26話 世界的大厄災
俺は今居る世界の裏側にある、もう一つの世界をイメージする。
ここでは、時間経過という概念が存在せず、何を入れても劣化しない。
この世界の管理者が、入れたものを完全に管理していて、頭で出したいと思えば、希望のものを出してくれる。
しかし、管理者さんが1人ぼっちというのは可哀想か。
よし!管理者さんは夫婦にしよう!!
俺も遊びに行くし、ニコちゃん達も連れて行けば寂しくないよねっ!!
まずは手始めに、このドデカいクロマグロを収納してみるよっ!?
魔力を手に集め、クロマグロに触れてみる。
すると、そこにあったのが嘘だったかのように、パッと消えてしまった。
俺は頭の中で、裏の世界に語りかけてみる。
[クロマグロ、ちゃんと入ったかな?]
[28m96cmのクロマグロ、ちゃんと届きましたよ!]
と、頭の中に男性の声が響いてきた。
ふむ。今のは管理者の夫の声だね?
どうやら成功したようだな!
[ありがとっ♪後どのくらい入るか教えてくれる?]
[リュウさん、何を言っているのですか?ここはそちらと同じ大きさなんですよ?]
[は?]
[ふふふっ♪リュウさん、初めまして。私から説明しますね?]
夫の言葉の意味を理解できずにいると、今度は女性の声が響いてきた。恐らくは管理者の妻の方だろう。
[ここはそちらと全く同じ大きさの世界です。なので、最大容量はそちらに存在する全てという事になりますね。そちらの世界を丸ごと入れれば、それ以上は入りません。分かりましたか?]
[えっと、最大容量は理解できたけど、俺の魔力でそんなの作れたっていうのが意味不明というか、、。]
[リュウさんの魔力は、異常と言えるほどですよ?ライオスキング×ブラックタイガー×リュウさん=現在の魔力、、となっていますからねっ♪]
[あれ?能力共有って、プラスされるんじゃないの?例えば、ニコちゃん魔力が4、チェリー魔力が3、俺魔力が2なら、4+3+2=9って感じじゃ?]
[それは1個体と契約した場合ですね。ニコさんとリュウさんだけなら、4+2=6。チェリーさんとリュウさんだけなら、3+2=5。ですが、複数個体との契約の場合は相乗効果により、4×3×2=24となりますね。]
[つ、、つまり?]
[はい。リュウさんは世界的大災厄とも言える存在という事ですねっ♪]
[ですよね〜、、。ちなみに、なんとかする方法はあるかな?]
[あるにはあるのですが、辛い選択になると思いますよ?]
[あ〜、、聞かなくても分かったよ。ニコちゃんかチェリーのどちらかが死ねばって事だね?]
[はい。夫婦の誓いの解除は、死以外にありません。それに、解除されて魔力が減ってしまうと、この裏の世界も消えてしまいます。私たち夫婦は、強制離婚となります。]
ふむ。夫婦にしておいて、気に入らないから離婚させるとか、、ないわ〜っ!!
能力的には人に戻るかもしれないが、精神的には人じゃなくなるよ!!
それに、ニコちゃんやチェリーを殺すなんて、考えるだけで気持ち悪くなる!!
[その選択肢は初めから無いよ。安心して!]
[ありがとうございますっ♪話が逸れてしまいましたが、最大容量については先に述べた通りですので、なんでも送って下さいっ♪]
[ありがとねっ!じゃあ、今からマグロをバンバン送るから、管理の方は任せるね!よかったら2人も食べてねっ♪]
[はいっ♪]
俺は総量274tのクロマグロをアイテムBOXへと送った。
「リ、リュウ様?説明して頂けますか?」
「あ、そっか。まだ2人には言ってなかったんだよね?まぁとりあえず、家に帰ってから説明するよ。」
「分かりました。では、参りましょう。」
俺はアンナとバニーと共に、家のリビングへと転移した。
「おかえりなさいませ。、、あら?アンナとバニーも一緒なんですね?今日から専属メイドになるんですか?」
「ただいまっ♪それなんだけどね?」
「リュウ様。シェリーには私から説明しますので、まずはマグロをどうしたのか聞かせて頂けますか?」
「うん!えっと、どこから説明しようかなぁ。う〜む。まずは、魔法の原理から話そうかな。、、実は、魔法っていうのは〜、、
と、人間の常識的な魔法の使い方がどれだけ無駄だったのか、、から始めて、無詠唱魔法の存在、それを応用した転移魔法について説明した。
その間、チェリーにはマグロ各部位のお刺身と、マグロ各部位のお寿司、鉄火丼、大トロ丼、マグロ山かけ丼、マグロステーキなどを食べてもらっていた。
ひと通り説明を終えると、アンナとバニーから感想を聞かされた。
「今までの詠唱は全て無意味だったのですね、、。」
「自慢げに長い詠唱をしていた私を、ひっぱたいてやりたいです、、。」
まぁ、母やミミーと似た感想であったが、、。
「リュウ様、説明して頂きありがとうございます。では、シェリーに先ほどあった事を説明してきますので、席を外させて頂きますね?」
「うん!」
アンナとシェリーがリビングから出ていくのを見送り、俺とバニーもマグロ尽くしを味わう事にした。
「うぉっ!!この赤身っ!!美味すぎるよっ!!!」
「こちらのマグロ納豆も堪りませんよっ!!ああっ、幸せです〜っ♪」
「リュウさんっ♡アタシはマグロステーキも大好きなのんっ♡」
3人でバクバク食べまくっていると、アンナとシェリーがリビングへと戻ってきた。
「リュウ様っ!!」
「な、何かな?」
「アンナから聞きました!!」
「う、、うん。」
「私を島流しにするなんて、酷いと思いますっ!!!」
「え、、えっと?島流しじゃなくて、元の仕事場に戻るだけじゃ、、
「私を道具のように使うだけ使って、用が済んだら捨てるなんてっ!!鬼畜生のする事ですよっ!!?」
「い、いや、、捨てるなんて、、
「ではっ!!?」
「わ、分かったよ。引き続き、俺の専属家庭教師でいてね?」
「はいっ♪宜しくお願い致しますっ♪」
「う、うん。よろしく〜、、。」
アンナから聞いた話というのが、どんな内容だったのかは分からないが、色々と盛られた話だったのは想像がつく。
だが、本人の知らないところで、勝手に話を進めてしまったのはダメだったね。
次からは気をつけるとしよう。
「そういえばチェリーの服、ありがとね!とても可愛く仕上がってると思うよ!!」
「はい。1度、Tシャツを糸に戻しまして、不足分を足して作り直しました。下着は上下セットでブラは見せブラに。ジーパンはホットパンツにしてみました。」
シェリーの言った通り、白と黄色のボーダーTシャツには、濃いピンクのブラが透けて見えている。
だが、いやらしさを感じさせるものではなく、一つのオシャレとして完成されたものであった。
それに合わせてのホットパンツもバランスが良く、全体的調和のキーアイテムとなっている。
こんなにオシャレで超絶可愛い子なんて、1分おきにナンパされるよ!!
「しかし、真面目な騎士学校で、ブラが透けているのはまずいかもしれないね〜、、。」
「そのあたりは問題ありません。ちゃんと清楚な服も30着ほど作りましたので。ちなみに、セット下着も同数お作りしましたので、選ぶ楽しさを感じて頂けると思いますよ?」
うん。仕事が早すぎるよっ!?
「そ、、そか。」
シェリーの有能さに感嘆しつつ、マグロ尽くしを堪能する。
しかし、幸せな時間というのは、長くは続かないものだ。
リビングに、、悪魔が降臨した。
「リュウ?母さんが言いたい事、分かるかしら?」
「え、、えっと、お、、おはよう?」
バンッ!!!!
「リュウっ!!!!」
「違いますよね〜、、。ごめんなさい。」
母は右足で床を強く踏み抜いた。
大理石に足型が出来るくらい怒ってらっしゃるようだ。
潔く謝っておこう。ガクブルッ
「母さんの分も頼むわねっ!?」
「わ、分かってるよ。」
俺はクロマグロ尽くしを追加作成し、テーブルの上に並べていった。
更に、この後起きてくる子の分もまとめて作り、アイテムBOXに収納!
ちゃんと管理者夫婦の分も作り、『管理者夫婦の朝ご飯』という名目で送ったので、食べてくれると思う。
この後、続々と皆が起きてきてマグロ尽くしを食べ始め、全員が揃ったところで、チェリーの紹介をしてみる。
「えっと、、昨晩、俺の第2妃になった、ブラックタイガーのチェリーです。人語は使えるけど、人間としてのルールとかはあまり分かってないので、皆からも教えてあげてね!」
「リュウ様って、意外と女ったらしなのですね?」
「い、いやいや。チェリーのは不可抗力って言うか、隙を突かれただけなんだよ。」
「では、私どもにも機会はあるかもしれませんね。」
「それは無い。」
「ちっ、、。そこはノリで、『狙ってみてねっ♡』くらい言った方が、円滑な人間関係を築けるものですよ!?」
「バニーは、即答の方が嬉しいのかなって思ったんだけど、違うならやめ、、
「なくていいです!!!」
「そ、、そか。」
これまでの絡みで、バニーは少しイジられたい気質なのを察していたが、間違ってはいなかったようだ。
まぁ、若干、、Mっ気が?
「あっ、そうだ!母さんに話があったんだよ。」
「何かしら?愛の告白かしらっ♡」
「いや、それも無い。」
「違うのっ!?、、はぁ。じゃあ何?」
バニーの流れで、ついつい即答してしまったのだが、母のテンションはだだ下がり。
これはちょっと親不孝な感じなので、さりげなくフォローを入れておくとしよう。
「俺の愛は言わなくても伝わってると思うから、愛の告白はしないよ。」
「まぁっ♡そうよねっ、母さんったら早とちりしてしまったわっ♪それで、何の話をするつもりだったのかしらっ?」
「えっとね?昨晩、ミニマウンテンに行ってきたんだけどね?」
5人組犯罪者たちの事、ブラックタイガー家族の事を話した。
「、、そう。ターシェは野心家だから、いずれ行動に移すとは思っていたわ。気をつけるように伝えておくわね。、、それと、ブラックタイガー家族の事なんだけど、人間に危害を加えないなら、ミニマウンテンに住んでても大丈夫よ?ねぇ?」
「ええ、問題ないと思いますよ。本日中にミニマウンテンを立入禁止区域に指定し、ブラックタイガー家族は国定保護動物に指定致します。」
「じゃあ、手続きはシェリーに任せるわね。、、という事だから、いつでも家族に会えるわねっ♪」
「はいっ♪ありがとなのんっ♪」
「母さん、ありがとう!」
「ふふっ♪あっ、人間に危害を加えないっていっても、自分たちの安全が第一よ?ブラックタイガーを狩りに来た人間とかなら、容赦なく喰い殺して構わないからねっ♪」
「う、うん。そう伝えておくよ。」
こうして、マグロ尽くし朝食を堪能し、食後のティータイムに入った。
この後は魔法の練習だね!
まぁ、俺は周りに被害が出ないように、手加減の練習をしないとダメみたいだけど、、ね。
と、今後のことを割りと真面目に考える俺なのであった、、。




