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暗黒闇極悪軍団に対して勝手な想像を膨らませている父さんは更に続ける。
「もっとも、暗黒闇極悪軍団に洗脳技術があっても私たちには効かないがな!」
「洗脳攻撃を防ぐ方法があるの?」
自信たっぷりにいう父さんに俺は思わず聞き返してしまう。もし、本当に正義の味方側に洗脳を防ぐ方法があるのなら悪の組織の幹部として知っておいて損はない。
・・・俺も完全に暗黒闇極悪軍団の一員の思考になってきた。ミコちゃんの色香に惑わされて入団したものの、大総統のキャラも暗黒闇極悪軍団のスタンスも嫌いではないんだよなあ。
そんな事を俺がしみじみ思っているのを知ってか知らずか、父さんは『洗脳を防ぐ方法』を発表する。
「ああ、それは正義の心だ。正義の心があれば洗脳は効かないのだ!」
「そうですとも!正義の心がある私たちにはそんなもの効かないのです!」
・・・まさかの精神論。ホント悪の組織に比べてブラック企業みたいだよ。正義の味方は。
でも、一応確認しておくか。もしかしたら正義の心は何かの比喩表現かもしれないしな。
「そう言えば今日は中学校の創立記念日だったんだけど、これももしかして悪の組織の洗脳による思い込みだったりしてね」
俺があえて冗談っぽく言ってみると、両親二人は真面目な顔で口をそろえて言ってくる。
「なにをバカな事を。創立記念日は創立記念日だろう。前からそうだっただろ」
「そうよ。母さんが中学生の頃だって、あの日は創立記念日だったわよ」
・・・しっかり効いてる。精神力で科学的装置の洗脳を跳ね返すのは難しいんだなあ。やはり科学が根性に勝つのか。
俺は改めて『創立記念日だと思わせて休みつくり機』のを作り出した大総統のすごさを実感する。
それに比べて正義の味方サイドは何かと言えば精神論に頼りすぎている。
「・・・ここまでやつらが派手に活動を始めたからには我々も本格的に動かなければならないだろう」
父さんが真剣な顔して母さんを見ると、
「では、比呂を基地に連れて行くのですね?」
母さんも力強くうなずいている。
「ああ。睡眠学習装置と秘薬の影響が薄れるまで待とうと思ったが、そうもいっていられなくなったからな」
ん?それってどういうことだ。
「睡眠学習装置と秘薬の影響が薄れるまでって何か問題あったの?」
「今まで両方併用して育てられた者はいなかったから、そんな者が我々の専用装備であるエナジースーツをいきなり使うとどんな悪影響を及ぼすかわからなかったからな。比呂に正義の味方になる事を確認した日から両方の使用をやめていたのだ。父さんたちだって鬼じゃないんだ。ちゃんとお前の事を考えているんだぞ」
いや、もうすでにエナジースーツ(悪の組織の物だが)バリバリに使ってるんですけど。
「そうですよ。確かに睡眠学習装置と秘薬を同時に使用していたのは私たちの落ち度でしたが、ちゃんとあなたの身体の事を考えているのです」
母さんにも続けて言われて、少し申し訳ない気分になる。人体実験みたいな感じで俺を育てていたと思っていた両親だが俺の事も考えていてくれるらしい。
「だが、そうも言っていられなくなった。比呂にも戦ってもらうしかないな」
「そうね。やつらが本格的に活動をさせているなら仕方ありませんね」
前言撤回。こいつらはマジで俺の事よりも正義の味方の活動の方が優先らしい。マジでブラックだわ、正義の味方。
そして俺は『基地』で思い知ることになる。
自分の考えが正しかったことを・・・。
2章終わりです。3章は正義の味方サイドです。




