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Ep7.大いなる者

七話目っス


 うーん………。

 ………何かが光っている。朝日だろうか?

 深い暗闇の中、一筋の光がギラギラと星のように輝いている。



 私はその光の方へ歩き始める。

 その光は銀色で、眩しいが、不思議と嫌な気分ではない。むしろ良い気分になってくる。


 歩くうちに暗闇は一粒の胡麻の如く小さくなって、遂には消えてしまった。

 世界は光で包まれている。



 「ここは何処なのだろう?」


 ふと独り言を漏らす。誰も居るはずが無いのに。

 しかし誰も居ないはずなのに返事が帰ってきた



 「ここは夢の中ですよー」


 女性らしき優しそうな声が、親切にも場所を教えてくれた。

 どうやらここは夢の中らしい。



 「そうか、ありがとう」

 「いえいえ、どういたしましてー」


 また誰も居ないはずなのに返事が帰ってきた。

 しかし、それを不思議に思う必要は無いだろう。

 ここは夢なのだから。



 「あなた……名前はなんていうの?」

 「私の名前はケイだ」


 おかしな夢だ。

 名前を聞かれる夢なんて聞いた事もない



 「はじめましてケイさん、わたしはウドー」

 「ウドーさんですか、はじめまして」


 今度は夢の中で自己紹介をした。

 彼女(彼かもしれない)の名前はウドーと言うらしい。



 「ところで、ウドーさんは一体何者なのですか?私は大地で暮らす人です、普段は動物を狩って暮らしています」

 「私は昔、この大地にあった国、『ファンガッデリ』の女神をしてたの」


 どうやら彼女で間違っていなかったようだ。

 そして彼女は女神様のようだ。また夢の中に神様が出ると言う話は何度か聞いたことがある。



 「ウドー様、なぜ貴方は私の夢に現れたのですか」

 「わからないわ、わたしひさしぶりに人と話したの」


 わからないと言われた。

 神様がわからないのだから、お手上げだ。

 そう考えているとウドー様がこれまでの経歴を語りはじめた。



 「国がほろびてからわたしとはなせる人いなくなったの、それからずっとくらいところにいたけど急にあなたの夢の中にいたの、あなたはどうしてここに?」

 「私は気がつくと暗闇の中に居て、その暗闇の中で光っている物の方向へ行くとここに辿り着きました」


 私もこれまでの経歴を語る。

 思えばあの光は何が光っていたのだろうか?

 まあここは夢なので深く考える必要もないだろう。



 「ところでウドー様はどこに居るのでしょうか?姿が見当たらないのですが」

 「ふふふっ、わたしは今あなたの目のまえにいるわ、見えない?」

 「見えないですね……、何か原因があるのでしょうか?」


 ウドー様の姿は昼の星のように見ることが出来ない。

 手で前方を探ってみてもなんらそこに何かがあるということは無かった。そこにあるのは銀色の光だけだ。



 ………銀色の光。

 ふとわたしは後ろを振り向いた。

 そこには影が無く、銀色の光が私を照らすのみだった。

 私は気がついた。



 「女神様はこの光なのですか?」

 「ふふふっ、ようやく気がついた、私はこの光なの」


 その瞬間光が一気にこちらへ迫って来た。四方八方から飛んでくる光は、やがてまとまっていき、一つの物体を構成して行く。そしてその美しい銀の光は一人の少女へと変化していった。



 「改めて、自己紹介するわ、ウドーよ、むかしは星の女神って言われたこともあるの、ファンガッデリにいた頃は大地の空を司る神だったけど今はバラレイ川に封印されちゃったからなんの力もないの」

 「バラレイの大いなる川にですか?何故誰に封印されたのですか?」

 「私にもわからないの、封印されてる間ずーっと考えてたけど全く心当たりが無いの、ところでバラレイ川って立派になったのね、大いなる川? 昔は大きくなかったけど今は大きくなってるの?」

 「はい、私の知るバラレイ川はとても大きく、偉大な川です、周辺にはケレル人たちが定住し、川上や川下との貿易で栄えています」

 「懐かしいー、ファンガッデリの町民がよくケレル人と食べ物を交換してたの」


 どうやらケレル人は今も昔も他の人に食べ物を物々交換していたらしい、ウドー様が封印されているバラレイの大いなる川がそこまで大きくない時代ということは何百年何千年も前なのだろう。

 そんな時代からずっと封印されて一人だなんて私だととても耐えられないだろうが、ウドー様は気にする顔一つ見せることなく、昔を懐かしんでいる。

 しかし、しばらくするとウドー様が少し顔色を変えた。少し悲しそうな顔だ。


 「どうかされましたか?」

 「うん、なんでもないの、ところでもうすぐ朝になっちゃうみたいね、もっと話したかったのに……」


 どうやらもう朝は近いらしい。そしてもうすぐ目が覚めるのだろう、視界がだんだんぼやけてくる。


 「もう時間のようですね、またいつか話しましょうウドー様」

 「ウドーで良いよ、ケイ」

 「じゃあ、また会おうウドー」







 ………そう言って私とウドーは別れ、寝床から起床した。

 思い返す程に不思議な夢だったと実感する。

 見上げると、まだ空には銀の星が輝いていた。

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