Ep5.罠
広大な荒地の中を2頭の馬が走っている。
向かう方向にはさんさんと大地を照らす太陽が照っていた……
昨日、リードを誘ったのにはわけがある。
万が一自分で仕掛けた罠に自分がかかると、自力で抜け出すのは難しいから誘ったのだ。
馬に積んである罠は野鹿用の罠で、弁当箱のような形をしている。
箱に張ってある板を踏んだら金属のワイヤーが飛び出して足に掛かるという仕組みだ。
これをいくらか野鹿の歩く場所に埋めておいて捕獲するという作戦である。
前の狩りに使った弓ではなく、罠を使うのには理由があって、矢の原材料となる矢尻や矢羽はどれも特定の金属や鳥の羽根を使用して作られているから、どれも貴重で入手が困難なのだ。
そして、非常に稀だが、大地には時折人を狙って盗賊が現れることもある。襲われた際弓矢は大事な武器になるのであまり多用しすぎることが出来ないのだ。
東の草原……
そこには元々は非常に栄えた街があったとされている。
かつて西と東の国同士での貿易が盛んだった頃は、大地の各地に貿易を生業とする国々が乱立していたらしい。
といっても昔ケレル人が言っていた噂なので本当なのかどうかは分からない。
やがて殺風景が続いた大地に草が増えてくる。
東の草原が近いことを知らせてくれる。
馬から降り、前回野鹿を狩った場所に来てみる。
あれから野鹿は来てないらしく、新しい食事の跡は見つからなかった。
少しこの場所から離れた場所に罠を設置する必要がある。
場所を移し、さらに東の草原にやって来た。
このあたりには食事の跡があり、早朝落とされたと思われるフンも落ちていた。
ここに穴を掘り、罠を埋める。
彼らは鼻が良いので臭いが付かないよう、慎重に穴を掘る。
穴を掘り罠を埋める際も、地表の土と地中の土が混ざらないように気をつける、ここに罠があることを悟られないためだ。
そうやってここと南の草原に2つずつ罠を仕掛けた。
帰る時もなるべく痕跡を残さないように慎重になりながら帰る。
馬に乗る頃には日が暮れ始めており、綺麗な夕日が西に輝いていた。
今日も一日が終わる。