037
俺がでっち1号をボコボコにして、秘密基地の自室に連れて帰ったところにミコちゃんが訪ねてくる。
「比呂君もアリバイ君を作成したのね」
ミコちゃんはでっち1号をまじまじと見ている。
「大総統様にお願いして作ってもらったんだよ。名前はでっち1号」
「でっち1号・・変な名前。それにしても、少し傷が入ってない?」
アリバイ君そっくり君には自己修復機能があるから、俺がボコボコにした傷は自動的に回復してきているが少しまだ傷がのこっているのだ。
「ああ、こけてね。まったくドジなやつだよ」
そう説明する俺を恨めしそうな顔で見てくるでっち1号だが無視する。・・・元々お前が悪いんだからな。この程度ですませてやって感謝してほしいくらいだ。
そんな事よりも俺はミコちゃんが連れている人が気になっていた。その姿はミコちゃんそっくりだ。きっとこれは・・・・。
「この子がミコちゃんのアリバイ君なんだ?」
「そう。彼女はニア」
ミコちゃんにそう紹介されたニアは、
「ニアです」
と表情も変えずに一言だけですませる所がミコちゃんっぽい。うちのでっち1号と違って忠実にミコちゃんを再現しているようだ。
「やっぱり自分と二人の時は性格が違うの?」
俺はでっち1号の俺と二人の時の口調を思い出してミコちゃんにきいてみる。
「そうね、ニア。いつもの状態になっていいわよ」
ミコちゃんに命令されてそれまでクールな表情だったニアは一気に笑顔になる。
「あたし、ニアです!ミコ様ののアリバイ君をさせてもらっています!よろしくお願いします!あなたが比呂様ですね?ミコ様がいっつも話をしているからよく知っています!最近は比呂様のお話ばかりですから初めてあったとは思えないくらいです!」
「ちょ、ちょっとニア?!」
慌てるミコちゃんはニアを制して、
「違うから」
いつもの冷静な顔にもどって俺に振り返って言うが何が違うんだろうか。ミコちゃんは嫌がるかもしれないがこれは追求してみたい。
「ちなみミコちゃんとはいつもどんな話してるんだ?」
「ほら、ミコ様ってコミュ障じゃないですか。だから今まであんまり友達もいなくて、そうなると友達の話とか聞くことがなくて、あたしはとても心配していたんですけど、最近は比呂様の話題で持ちきりなんですよ!もちろん、話している内容は大変好意的な感じで・・・」
「ニア?!ちょっとニア!?ごめん、比呂君!」
ミコちゃんは変身してニアを抱えて目にも止まらないスピードで去っていく。
ニア・・・。グッジョブ!俺は心の中で親指を立てる。
ミコちゃんはいまいち普段のリアクションが薄いから、俺に対する好感度がわかりにくかったが少なくとも普通の友達以上ではありそうだ。いやあ、俄然やる気が出てきたな!一気に世界征服したくなってきたな!
そんな俺に水を差すようにでっち1号がニヤニヤしながら言ってくる。
「なんか可愛かったすね!闇巫女様」
お前がミコちゃんを語るなよ。と思うがとりあえず無難な返事をする。
「ちょっと可哀そうな気もするけどな」
「あっしも旦那の本性を話してあげれば良かったすね!そうすればお互いさまで闇巫女様も少しは落ち着いたかも」
「俺の本性ってなんだよ」
「そうっすね・・・」
でっち1号は少し考えるような顔をすると、だらしなく顔を紅潮させてハアハアと荒い息遣いになって
「うひょー!今日もミコちゃん可愛かったなあ!んもう、たまらん!顔は可愛いし、身体もいいし、それにあの匂い!ずっと嗅いでいた~い!」
へえ~。俺ってこいつにはそう見えてるのか。
俺が微笑んでいると、何かを勘違いしたのか更にでっち1号は調子に乗って、
「うひひひひ!今日も任務にかこつけてミコちゃんにたっぷり接近してやったぜ!わざと近くに行ってたあっぷりあのいい匂いを嗅いで・・・ぐう!」
「ひねりつぶしてやろうか?」
変身した俺に頭を鷲掴みされてでっち1号は足をバタバタさせている。
「旦那!変身してそのセリフは洒落にならないっす!放して~!」
どうやらお仕置きが足りなかったらしい。
「頭をつぶしても自己修復できるのかな・・・」
「で、出来ないっす!そんなモノがこの世界にあるわけないっす!」
「たしか扁形動物は頭を切断しても再生できたような・・・」
「なにそれ!知らないっす!ていうかあっしはメカっすよ!精密機械っす!」
「精密・・・?」
腑に落ちない顔をする俺に、
「あっしは結構コスト高いっすよ!億単位で金がかかってるんすから!」
嫌な脅しをかけるでっち1号だが、
「でも、初めから壊れていたわけだし不良品を返品するって事で」
俺が結構強めに手に力を込めると、
「もうふざけないっす!絶対服従しますから!」
ようやく観念したのだった。
「できるだけそうするっす!」
いや、まだ粘るのかよ・・・。でっち1号のふざける事への情熱にさすがにげんなりする俺だった。




