15話 専属の
「た、ただいま〜。」
ミミーをおんぶしたままリビングに入ると、ニコちゃん・パルちゃん・ルルちゃん・シールちゃん達が、母さん指導のもと挨拶の練習をしていた。
俺が帰ってきたのにも気づかず、凄い集中力だね!、、スルーされてるんじゃないよねっ!?
「あら、おかえりなさい。、、ミミーちゃんを誘拐してきたのかしら?」
「い、いや、違うよ、母さん。ちょっと気分が悪いみたいだから、少し寝かせておいてあげて?」
「ふふっ、冗談よっ♪じゃあ、母さんの部屋で寝かせてあげましょ。今、みんな頑張ってるから、止めないであげたいのよね。」
「うん、じゃあ頼むね。」
母さんはミミーを抱っこしてリビングから出ていった。
俺も皆の様子を拝見させてもらうとしよう。
「おはようございます。こんにちは。さようなら。いただきます。ごちそうさまでした。」パルちゃん
「ありがとうございます。どういたしまして。おじゃまします。よろしくお願いします。お元気で。」ニコちゃん
「なまむぎ、なまごめ、なまたまご。」ルル
「バス、ガス、ばくはつ。バス、ガス、ばくガス。バス、ガス、バスバス。」シール
ふむふむ。ルルちゃんとシールちゃんもちゃんと喋れるようになったね!
2人は早口言葉で、口の動きを滑らかにする練習のようだが、、シールちゃん。早口言葉は苦手のようだね。頑張れっ!
これは邪魔しちゃ悪いな。
お昼ご飯まで後2時間、、か。
よしっ!魚を調達してくるとしよう!
「あっ、母さん。お昼ご飯の献立は何にする予定かな?」
「そうね〜。トンカツにしましょうか?みんな頑張ってるから、ご褒美にねっ♪」
「じゃあ、俺の分はみんなに分けてあげて。俺は魚が食べたい気分なんだぁ。」
「まぁっ!リュウっ!!」
「な、何?」
「母さんもお魚食べたいわっ!!もう1か月くらい食べてないもの。お金渡すから、買い占めるつもりで買ってきてちょうだいっ!!!」
「わ、分かったよ。」
こうして母から、100万GLD金貨を1枚預かり、家を出た。
どんだけ買うつもりだよ!?と、思ったかもしれないが、海辺の町や村なら大した値段ではないのだが、内陸部に入るにつれて、倍々に値上がりしていくのだ。
移送するのに、氷魔法を使える魔術師を雇う必要があるからだ。
それに良い魚は先に売れていくので、うちの村にくる頃には、売れ残った脂の乗っていない貧弱な魚ばかり。
それなのに、アジ1匹8000GLD、サンマ1匹10000GLDとかだから、頻繁に食べられるものではないのだ。
さて、早速海にいってみるとしよう。
去年の夏に家族で行った、あの島が良いな。
超豪華な最高級宿屋があって、なぜか客はうちの家族だけという、、。
船も借りれて、釣った魚をその場で調理してくれてたね!
今考えると王家の所有島で、宿屋じゃなくて別荘だったのだろう。
王家の別荘なら、メイド・料理人・警備隊が常駐しててもおかしくないもんな。
まぁとにかく!まずは別荘に行って船を借りてこなくてはなっ!!
俺は宿屋だと思っていた建物の、フロントロビーに転移した。
・
・
・
「ふぁ〜〜、、王城より楽そうだと思って志願したけど、暇すぎるのも大変よね〜。」
「そうね〜。今日もどなたも来る予定は無かったし、これなら休みでも良いと思うわ〜。」
「やぁやぁっ!メイドさん、ちょっといいかな?」
ビクビクッ!
「あっ、リ、リュウ様!?どど、どうしたのですかっ!?」
俺が話しかけると、ロビーのソファーに寝っ転がってお菓子をつまんでいたメイド2人が、バババッと立ち上がって俺の前にやってきた。
「いやぁ、魚が食べたくなったから、船を貸してもらいたいんだけど。」
「そ、それでは、すぐに準備いたしますので、少々お待ち下さいませ。」
「うんっ!」
メイドAが慌てて走っていった。
「リ、リュウ様。ローラ様は外でお待ちですか?」
「いや?俺1人で来たんだ。」
「そ、そうでございましたか。ちなみに、さっき私たちが寝っ転がっていたのは、見ましたか?」
「ふふっ♪別に母さんに言ったりしないよ。誰も来ない日なんて、休みにすれば良いのにね!俺からお爺ちゃんに言っといてあげるねっ!」
「ありがとうございますっ♪」
メイドBと話をしていると、走っていったメイドAが戻ってきた。
船の準備が整ったようで、メイド2人に案内されて船着場へとやってきた。
船への乗り口に1人の女性が待ち構えていた。
「ようこそ、リュウ様。本日、操舵手兼コックを務めさせていただきます、シェリーと申します。よろしくお願い致します。」
「よろしくねっ!あ、でも、今日は持って帰るから、料理はしないで大丈夫だからね!」
「え、えっと、、ああ、別荘の方で食べられるという事ですね?かしこまりました。」
シェリーは何か思い違いをしているのだが、説明するのも面倒なので、とりあえず出発する事にしよう。
俺が船に乗り込むと、続いてシェリーが乗り込み、さっきのメイド2人も一緒に乗り込んできた。
「では、出航致します!」
「うんっ!、、で、2人はどうしたの?暇すぎるから一緒に釣りでも〜、、とか?」
「いえいえ。私たちはリュウ様のサポートと、釣れなかった時の保険として同乗しております。」
「保険?」
「はい。私たちが釣った魚を食べていただくという事でございます。」
「ふっふっふ!俺を甘くみてると、後悔するよ?」
「ふふっ♪では、私たちと勝負致しますか?どちらが大物を釣り上げるか、、。」
「面白い!もし俺に勝てたら、お願いを1つ聞いてあげるよ!」
「分かりました。では、私たちが負けたら、リュウ様の専属メイドになりましょう。」
「オッケー!じゃあ、勝負スタートっ!」
流れで勝負する事になったが、やるからには負けたくない。
大きさ勝負ということだから、やはり狙うはアイツだ。
マッコウクジラ!!
大物になると体長70mを超えると海の魔物図鑑に書いてあったからな!
俺は魔力感知を使い、周囲の反応を確認する。
う〜む。近くの反応を見ると、大きいので8mってところだ。恐らくはクロマグロだな。
味は申し分なく美味なのだが、8mでは少々物足りない。
俺が獲物を見繕っていると、後ろの方から声が聞こえてきた。
「くっう〜!!なっ、なかなかの大物ですよっ!!あとっ、すっ、少しっ!!!そりゃーーっ!!!」
バシャーーンッ!!ビチビチビチッ!!!
「ふ〜っ!!カジキマグロで6m37cmですねっ♪」チラッ
「ま、、まぁまぁだね?それに、まだ始まったばかりだからね。」
開始わずか6分で、カジキマグロを釣り上げたメイドA。勝負を持ちかけてくるだけあって、それなりには釣れるようだな。
仕方ない。とりあえず8mを釣っておくとするか。
「あっ、リュウ様。釣れた魚は、私が冷凍させますので。」
「うんっ!その時はよろしく〜っ!」
シェリーに話しかけられ、返事をしている間に、今度はメイドBの方にかかったらしい。
悪戦苦闘しながらも、見事に釣り上げた。メイドBが釣り上げたのは、体長8m32cmのクロマグロ。
俺が釣ろうと思ったやつを先に釣られてしまった。
これはまずい。
俺は魔力感知の範囲を広げてみた。
、、むっ!!水深1250mにいるぞ!
体長16mはあるな。コレはシロナガスクジラかな?
俺は裏技を使う事にした。
魔力反応の口の中に仕掛けを物質転移させ、竿から糸へ糸から針へ俺の魔力を流し、電気ショック!!
失神した魚なんて、リールを巻いていくだけで釣り上げられる。
少々ズルいかもしれないが、俺は負けず嫌いなんだ。仕方ないんだ。
ドシャーーンッ!!!ピクッピクッ、、ピクッ
「ふ〜っ!!シロナガスクジラで、16m24cmかぁ〜っ!思ってたより小さかったなぁ〜!?」チラッ
「リュウ様。それは反則ですよ?」
「えっ!?なっ、何のことかなっ!?」
「雷属性の魔法を使いましたよね?」
「そ、そそっそんな事ないよっ!?な、何か証拠でもあるのかなっ!?」
「証拠、、ですか?そうですね、、海面を見ていただければ分かるかと思います。」
「えっ?」
メイド達に言われて、俺は海面に目をやる。
海面には無数の魚が浮かび上がっていた。
原因はもちろん電気ショックだ。
糸からも放電してたんだから、こうなるのは当然だよな。
「バレてしまっては仕方ない。、、すみませんでしたーっ!!」
「潔く罪を認めて謝罪をされては、これ以上は何も言えませんね。」
「許してくれる?」
「もちろんです。まずはこの魚達を回収してしまいましょう!」
船から網を投げ入れ、船を右往左往させて失神魚を回収して回った。
回収した失神魚だけで漁獲量約20tで、カジキマグロ・クロマグロ・シロナガスクジラを合わせると、30tを超える大漁であった。
船着場に戻り、別荘で使う分の魚10tを分けて、残りを家の庭へと物質転移で送り届けた。
「突然来たのに、色々協力してくれてありがとね。楽しかったよ♪」
「リュウ様。私たちのお願いを1つ聞いてくださると言ってましたよね。」
「覚えてた?」
「もちろんですっ♪」」」
「えっと、シェリーも、、だよね。じゃあ、1人ずつ言ってみて?あくまでも、俺が叶えられる範囲でだからね?」
「分かっています。では私、アンナからのお願いは、リュウ様の専属メイドにして頂くことです。」
「あれ?専属メイドはアンナ達が負けたらって言ってなかったっけ?」
「ええ、そうでございますね。たまたま私のお願いも、リュウ様の専属メイドだっただけでございます。ふふっ♪」
「そ、、そか。」
「では、次は私、バニーからのお願いは、リュウ様の専属奴隷にして頂くことです!」
「はい、却下。」
「即答ですかっ!?」
「そりゃそうだよ!そんないかがわしいお願いは、叶えられませんっ!!」
「チッ。、、じゃあ私も専属メイドでお願いします。」
今、舌打ちしなかった!?まぁ、第一希望が通らなかったんだから、仕方ない、、かな?
「じゃあ最後に、私シェリーからのお願いは、リュウ様の専属ペットにしていただk、、
「却下!!」
「冗談ですよっ♪私はリュウ様の専属家庭教師になりたいですね!」
「家庭教師?シェリーは何か得意なものはあるの?」
「そうですね〜、、。基本的な事は人並み以上にこなせます。得意なものですと、家事・戦闘・魔法・鍛冶・錬金といったところでしょうか。」
「ふむふむ。なかなか興味深いね!でも、3日後には寮に入っちゃうから、専属メイドも家庭教師も入れないんじゃない?」
「いえいえ。王族・貴族の方々は、メイド・家庭教師を連れて入寮なさるのが通例でございます。」
「そうなの?それなら大丈夫だね!じゃあ3人のお願い、叶えてあげるよっ♪とりあえず明後日の夜に迎えにくるから、準備しておいてね?」
「はいっ♪」」」
「じゃ、またね〜っ♪」
スッ、、
「えっ!?リ、リュウ様が消え、た?」
「今のは夢だったのかしら、、。」
「3人同時に同じ夢を見るなんて、あり得ないと思うわ。きっとリュウ様は、特別な力を持っているのかもしれないわね?」
「そうね。これはあまり人に話さない方が良いと思うわ。」
「ええ。私たちだけで留めておきましょう。」
俺が転移で帰ったのを見た3人は、口止めされる前から秘密にすると約束を交わしたのだった、、。




