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012

 まだ死にたくないので正義の味方の一員になる事を決意した俺だったが、大きな問題がある。


 「だけど、俺には悪の組織と戦う力なんてないけど大丈夫なのかな。無理じゃないの」


 戦うも何もその悪の組織の大幹部になっているのだ。なんとか理由をつけて正義の味方として戦いに出るのを避けなくては俺は自分自身と戦うはめになってしまう。


 「大丈夫だ。お前が寝ている間に睡眠学習装置で悪の組織と戦える力と知識を身につけさせていたからな」


 おい!父さん、勝手な事してくれてるね!


 どおりで悪の組織の基地に行ったときにやたら頭の中から言葉が聞こえた来たわけだ。そのせいで悪の組織の事も普通に存在するものとして受け入れられたし、エナジースーツの使用のコツをつかむのが異様に早かったのはそういう事か。


 なんか納得できたわ。


 「それだけじゃないわ。毎日の食事にも悪の組織と戦うために必要な力、エナジー力を成長させるために秘薬を混ざていましたからね」


 マジかよ!?だから俺は悪の組織の大総統もびっくりのエナジー力を得ているわけか。


 俺が驚いているとなんか父さんも「なにい!?」と驚いている。どういうことだ?なんで父さんも驚いているんだよ。


 「あの薬を毎日使ってたのか?あれは正常な身体の成長に関して副作用がある可能性もあるから睡眠学習装置を使わない日曜日だけに慎重に取り扱えと・・・」


 おい!母さん!?何してんの!?マジで!もしかして俺が並みの運動神経になってるのはその秘薬のせいなのか?それを使ってなかったらもっと運動神経良かったのか?と俺は母さんに抗議の声を上げようとするが、


 「何言ってるの!睡眠学習装置だって睡眠中に脳を使うから昼間の集中力を奪うからあまり使わないようにしないとって言ってたじゃない。それこそ日曜日だけだって。あなたこそまさか毎日使っていたの?」


 父さん!?そんな危険性がある物を使ってたの?どおりで授業中に集中できなくていつも眠くなるはずだよ。俺の成績が普通なのってもしかしてこのせいじゃないのか?!


 「いやいや母さん、睡眠学習装置を使うから日曜日以外は秘薬は使わないようにとあれほど言ったじゃないか」


 「あなたそれは違うでしょう!?秘薬を使うから睡眠学習装置は日曜日にしか使わないようにと言っておいたはずですよ」


 この流れ・・・睡眠学習装置と秘薬は併用してはまずいってことだよな?ていうかその辺はきちんと確認してから使っていこうよ。実の息子に使うんだから! 


 「まさか睡眠学習装置と秘薬を両方とも使用していたとはな・・・」


「こんな事になるなんて・・・」


 かなり深刻な顔で下を向く両親に俺は不安になる。二つとも使用するのはそんなにヤバいことなのか。


 「すまん、比呂」


 「ごめんなさいね、比呂」


 ねえ、無条件で短い言葉で謝るのやめてくれる?詳細に説明せずに謝るのやめてくれる?何も説明せずに謝られると余計怖いんだけど。


 「でも、これも悪と戦う正義の味方には必要な試練だな」


 「そうね、やはり自己を犠牲にする精神は正義の味方には必要だわ」


 いや、犠牲になってんの俺の身体なんですけど?あなたたちのではないですよね?ていうか開き直るの早くないですかね?


 俺が呆れた目で攻めるように二人を見ていると、

 

 「比呂、お小遣い少しあげてやるからな」


 「比呂君、今日は何食べたい?なんでも好きな物作ってあげるわよ」


 人体実験の代償にしては全く釣り合わない提案をしてくる両親だ。


 そして「まあ、正義のためだし」みたいな事をしきりに言っている。正義って何だろうね?マジで。もうなんでも正義って言っておけば許されるのか。


 なんかもう反論する気も起きなくなってきた。


 「・・・ハンバーグ」


 俺は力なく答えたのだった。


 






一章終わりです。2章「幼稚園バスジャック!?」のモチベーションアップのためできたらブックマークお願いします。

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