027
正義の味方でのエナジー力測定での結果が出るまでの間、俺は普通の中学生と悪の組織の大幹部としての生活を送っていたわけだが最近大きく変わったことがある。
それは悪の組織ではなく、第六出梨中学での生活だ。
何と言うかめちゃくちゃ調子がいい。
正義の味方(父親と母親)によって行われていた睡眠学習装置と投薬が中止されたことによって、俺のもっていた本来の頭脳と身体能力が戻ってきているようなのだ。エナジー力こそクスリのおかげで強力なっていたがそれだけマイナス面もあったんだろう。
・・・クスリとかの副作用って怖いんだなあ。
というわけで俺は勉強が以前よりもかなりできるようになり、運動面でも目に見えて活躍できるようになっていた。
だが、まるで目立つところのなかった俺が急に学校で目立つようになると起こるべくして起こることがあるらしい。
*
「おい、お前あんま調子に乗ってんじゃねえぞ!」
急にからまれる俺。クラスメイトの鎌井だ。こいつはクラスの不良よりの陽キャだが、不良よりだけあって性格があまりよくない。ついでにいうと頭の方もあまりよろしくない。
と常々思っているがそんな事を本人には言ったことがないのでからまれる筋合いはないのだが、なぜか胸倉をつかまれて恫喝されている。
以前の俺だったら無条件に怖かったと思うが、今の俺は全く怖いとは思わないで、むしろちょっと感動していた。
俺が・・・人にねたまれる日がくるなんて・・・。
何をやっても普通。容姿も普通。性格もどちらかと言えば内向的。そんな俺がねたまれてこんな風にからまれるようになるなんて・・・。
感動するに決まっている。何よりエナジースーツ変身リングは擬態して常に装着しているから安心安全だ。不良にからまれても、ただひたすらに感動するだけだ。
そんな余裕たっぷりの俺の様子に鎌井は更にヒートアップする。
「そうやって冷静ぶっていろんな女にアピールでもしてんのか!」
ミコちゃん一筋の俺には思い当る節はない・・・と冷静に考えていたが、こいつの様子で原因がわかった。
俺を恫喝しながらミコちゃんの方をチラチラと見ているのだ。
どうやら「クラスメイトに威張れる俺ってカッコイイ!」みたいな感じをミコちゃんに見せたいらしい。なんというか目立てなんでもいいんだろうか。アピールしてるのはお前じゃないか。
だが、それはミコちゃんには逆効果だぞ?案の定、
「・・・最低」
と冷たい目で見られている。
まあ、そうなるよねえ。ヤンキー女じゃないんだから山賊みたいな登場の仕方をして「キャー、カッコイイ!!」とはならないだろ。ミコちゃんは悪の組織の大幹部だが暴力は好きではないのだ。なんか矛盾しているけど。
「いや、ううう、こいつがよお・・・生意気でえ・・・」
ミコちゃんに視線に押された鎌井はなんとか言い訳を試みるが、
「・・・最悪」
ミコちゃんに吐き捨てるように言われて、涙目になっている。
「・・・」
最終的に言葉すら発さないミコちゃんのにらみに鎌井は魂を抜かれたかのようにふらふらとした足取りで去っていく。
ショックだよね。俺だってあんな目でごみを見るような目でミコちゃんみたいな超美少女に見られたら人生オワタって思うわ。
「・・・無事?」
相変わらず冷静な感じではあるがミコちゃんが俺の事を心配してくれているのが嬉しかったが、
「・・・殺しちゃだめ」
いや、殺しませんけどね。
ミコちゃんの中で俺のキャラがどんなふうになっているか少し不安になるのだった。




