032
正義の味方のリーダーに就任した翌日、暗黒闇極悪軍団のホワイト基地で俺は大総統に謝っていた。
「昨日はすみませんでした」
「急に休みたいと言いいだしたから心配したぞ」
昨日はエナジー力の測定結果をきくために地球平和平等自由隊の秘密基地に行くことになったのだが、その後もいろいろあって遅くなったので暗黒闇極悪軍団の活動は休ませてもらったのだ。
「すみません、家の用事ができたものですから」
「うむ、それなら仕方ないな。家の事をおろそかにしてはいい世界征服はできないからな!」
暗黒大総統(ホワイト企業社長)は相変わらず物分かりがいいが、『家の用事』が正義の味方だと知ったらひっくり返るんだろうなあ・・・。
「それで今日は何をするんですか?」
今日はいつもの団員募集のチラシ配りはしていない。大総統が「今日は他の任務がある」と基地に呼び出してきたのだ。
「我々暗黒闇極悪軍団の活動資金の調達計画について話しておこうと思ってな」
そういえば暗黒闇極悪軍団では普段から悪事らしい悪事もしてないからどうやって資金を調達しているのか不思議だったのだ。
「悪の組織らしく銀行強盗でもするんですか?」
そんな悪事はしそうにないが俺がカマかけて見ると、悪事をすると思われているのが嬉しかったのか大総統は嬉々として答える。
「それも悪くないが、まだ怪人や一般戦闘員がいないからな。さすがに大幹部だけで銀行強盗なんかしてると我が組織が人手不足みたいだろう」
いや、実際そうだろう?大総統とミコちゃんと俺の三人しかしないもん。
でも、確かに大幹部が自ら銀行強盗してる悪の組織なんてカッコがつかないな。
しかし、そうなるとここの資金はどうやって賄っているんだろう?装置一つとってもかなり金がかかってそうだが。
「大総統様の発明で特許でもとって儲けるとか?」
このおっさん、科学力だけは半端ないからな。変な発明も多いがそのオーバーテクノロジーを生かせばいくらでも儲ける事はできるだろう。
「バカめ!悪の組織が特許使用料なんていう真っ当な手段で金儲けしてどうする!ちゃんと悪事で儲けておるに決まっておるわ!」
「じゃあ、どうやって資金を調達してるんです?」
悪事で儲けていると言われて改めてここが悪の組織だと思い出すが、どうせ大した悪事をしていないだろう。以前の俺だったら「マジの悪事だったらどうしよう」と焦るところだが俺も慣れてきたものである。
「このわしの発明した超科学製品を自分さえよければいいと思っている上級国民や金持ちのブタどもに売りつけているのよ!それも法外極まりない値段でなあ!」
それはある意味真っ当な商売なのでは?どんな値段でボッタくっているかは知らないがこのおっさんの超科学製品なら法外な値段をつけていてもそれくらいの価値はありそうだ。
「それって悪事なんですかね?」
「悪事に決まっておろう。何しろ使いようによってはいくらでも悪用のできる超科学製品を悪用しかねない上級国民や金持ちのブタどもに売りつけているんだからなあ!」
「例えばどんなものがあるんですか?」
「そうじゃな、例えばこの『アリバイそっくり君』など最近の売れ筋じゃぞ。これはこのボタンを押すとあら不思議、たちまち押した人間そっくりになってある程度の受け答えもしっかりできるという優れものじゃ」
「受け答えって記憶も引き継ぐんですか?」
「そうじゃ。その記憶をデータ化した人間関係などの情報をもとに受け答えをするわけだ。そして『アリバイそっくり君』が応対した記憶もそのあとに本人に引き継げる。また代り受け答えに困ったときなどは本人にテレパシー通信を送って指示を受けるようにしている」
なるほど。記憶を元にある程度の行動パターンをあらかじめ入力しておいて、あとはテレパシー通信で臨機応変に対応するということか。
これならどんなに高価でも買うんじゃないのか?かなり役立ちそうな気がする。俺も欲しいな、後でねだろう。
上手くおだてたら大総統ならきっとくれるだろうからな。




