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02

 「う、うーん、何があったんだ?」


 俺が少しくらくらする頭を抱えながら目を開けると、ミコちゃんが心配そうにのぞき込んでいる。


 「ゴメンね。防衛装置をきるのを忘れてた。大丈夫?」


 「防衛装置?」


 「無断で入ってきた者に昏睡光線を自動で発射するようになっているの」


 昏睡光線?ミコちゃんは当たり前のように言っているが最近ではこういう防犯が普通の事なんだろうか。なかなか過激だな。


 いやいやいや!いくら不審者が入ってきたとしても問答無用で昏倒させるのが普通なわけはない。日本はそんなお国柄じゃない!そもそも防犯装置ではなく防衛装置って言っていたのも気になるし。普通の家にはないよなあ、防衛装置。


 ・・・もしかして俺はかなりヤバい場所に踏み入れてしまったんじゃないだろうか。


 そんな疑念が頭をよぎるが、後頭部から感じる心休まるぬくもりとこの世の物とは思えない柔らかい感触にいったん思考が停止する。


 後頭部にぬくもり、そして目の前にはミコちゃんのかわいい顔、その後ろには天井が見える。


 この感じはまさか・・・HI・ZA・MA・KU・RA!?


 あの伝説の!思春期の男子がされたらイチコロというあのHIZAMAKURA!?


 本当に実在するのか存在すら危ぶまれていたが、まさかこんなところにあったとは。


 そしてこんなにいいものだったとは。


 ありがとう、防衛装置。ホントに君はいい仕事してくれたよ!君のおかげで俺は・・・


 「今まで生きてこれてよかったと思える」


 「…大丈夫じゃないみたい」


 うれし涙を流しながら最後の部分を思わず声に出してしまった俺をミコちゃんが可哀そうな者を見る目で見てくる。


 いかんいかん、ミコちゃんを悲しませるなんて!


 「ぜんっぜん大丈夫です!今すぐ結婚だってできます!」


 膝枕の感触は惜しかったが、俺は元気である事をアピールするために飛び起きるが、


 「・・・心配。会ってもらっても、大丈夫かしら」


俺の様子を不安そうに見ながらミコちゃんは独り言のようにつぶやいているが俺の耳はそれを聞き逃さない。


 会ってもらう?!それってご両親ですか?!


 俺の顔は思わずにやけてしまう。


 この世のものとは思えないほどの美少女の家に来るだけでも夢の様な出来事だと思っていたが、まさか両親に会ってくれなんて・・・。


 赤井比呂、14歳。この時のために生きてきました!俺の14年の人生は無駄じゃなかった・・・・。ありがとう父さん、お腹を痛めてこの世に生んでくれて。・・・いや、痛めたのは母さんか。舞い上がりすぎて少々変な思考になってしまったぜ。


 俺はにやけた顔を今一度しっかりと引き締める。


 ミコちゃんの両親に会うのだ。ちゃんとしたところを見せないといけないだろう。上手くいけば『おお、君はなんと立派な少年なんだろう。こんな精悍な男子ならうちのミコを安心して任せられるな』とかいう展開に・・・。


 俺が妄想しているとミコちゃんはまた不安そうな顔で見てくる。

 

 「・・・心配」


 やばっ、せっかっく引き締めた顔が緩んできていたらしい。ここは一張羅の顔を持ってきて、


 「俺たちの間になにも心配な事なんて・・・」


 ないよ!と俺は言いかけて言葉に詰まる。意識を取り戻してからミコちゃんの可愛さに全感覚を集中していたせいで気づかなかったが、あらためて周りを見ると明らかにヤバい場所にいる事に気づいた。


 そう、一言で例えるならばまるで悪の組織の秘密基地の内部の様な・・・。


 「ここどこ?」


 「・・・私の家」


 なるほど。外見だけ悪の組織風にしているのかと思ったが、内装も悪の組織風になっているのか。ミコちゃんの両親はよっぽどそういうのが好きらしいな。防衛装置といい、オタク趣味もここまでくると少し不安になってくるな。


 いくら金持ちでもオタク趣味のために体育館の半分くらいのスペースを何の意味のない部屋に使わないだろう。普通なら。


 改めてこの部屋を見回してみる。


 やたらだだっ広く薄暗い空間に謎の機械がカラフルな光を点滅させている。何に使うのかわからないモニターが複数合わさった物も置かれているし。


 どこから出ているのかわからない薄暗い霧の様なものが辺りを漂っている。


 そして謎の装飾がされた柱も所狭しと設置されている。明らかに柱としての役割としては多すぎる必要ない数がある。


 ここ、何の部屋だろう。ちょっと変わったインテリアがある応接間って感じでもないしな。悪の組織の大ボスの部屋のように見えるけど。


 もしかして、コスプレ撮影用に悪の組織の大ボスの部屋を作ったとか?それにしてもスペースとりすぎだろ。もしそうだとしたらかなりの上級者だな。闇野家は。


 っていうかなんで俺はこんなにも悪の組織って普通に思うんだろ。なんかこの光景を見ていると頭の奥の方から不思議と悪の組織という単語が浮かんでくる。別にそれほど戦隊モノが好きなわけじゃないんだけどなあ。確かに小さいころはよく見ていたが今はあまり興味がない。


 中学生になっても好きな奴は多分一生好きなんだろうが、俺は今でもアニメは好きだが戦隊モノはそうでもないのだ。


 なにかがおかしい。常識で考えたら、いくら超美少女に誘われたといってもこんな状況におちいったら普通にヤバいと思うはずだ。実際、理性はヤバいと警鐘を鳴らしているが俺の心には余裕がある。なにかがおかしい・・・。


 俺はそう考え始めていたが、ミコちゃんの次の一言でその考えはまたしても吹き飛んでしまう。


 「・・・会って欲しい人がいるの」


 あって欲しい人?そういえばさっきそんな独り言をミコちゃんは言っていたな。そして自宅で会って欲しい人と言えばもう誰かは決まっているだろう。例え自宅が悪の組織風でも関係ないな!


 「会います!例え悪魔でも死神だろうと!」


 俺が食い気味に即答すると、


 「・・・そう。よかった」


 にっこり笑うミコちゃんに、俺はまだその笑顔の本当の意味を理解していなかったのだった。

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