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 俺は成り行きから地球平和平等自由隊のリーダーの座をかけて青原さん(ブルー)と戦う事になったのだが、負ける事はできない。別にリーダーになりたいわけじゃないが、後ろで脇差を握りしめている母さんがひたすら怖いからだ。


 ちなみに俺の両方使った感覚で言うと暗黒闇極悪軍団の極悪神官スーツに比べて地球平和平等自由隊のレッドスーツは数段性能が劣るが、それは青原さんのブルースーツも同じことだ。


 もっともスーツによって専用武器は異なるらしいが、今回は模擬戦なのでお互い武器は使用しない。


 つまり勝負は純粋にどれだけエナジースーツを使いこなしているかで決するだろう。

 

 で、当然こうなるよね。


 「くっ、ここまで強いなんて・・・」


 青原さんはマジで悔しそうな顔をしてにらみつけてくる。視線で人を殺せたら・・・そんな思いを感じるほどの目つきをしている。こ、怖い・・・。

 

 「青原さんも強かったです。さすがですね。紙一重の勝利でした」


 青原さんの視線にビビったのをなんとか隠しながら俺は大人の対応をするが、


 「くっ、殺せ!生き恥は晒したくない!」


 かなり物騒な事を言い出す青原さん。


 えーと、これは正義の味方同士の模擬戦ですよね?なんで「くっ殺」展開になるんだよ。俺はオークかなんかかよ。


 「赤井、マジで強いねー。まるで青原さんの動きがわかっていたみたいじゃん」


 空気を読まない桃里が感心したように言ってくるが、これは半分正解だ。


 俺は青原さんの動きがある程度予測できたのだ。何しろ睡眠学習装置によって正義の味方のエナジースーツの戦い方を刷り込まれている。そしてその正義の味方の戦い方は集団戦闘をメインにしている事に気づいていたのだ。


 ザコ戦闘員には文字通り、多数のザコ戦闘員と正義の味方戦隊の集団戦闘方法。そして敵の幹部クラスには幹部一人に対して正義の味方戦隊で戦う一対多数の集団戦闘方法が軸になっている。要は正義の味方が一人の敵と戦うときは相手を全員で袋叩きにするのが一般的らしい。


 つまり今回の様な一対一の戦いは正義の味方の本来の戦闘方法ではないのだ。


 どこかの愛と勇気だけが友達のボッチと違って地球平和平等自由隊は常に自分たち側を多数にして戦うことを前提にしている。


 この点を理解して一対一で戦うとおのずとわかることがある。


 それは実際の青原さんとの戦いを振り返りながら説明していこう。




                               *


 「くっ、なんで・・・!」


 青原さんは何度目かのあせりの声を上げる。


 それも仕方ないだろう。模擬戦がはじまってから自分の攻撃は確実に防がれて、逆に俺の攻撃はことごとくクリーヒットしているのだ。もっとも、クリーンヒットと言ってもあえて威力は押さえているからダメージは少ないだろうが攻撃をバンバン当てられて一方的な展開になっているのははた目にも明らかだ。


 「このお!」


 再び青原さんが気合と共にパンチを繰り出すが、俺はそれを受け止めてすぐにカウンターを決める。


 「ぐっ・・・」


 これもダメージを抑えているから決定打にはならないが心理的にしんどいようだ。青原さんの表情からフラストレーションがたまっているのがわかる。


 「これほど一方的な展開になるとはな」


 腕を組んでみている父さんも驚いている。


 「なんで青原さんの攻撃は当たらなくて、赤井君の攻撃は全部あたるのかしら」


 緑川さんが自問するようにつぶやいているが、その答えは簡単だ。


 集団戦闘をメインにしている青原さんの攻撃は、自分の初撃を外されても仲間の攻撃が当たるような攻撃になっている。また攻撃した後は仲間のサポートがある前提の動きで防御姿勢をとっているので、仲間のいない状態では攻撃も防御も中途半端な動きなっているのだ。


 後はその中途半端な動きの隙をついてやればいい。格ゲーで言えばCPUの動きが定型化されているようなものなので凄く動きが読みやすい。


 青原さんは地球平和平等自由隊のリーダー候補だけあってその戦い方は正義の味方の戦い方に忠実だ。そんな青原さんの集団戦闘に置ける正確さがあだになった感じだった。

 

                                   *


 「これで比呂がリーダーと認められたわけですね。まあ、当然と言えば当然の結果でしたね」


 母さんが青原さんを煽るような事を言うので青原さんは青筋を立てているが、母さん本人は全く煽っていることを意識していない。母さんってこういうところがあるんだよ。


 「さあ、比呂。リーダーとして就任のあいさつをしなさい」


 青原さんがブチ切れている地獄の様な雰囲気の中、母さんの全く空気を読まない発言に俺がようやく絞り出した一言は、


 「・・・リーダーとして頑張ります」


 それだけだった。

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