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 「その子は超美少女で頭もよくスポーツもできた。一方わしは頭はよかったが、どちらかといえば冴えない方だった。今で言う陰キャというやつだ。わしはその子に憧れてはいたがなかなか仲が進展していなかった」


おっ、予想通りの展開になってきたな。このおっさんにもそんな時期があったとは。ちょっとわくわくしてきたぞ。


 「だが、話をした事もない者に引かれていたわけではないぞ?その子とは意外と話も合ってな。わしと同様に成績もよかったし、二人ともすでに高校の勉強範囲を超えていたから同レベルで話をできる者が少なかったから結構仲もよかったと思う」


 大総統の場合は高校の勉強範囲どころか当時の最新の科学技術を超えているような気もするが、ここはスルーしよう。


 いつのまにかミコちゃんも真剣な顔で聞き入っている。いつもクールなミコちゃんだが意外とこういう話が好きなのかもしれない。


 「美少女で表向きの性格もよかったからあの子は非常に人気があった」


 性格がよかったの前に変な言葉が付いているがここもスルーしよう。今更いちいち大総統のおかしな発言を気にしていられないからな。


 「人気があるからか、プライベートではいつも予定が入っているようでわしが休みの日に誘っても断られていた」


 それは単純に大総統が嫌がられていただけでは?


 「嫌われているわけじゃないんだけどいつもタイミング悪くて相手に予定が入っているんだよなあ」とか言っている奴がいたら、ポンと肩を叩きながら「あきらめろ」と言える優しさを持った男になりたいものだ。


 俺がそんな事を考えている事も知らずに大総統の話はクライマックスにむかっている。


 「そこでわしは意を決して『創立記念日だと思わせて休みつくり機』を作って、ある日をいきなり休みにしてその子をデートに誘ったのだ!こうすればいつも予定が入っているあの子も予定がないと思ったからな!」


 アホな理由だなあ。作ったモノは天才的なんだが、理由はアホだなあ。

 

 「だが、勇気を出して『創立記念日だと思わせて休みつくり機』作ってまで告白したその子の返事はわしの考えていた物ではなかった・・・」


 そうか。大総統ふられたのか・・・。わかっていたことだが。でも、ふられたとはいえ、そうやってちゃんと思いを伝えたのは偉いと思うし、正直羨ましい。俺はまだミコちゃんにちゃんと思いを伝える勇気がないからな。


 「・・・暗黒大総統様」


 ミコちゃんも少し悲しそうだ。こんなのでも父親だからな。やはりその恋が敗れたとなれば同情するのだろう。


 だが、次の大総統の言葉に俺たちはわけがわからなくなった。


 「その子の返事は・・・『何言っているの?今日は創立記念日じゃないわよ?』だったのだ!」


 ん?なんか雲行きが怪しくなってきたぞ?もしかして大総統は『創立記念日だと思わせて休みつくり機』をちゃんと作れなかったのか?俺のそんな疑問を表情から読み取ったのか大総統は首を振る。


 「ちがうぞ。わしの『創立記念日だと思わせて休みつくり機』は完璧だった。わしの学校で使う前には他の学校でテストをしていたし、その日もその女の子以外は教師を含めてみんな創立記念日休みだと思い込んでいた」


 「では、なんでその子には効いていなかったんですか?」


 俺の当然の疑問に大総統は大きくうなずくと、堂々と言い放つ。


 「そう、その子は『オール洗脳解除装置・ポータブル』を作っていたのだ!」


 『オール洗脳解除装置・ポータブル』?!


 また、聞きなれない言葉が出てきたな。まあ、大総統の発明同様にそのままの名前だから意味は分かるけど。


 「その子はこんなこともあろうかと、 『オール洗脳解除装置・ポータブル』を作って常に携帯していたのだ。そのためわしの作った『創立記念日だと思わせて休みつくり機』の影響を受けなかったのだ。・・・あの時は驚いたぞ。そして悔しかった。わしは『創立記念日だと思わせて休みつくり機』に絶対の自信を持っていたからな。だが、それで良かったのかもしれんな。そう簡単に成功してしまってはわしは今のように世界征服に対する情熱を持ち続ける事ができなかったかもしれん」


 大総統はいい思い出みたいに語っているが、だいぶ俺たちが思っていた方向からずれている。大総統の淡い青春の思い出を聞くつもりが、変態発明合戦の話になっている。


 しかし発明品のネーミングセンスといい、そのぶっ壊れた性能といい、大総統レベルの超天才が他にもこの世界にいたのは驚きだ。いや、むしろ大総統の話しぶりでは大総統以上の超天才だ。


 『その子』のあまりの無茶苦茶ぶりに俺は聞かずにはいられない。高校時代の事とは言え、そこまでの大天才だ。今でも一般人て事はないだろう。


 「いったい何者なんですか、その人?」


 大総統はコホンと咳払いをすると、


 「ミコの母親なのだが」


 「・・・納得。お母さんならありえる」


 ミコちゃんもうん、うんとうなずいて補足してくる。


 「お母さん、暗黒大総統様より発明の才能があるから」


 大総統より発明の才能があるってミコちゃんのお母さん凄すぎるだろ。


 ただ、美少女だったらしいからその辺はミコちゃんが受け継いだのかもしれない。

 

 ここで俺はある疑問を持つことになる。


 そういえばミコちゃんのお母さんて見たことないな、っと。

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