第三話
「お嬢様!大変です‼︎」
一夜明け、朝から家庭菜園の手入れをしていたら、リタが慌てた様子で駆け寄って来ました。
「リタ?そんなに慌ててどうしたの?」
「こ、こ、こ、こっ……!」
「ここここ?」
「こ、公爵様からお嬢様に、求婚の申し入れがありましたっ‼︎」
……………………え?
「――えぇぇぇぇぇぇええっっっっ‼︎‼︎‼︎⁉︎」
何で⁉︎どうして私に求婚をっ⁉︎
「旦那様方がお待ちです。急いで応接間にお越しください‼︎」
慌てて応接間に向かいます。
「お父様!お母様!」
「スカーレット……」
「やったわねスカーレット!」
応接間に入ると、お父様は顔面蒼白、お母様は上機嫌という両極端な状態の両親が座っていました。
「公爵様から私に求婚ってどういうこと⁉︎」
「僕が知りたいよ……」
「あら、どうもこうもないわよ。うちのスカーレットが公爵様に気に入られたんでしょ」
「でも、会ったことないんだよ⁉︎」
「私達も会ったことないわよ?ね、あなた」
「うん。僕達があまり王都に行かないのもあるけど、公爵様もあまり公の場には来られないからね」
ウルフ・キングスリー公爵様は、現国王陛下の弟君で、将軍でもあります。
公爵様のお名前と、戦地を勇ましく駆ける姿から『神速の銀狼』の異名があるほど凄い方です。
そんな凄い方が、社交の場にも全然出ない貧乏令嬢の私に、どうして求婚なんか……。
「きっと素敵な方よ?求婚の申し込みと一緒にプレゼントまで贈ってくださって」
プレゼント?
「あー、この箱の事?」
お父様達の側に、包装された箱が2つ置いてあります。
「スカーレット、開けてみたら?」
お母様が期待に満ちた顔で見てくるので、とりあえず一箱開けてみます。
「――え、これ……」
開けた箱に入っていたのは、ミントグリーンのドレスでした。
昨夜、ダメにしてしまった物より、格段も上質な物。
「まあ!素敵ね!」
「……うん、とっても」
偶然?
ミントグリーンのドレスがダメになったのを知ってたみたいにタイミングが良いけど。
残りの箱を開けるとドレスに合わせたデザインの靴が入っていました。
ドレスに合わせた靴は、なんでサイズがわかったんだろうと思うほどぴったりサイズ。
「明日着たらいいわね!」
「明日?」
「そうよ、明日うちにお見えになるんですって」
「……は?」
お母様、そんなさらっと。
「……求婚を申し込む手紙と、プレゼントを持って来てくださった使者の方から、明日公爵様がうちを訪ねてもいいか聞かれてね。使者の方をお待たせするわけにもいかないから、どうぞお越しくださいって返事するしかなかったんだよぉ!」
「……お父様」
お父様は嘘を吐くの下手だから、断れなかったんだろうな……。
……公爵様か、どんな人なんだろう。