43話 いざ、学校へ!
今日は国立騎士学校の入学式。
相変わらずの賑やかな朝ご飯を済ませ、準備してもらっていた制服に着替えて出発の時間を待つ。
「まぁっ♡皆、よく似合ってるわ〜っ♡」
「そうかな?、、なんかスカートっていうのがイマイチ慣れないけど。」
「ニコは気に入ったっ♡ふふっ♡」
「リュウさまっ♡可愛すぎますっ♡」
「わ、私の次に似合ってるわね!?」
「早くお刺身食べたいのんっ♡」
と、制服を着ただけでも騒がしい俺たち。
白のワイシャツにワインレッドのベスト。それにワインレッド地に黒のチェック柄スカートというのが女生徒の制服で、入学式や卒業式などの行事の時は同色のベレー帽みたいなのを被る決まりらしい。
しかし、よく1日で俺(女ver.)の制服まで揃えられたね。感心するよ!
、、いや?まさか初めからコレを、、?
ま、まさかね。
「じゃあ、そろそろ行こっか!、、皆〜!行ってきまぁすっ♪」
「いってらっしゃ〜いっ」」」」」
俺・ニコ・パル・ミミー・チェリー・アンナ・バニー・シェリー・母・トラミの10人で学校裏の林に転移した。
誰かに見られると色々面倒だからね!
母とトラミは、我が子の入学式を観るために同行した。
こそこそと学校の正門に向かうのだが、凄い数の人、人、人、、。
俺たちは、林の陰から出るタイミングを計る。
「これだけいると、林から出るのもタイミングが難しいね。」
「そ、そうね。シェリー、お願いできるかしら?」
「お任せ下さいませ。」
そう言うとシェリーはフッと姿を消し、数秒後、、表通りから大声が聞こえた。
「きゃーーーーっ!!!!チカンよーーーっ!!!」
ザワザワザワザワ、、
「今よっ♪」
その叫びに合わせてスッと立ち上がった母は、何食わぬ顔で正門に向かう。
俺たちもその後に続き、林から出た。
表通りにいた人々はチカン騒ぎに釘付けで、俺たちが林から出てきたのに気づいた者はいなかった。
「ふふっ♪大成功ねっ♪リュウ、後でシェリーに何かしてあげてねっ♡」
「あ〜、やっぱりさっきの声って、シェリーだよね〜。了解だよっ♪」
シェリーのおかげで、何事もなく正門をくぐる事が出来た訳だが、ここからが問題である。
既に周囲の視線を集めまくっているのだ!!
「あれって、ローラ様よね?」とか、、
「ヤバい!!可愛すぎるっ♡」とか、、
「あ〜っ、あの御御足に踏まれたいっ♡」とか、、
とにかく目立ちまくっている。
「ね、ねぇ?ローラ様って、ナポリタン王国の第一王女様よね?」
「そ、そうだね?」
「お義母さんの名前って、確か、、。」
「そ、そうだね?ミミーの思ってるので合ってると思うけど、今はまだ騒がないでね?後でちゃんと説明するからさ?」
「わ、、分かったわ。絶対よ?」
「うん。」
ミミーにヒソヒソと話しかけられたのだが、事実を知って騒がれると、ますます注目されてしまうので、後で説明するということで何とか納得してもらった。
「それじゃあ、母さんとトラミは、先に講堂の方に行ってるわねっ♪」
「チェリー。周りの人を殺さないようにするのよ?」
と、校舎前で2人と別れた。
トラミが物騒な事を言っていたが、まぁ今さらの事なのでスルーしておこう。
「では、リュウ様方はこちらでございます。」
先導してくれるアンナの後に付いて、校舎の中へと進む。
「話しかけてこいよっ!?」
「お前が行けって!!」
「あぁ〜っ女神様〜っ♡」
などなど、教室に向かう途中も注目の的であった。
「ミミー様はこちらの教室でございます。」
「あっ、そうだったね。ミミーは魔法科だから、俺たちとは別教室なのかぁ。」
「ま、まぁ騎士科でも魔法実技の授業は一緒だから、またすぐ会う事になるわよっ!?」
「それもそうだねっ♪」
「リュウ様、ミミー様。陛下の図らいで、寮が同室になっておりますよ?」
「そうなのっ!?」」
「はい。もちろんニコ様・パル様・チェリー様も同室でございますので、ご安心下さいませ。」
「そっかぁ!後でお爺ちゃんにもお礼言いに行かなきゃねっ!!」
「リュウ、陛下をお爺ちゃんって、、。やっぱりそうなのね?」
「ま、まぁその話はまた後でっ!ねっ!?」
「わ、分かったわよ。じゃあ、、。」
ぶすっと不満げな顔をしたミミーと別れ、隣の隣の、も一つ隣の教室に案内され、アンナ達と別れた。
どうやら、メイド達でも教室には入れないようだ。
まぁ、メイドを連れてきてるのは俺だけじゃないから、メイド達まで教室に入ってきたら、教室が溢れかえるもんね。
教室に入った俺たち4人は、前の黒板に書かれた席を探す。
席順は五十音順で、女:男 といった列が縦に3列、横に8列あり、1クラス24人のようだ。
俺たちは縦に、チェリー・ニコちゃん・パルちゃん・俺といった席順になった。
まぁ、家名が4人ともナポリタンだから、当然だよね。
一つ気がかりなのは、俺の隣の男の名前だ。
リチャード・ナポリタン、、。
多分、母さんの弟であるメルザン王子の子なんだろうけど、まさかの同い年とは、、。
なんか面倒ごとに巻き込まれそうだよね、、。
「ねぇっ!君、可愛いねっ♡良かったらこの後、僕が直々に剣を教えてあげるよっ!!」
「、、あっ、俺に言ったの?」
「ははっ♪そんなに可愛いのに、自分のことを『俺』だなんて、ギャップ萌え狙いかなっ!?」
「い、、いや。そういう訳じゃないんだけど。」
「まぁいいさっ♪で、どうかなっ!?僕と仲良くなっておけば、きっと君の為になると思うよっ♡」
「あはは。なかなか面白い事を言うね。理由を聞いても?」
「だって僕の家は伯爵だからね!!平民が僕の愛玩動物になれるなんて、、
スッ、、パラパラパラ、、
「リュウ?まだ殺さないの?」
俺が変な奴に絡まれているところに、2つ前の席から鋭利な爪が伸び、変な奴の前髪を斬り落とした。
そう、ニコちゃんである。
俺としては、この変な奴の戯言をもう少し聞いていたかったのだが、さすがに入学式前に流血沙汰はまずい。
「ニコちゃん。爪をしまって?、、えっと伯爵家の君。俺の名前は知ってるかな?」
「ぇ、、ぃ、ぃゃ、、。」
「俺はリュウ。リュウ・ナポリタンっていいます。オーケー?」
「ぇ、、えっ!?ナっ、ナポリタンっ!!?」
「そっ。で、王族を愛玩動物にしようと企む君の名前は?」
「すっ、すみませんでした!!ど、どうかっお許し下さいっ!!!!」
大声で謝罪の言葉を叫びながら、俺の足元で土下座する変な奴。
ザワザワと教室中が注目する。
さて、、どうしたものか。
俺の次の一手で、これからの周囲の対応が変わってくると言えるだろう。
例えば、、
「許す訳ないでしょ?はい、死刑っ♪」
と言った場合、俺に話しかけてくる同級生はいなくなるだろう。
逆に、、
「オッケーオッケーっ♪むしろ愛玩動物になろうと思ってたところだよっ♪」
と言った場合、同級生どころか学校中の男が群がってくるだろう。
う〜む、、。難しい選択だな。
いや、愛玩動物になりたいってのは例えで使っただけだからね!!
「おい、そこのお前。僕の席で何をしている?」
「リュウ様に許しを乞うているところだ!!邪魔をするなっ!!」
「ほ〜う。面白い。僕にケンカを売ろうと言うのだな?」
「黙れっ!リュウ様っ、どうかお許し下さいませっ!!!」
「あ、うん。許す許す。俺がどうにかする前に、君の家は終わりを迎える事になるだろうからね。」
「えっ!?」
床に額を付けて土下座していた変な奴だったが、俺の言葉を聞いて顔を上げた。
そこには、金髪のイケメン男子がこめかみに血管を浮かび上がらせ、腕を組んでいる姿があった。
「あ、、リ、リチャード、、様。」
「ほう?僕を知っていたか。お前は確か、ジャーマン伯爵家の者だったな?」
「ひっ、、。」ガタガタガタ、、
「今死ぬか、一族ごと死ぬか、、選べ。」
スチャンッと腰の剣を抜いたリチャード。
はぁ。せっかくニコちゃんを止めたのに、このままじゃ流血沙汰じゃん!
「あ〜、、リチャード君?入学式前に流血沙汰ってのは、どうかと思うよ?」
「僕に口答えするとはいい度胸だな。名は?」
「リュウ・ナポリタンだよ。」
「リュウ、、だと?う、嘘ではないだろうな!?」
「嘘つく必要がないからね。」
「しかし、、いや、なぜ女?、、女装ではないのだな?」
「あ〜、、なるほど。誰かから俺の話は聞いていたのね?残念ながら正真正銘、超絶可愛い女の子だよっ♡」パチッ♡
「ブハッ!!!」」」」」ボタボタボタ、、
俺が上目遣いウィンクすると、教室中の男子が鼻血を噴き出しながら前屈みになった。
もちろんリチャード君も。あ、女生徒も。
「ま、まぁいい。リュウの顔に免じて、今回は許してやるとしよう。自分の席に戻れ。」ボタボタボタ、、
「あ、ありがたき幸せ!!リュウ様、本当にすみませんでした!!あと、、ご馳走さまでしたっ♡」ボタボタボタ、、
と、丸く治った訳だが、ある意味、流血沙汰に発展してしまったな。
今度から気をつけるとしよう、、。
ガラガラガラ、、
「え〜、、この1-Aの担任の〜、、って!なんで皆して鼻血出してるんだ!?流行ってんのか!?」
騒動が治まり、5分ほど経ったところで、担任の女教師が入ってきた。
、、が、俺たち4人以外が鼻にティッシュを詰めていたので、自己紹介が止まってしまった。
なんか申し訳ない。
「と、とりあえず、入学式前に保健室に寄って行くからな。で、、私がお前たちの担任、コウメだ。ウメちゃんとでも呼んでくれ。」
コウメ先生、、通称ウメちゃんは、この学校について簡単に説明してくれた。
この学校の生徒である限り、平民・貴族・王族など、身分は一切関係なく全生徒を平等に扱うと。
それは生徒同士も同様で、身分によるいじめや差別は徹底的に排除すると。
つい先ほど発生した事例も、これにあたると思うが、まぁ説明を受ける前だったのでノーカンだろう。
「、、と、まぁ今はこれくらいでいいか。この後入学式をしたら、今日は終わりだ。授業は明日からだから、自前の武器を忘れるなよ〜?」
「、、、。」」」」」
「返事は〜っ?」
「はぁいっ!」」」」」
「よろしいっ♪んじゃ、保健室経由で講堂へしゅっぱ〜っつ!」
皆でぞろぞろと教室を出ていく。
廊下で待機していたアンナ達だったが、3人とも鼻にティッシュを詰めていた。
もしかして、見えてた?
いや、、まさか、ね?
メイド3人組の理解不能鼻ティッシュに、妙な胸騒ぎを覚えた俺なのであった、、。




