46話 レプリカ
「え〜っと、まずは自己紹介から。俺はリュウ。今日入学してきた新入生だけど、まぁそれなりに強いと思う。よろしくっ♪」ペコリッ!
「あ、あの〜。」
「はい、何かな?」
「俺たちも二刀流になった方が良いんでしょうか?」
「いやいや。そこは自分で決めてもらって構わないよ!右手だけの動きを見せれば、片手剣と似た感じになるだろうし。」
「わ、分かりました!」
「他になければ、練習を始めましょう!とりあえず、二刀流の動きを見せるけど、一刀流の人は右手の動きだけ見ててね!」
「はいっ!!」」」」」
5年生達はその場に体育座りし、俺の一挙手一投足を見逃すまいと注目する。
まぁ中には、俺のスカートの動きに注目しているバカも数人いたが、、。
俺はゆっっっっっく〜〜り、二刀流の基本的な動きを見せる。
さらに続けて、俺の考えたコンビネーションやフェイントなども見せた。
「、、と、まぁこんな感じかなっ♪今日のところは、素振りをしてもらって、俺が見て回るって事でいいかな?」
「はいっ!!」」」」」
5年生達は立ち上がり、互いに距離を開けて素振りを始めた。
数人、顔を赤くしながら体育座りのままの奴らがいるが、まぁ、、生理現象だから仕方ない。
お年頃だもんね?
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「お願いします!!」
「うんっ♪じゃ、どうぞ?」
ブンッブンッブン!!
「ふむふむ。君は剣の握りが甘いね。それだと打ち合った時に剣を弾き飛ばされちゃう。、、それと、腕だけで振ってる感じだから、もっとこう!!体全体を使う感じにすると、威力も剣速も格段に上がるよっ♪」
「あ、ありがとうございますっ!!」
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・
「お、お願いしますっ!!」
「はい、どうぞ〜?」
ブンブンッブンッブンブン!!
「ふむふむ。君は一撃目をフェイントのつもりで使うのかな?それなら別にいいんだけど、そうじゃないなら手抜きすぎだね。多分、反撃されてゲームオーバー。キレのある一撃目はそのまま次の攻撃に繋がるから、気をつけてみてね!」
「は、はいっ!!ありがとうございますっ!」
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・
・
「よろしくお願いしますっ♡」
「え、えっと、、顔近い。」
「あっすみませんっ!私ったら♡」
「ま、まぁ、、どうぞ?」
ブンッブンブンブンッブンブン!!
「ふむ。女性ならではのしなやかな動きだね。なかなか良いと思うけど、もう少し連撃をスムーズに繋げられると、さらに良くなると思うよっ♪」
「はいっ♡リュウ様っ♡今度一緒にお茶でもっ♡」
「はい、次の人〜。」
「ああんっ♡リュウ様ったら♡」
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「、、って感じに力を使うと良いと思うよ!」
「ありがとうございました!」
「ふ〜っ。とりあえず全員見れたかな?、、オネーちゃん、お待たせ〜!」
「は、はいっ!!今日は剣一振りしか無いので、二刀流は明日から頑張りますっ!!」
「う〜ん。スタイルを変えるなら、1日でも早い方がいいんだけどなぁ、、。よし!ちょっと待ってね?」
「は、はいっ!!」
俺は魔法で剣を作ってみる事にした。
家だって建設出来たし、ミミーのガラクタ美術館だってあの仕上がりだったんだ。
多分作れるはず!!
とりあえず、オネーちゃんが今使っている剣と全く同じものを作ってみるとしよう。
材質はチタンミスリル合金製で、刃渡り112cmの片手持ち両手持ちどちらも対応出来るバスタードソード。
俺は魔力を両手に集め、足元に向けた。
ここからが面倒だが、やるしかないからな。
「え、、え〜っと、戦いの女神に〜、お、俺の魔力をあげるから〜、、えっと、剣を作ってちょうだいなっ?、、ケン・デキアガール!!」
俺は超適当な詠唱と魔法名を口にしながら、魔力を放った。
すると足元に光が集まり、剣を形作っていく。
30秒ほどでその光は一振りの剣となって収束した。
「ふぅ。よしよしっ!オネーちゃんの剣と、全く同じのが出来たね!!」
「あ、、え?リュウさん、、今の魔法って?」
「ん?あ〜、、今のはケン・デキアガールっていうやつだよぉ〜?まだ発見されたばかりだから、知らないのも無理はないね!?」
「そ、そうなんですね。ケン・デキアガール、、私も覚えたいですっ!!」
「そ、、そか。頑張ってね?」
「はいっ!!魔法陣は、大図書館に行けば見られますか!!?」
「あ、、えっと〜、ま、まだ公開されてないんじゃないかなぁ〜?というか、この先も公開されないんじゃないかなぁ〜??」
そんな魔法陣ないし!!
「あっ!!それもそうですよね。ケン・デキアガールが広まってしまったら、武器屋さんは廃業することになりますもんね、、。」
「そ、そうだね!うん、その通りだよ!!まぁ何か武器が欲しくなったら、俺に言ってくれれば作ってあげるよ!」
「わぁっ♪なら、リュウさんと同じ剣が欲しいですっ!!2本とも凄く綺麗で、、特に透き通った方がっ♡目が離せなくなるって、こういう事なんだなぁって思いましたっ!!!」
と、オネーちゃんからリクエストが入りました。
ふむ。国宝級の聖剣を一般人、、それも子供に持たせるのはダメだよね。
下手したら、襲われて奪われるだろうし。
「ごめん。この剣はちょっと作れないんだ。特殊な金属みたいでね?ほら、この通り。」
ス、、キンッ!
「えっ!?」
俺は今作ったオネーちゃんと同じ剣に、月下美人をそっと優しく撫でるように当てた。
月下美人は、まるですり抜けたかの如く、当てた部分の裏側へ。
数瞬遅れて剣は刃を失い、その刃は地面に突き刺さった、、。
「ね?こんな剣、もし作れたとしても、オネーちゃんが持ってるのは危ないと思う。」
「、、そうですね。きっと襲われます。残念ですが、、。」
「ま、まぁそんなに落ち込まないで?そ、そうだ!これは無理だけど、今の剣より良い剣を作ってあげる!!だから、、ねっ?」
「でも、この剣だって、チタンミスリルでなかなか良い剣なんですよ?」
「うん。なら、合金じゃない、純ミスリルの剣ならどうかな!?」
「じゅっ、、純ミスリルっ!!?リュウさんっ!?」
「な、何かな?」
「純ミスリルの剣、店で買ったらいくらすると思ってるんですかっ!!?」
「え、、えっと、そうだなぁ。、、10000GLDくらい?」
「安い片手剣でも、5億GLDはしますよ。」
「ええーーっ!!?」
「リュウさん。私と結婚して、武器屋を営みましょう!!」
「い、いやいや!!、、しかし、そんなに高い剣、オネーちゃんが持ったら、きっと、、。」
「そうですね、、。そんなに高い剣をもらったら、明日には退学して売ってしまいそうです、、。」
「だよね。う〜ん。じゃあ、今のチタンミスリル合金の、ミスリル純度を10%だけ上げて作るよ。見た目も今と全く同じにすれば、、ね?」
「それなら問題ないですね!!お願いしますっ!!」
「オッケーっ♪」
俺はイメージする。
オネーちゃんの剣は、チタン鉱石84%・ミスリル鉱石16%で作られたチタンミスリル合金。
それを、チタン鉱石70%・ミスリル鉱石30%のチタンミスリル合金とする。
端数分は面倒なので、四捨五入させてもらおう。
見た目も全く同じが良いのだろうが、それだと少し芸が無い、、よね?
よし。月下美人の、透き通ったガラスに月明かりが差し込んだ神秘的な見た目を採用しよう!
オネーちゃんも絶賛してくれてたから、きっと気に入ってくれるだろう。
俺は魔力を両手に集め、足元に向ける。
さぁ、またまた面倒な詠唱と魔法名のお時間ですよ?
「あ〜、、えっと、なんだっけ。あ、戦いの天使達に〜、俺の魔力を貸してあげるから〜、え〜っと、、ケン・ニホン・カンセイ!!」
俺は超適当な詠唱と魔法名を言いながら、魔力を解き放つ。
足元に光が重なるように集まり、双剣を形作っていく。
その光は徐々に収まり、完全に収束したその場には、2本の剣が残されていた。
神秘的な虹色の輝きを見せる純白の鞘に収まった2本の剣。
ふむ。剣身の見た目だけのつもりが、月下美人のイメージが強すぎたな。まるっきり月下美人のまんまだぞ?
とりあえず見た目だけだと思うけど、、。
俺は2本の剣を拾い上げ、確認してみる。
鞘から引き抜くと、細身の剣身は透き通ったガラスに薄っすらと月明かりが入り込んだような、とても幻想的なものである。
鍔元には月下美人の花が一輪、蕾の状態で彫られていて、刃渡り136cmの片手直剣。
ここまでは同じなのだが、月下美人よりも2.5kgほど重いな。
循環している魔力も、チタンミスリル合金のものだから、問題ないだろう。
「そ、、それって、リュウさんと同じ剣じゃないですかっ!?」
「い、いやいや!見た目は全く同じなんだけど、チタンミスリル合金製だよぉ〜?ほら、持ち比べてみれば分かるから。」
「あ、、少しこっちの方が重いですね。」
「でしょ?オネーちゃんが凄く綺麗って言ってくれたから、剣身だけ同じにしようと思ったんだけど、ちょっとイメージが強すぎちゃったみたいでね?」
「えっと、、イメージ?」
「あっ、、ま、間違い!!詠唱っ!!そう、詠唱を間違えてしまったんだよ〜っ!?」
「リュウさん。そういえばさっきと違う魔法名でしたよね。ケン・デキアガールじゃなくて、ケン・ニホン・カンセイって、、なんなんですか?」
「い、いや!それはね!?そうっ!!双剣の時はまた別の魔法になるんだよっ!!ほ、ほらっ?2本同時に完成したでしょっ!?」
「はぁ。まぁ、言いたくないなら、無理に聞こうとは思いませんよ。でも、私の信頼度が上がって、気が向いたら話して下さいね!?」
「うん、、ありがとね。」
「ふふっ♪では、二刀流の練習をお願いしますっ!!」
「了解っ!!」
こうして、オネーちゃんに月下美人レプリカを2本渡して、2人で二刀流の練習を始めた。
前の剣より長くはなったが、ミスリル純度が上がった事により重量は大分軽くなったので、問題なく扱えそうだ。
しかし、今回の事で一つ発見してしまったな。
俺、聖剣だって作れるんじゃないのかなっ!?
寮に戻ったら試してみよう!と、ワクワクしながら練習に励む俺なのであった、、。




