさに痛がっている。


 そんな鎌井を無視して大総統はエナジー力測定装置を操作していたが、やがて驚きの声を上げる。


 「ほう、これはなかなかだぞ。なんと647エナジー力だ。怪人レベルの数値ではないか!」


 確か下級怪人の最低値が500だったはずだ。鎌井は戦闘員スーツではなく怪人(下級)スーツを扱えることになる。


 「おいー、マジかよー!俺ってスゴくね?怪人ってなかなかなれないよな?やっぱ、俺ってスゲーわ!」


 鎌井は有頂天になってミコちゃんに「俺スゲー」を連発しているがミコちゃんは冷ややかな目で見ている。俺の時とは大違いだ。まあ、10万越えの俺の後に600いくらのエナジー力の奴が現れてもさすがに興奮のしようもないだろう。


 だが、大総統は「うむ、スゴいぞ!」とミコちゃんとは対照的に素直に喜んでいる。この辺は大総統の人のイイところがでている。


 「おい、赤井。お前はどうせザコ戦闘員だろうが、俺の部下としてしっかりついてこいよ!怪人である俺様が守ってやるからな」


 大総統の喜びっぷりに調子に乗ってそんな事を言い出している鎌井に


 「はあ?」


 ミコちゃんがちょっとキレ気味に声を上げるが、鎌井はそれをどう勘違いしたのか、


 「もちろんミコちゃんもちゃんと守ってやるよ!」

 

 とその肩に手をかけようとしてスッと避けられている。


 「・・・比呂君。悪いけど、後はお願い」


 ミコちゃんはそう言い捨ててさっさと謁見の間から出ていく。


 「おいー、マジかよー!」


 本日五度目の「おいー、マジかよー!」を繰り出した鎌井を見ながら俺は(おいー、マジかよー!)と思うのだった。

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