11話 試してみる
聖剣の試し斬りをしたくて堪らない俺は、どうやってパーティーを抜け出すか策を練ってみる。
まぁ、誰にも言わずにいなくなると、大騒ぎになってしまう可能性があるので、俺に甘い父に伝えておくとしよう。
俺は何故かメイド服を着ている父の元へ。
「おっ!ようやく話せるな!リュウ、結婚おめでとうっ!!大切にしてやるんだぞ!?」
「うん、ありがとう!、、父さんは何をしてるの?メイド服なんて着て、、。」
「あ、ああ〜、これはな?母さんが面白がって父さんに着せてだなぁ。それに陛下が便乗して、『メイド服を着てるなら、メイドらしくしっかり働くのじゃ!』ってな?」
さすがは親娘ってところか。まぁ、娘を取られた腹いせにって感じもするが、、。
「そうそう。黙っていて悪かったな。母さんが、リュウには王族のしがらみなんて関係なく、自由にのびのび育ってほしいからってな。だから、あまり怒らないでくれると嬉しいんだが、、。」
「別に怒ってなんていないよ。確かに驚きはしたけどねっ♪」
「ははっ、そりゃそうだなっ!!」
「それでね、父さん。お爺ちゃんからも入学祝いに剣をもらったんだけど、試し斬りしたいなぁって。ちょっと外に出ても良いかな?」
「やっぱりリュウも男の子だなっ♪父さんも騎士だった頃は、武器を新調したら試したくてうずうずしていたもんだ。まぁ1時間くらいなら構わないぞ!ただし、林の中に入るのはダメだからな!?」
「うん、分かってるよ。それじゃあ、ちょっとだけ行ってくるねっ!」
「ああ、気をつけてな!」
俺はこそこそとリビングを出て、二階の部屋へ。
「ふむ。部屋まで改造されてるね。ベッドだけで6帖あるぞ?、、っと。まぁ部屋の検証は後にして、早く試し斬りに行かなきゃなっ!!」
と、ベッドの枕元に置かれていたクラウ・ソラスを手に取り、月下美人を右肩口にくるよう斜めに装備し、クラウ・ソラスを左肩口にくるよう斜めに装備してから、俺はこそこそと家を出る。
よしよし、誰にも気付かれてないね?
「リュウっ♡どこで試し斬りするっ?」
「あっ、ニコちゃん!どうして分かったの?、、って、夫婦の誓いかな?」
「うんっ♡」
玄関を出て門扉の所まで来たのだが、そこでニコちゃんが待ち構えていた。
まぁ、ライオスキング化も試してみたいから、ついでに教えてもらうとしよう!
「じゃあ、南の岩場に行こうか?大抵の物は斬れるみたいだから、岩石で試し斬りだね!」
「うんっ♡」ぴょんっ♡
ニコちゃんが例の如く、抱っこされ態勢で飛び跳ねてきたが、俺も慣れたもので難なくキャッチ!
お姫様抱っこにて、家から南に徒歩15分に位置する、岩場へと向かう。
そこの岩場には、魔物は2種類しからおらず、そのどちらもこちらから攻撃を仕掛けなければ、向こうから攻撃してくる事はないそうだ。
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岩場に到着した俺たちは、試し斬りするのに丁度良さそうな岩石を探す。
「リュウ〜っ!これなんか良いと思うっ♪」
「どれどれ〜?、、うんっ♪それじゃあ試してみるから、ちょっと離れててね?」
「うんっ、頑張って♡」チュッ♡
ニコちゃんを降ろすと、ホッペに激励のキスをしてくれた。
これはカッコいい所を見せなければなっ!!
ニコちゃんが少し離れた岩の上に座ったのを確認してから、右手に月下美人、左手にクラウ・ソラスを持ち、岩石の前に立つ。
大きさ的には3m(縦)×2.5m(横)×3m(高さ)くらいで、材質はよくある鉄鉱石だ。
「さぁっ、いくよっ!!」
俺はタッと岩石に詰め寄り、2本の剣をXに振り抜く。
フォンッ!!
という空気を斬り裂いた音が聞こえ、何かを斬った感触も感じず。
ふむ。カッコつけるつもりが、まさかの空振り、、?振り抜いた姿勢から戻るのが恥ずかしいぞ!?
と思った矢先、岩石は4つに分かれて崩れ落ちた。
あまりの斬れ味に、斬られた事が分からなかったようで、自重によって斬り口が広がって崩れた、、という感じのようだ。
振り返って、ニコちゃんに向かってピースを送ると、タタタッと駆けてきてそのまま飛びついてきた。
「リュウっ♡カッコよかったっ♡」ペロペロッ♡
「ありがとねっ♡それにしても、手応えが無さ過ぎて、ちゃんと斬れたのか分からないっていうのが難点だね。斬れていれば良いんだけど、斬れてなかったらモロに反撃を喰らうことになりそうだよ。」
「ん?リュウは魔法使える?」
「ま、まぁ火を点けるくらいなら。」
「なら、相手の魔力の流れを感じれば、斬れてるか斬れてないか分かるっ♪」
「えっと、、魔力の流れって?」
「どんなものにも魔力は循環してる。斬れば魔力の流れも切れる。斬り口から魔力は外に出て大気に霧散する。その大気中の魔力の影響を受けて変異したのが魔物っ!」
「ふむふむ。で、魔法が使えるなら、魔力の流れを感じられるって事だね?」
「うんっ♡」
「よし、ちょっとやってみるね!」
俺はニコちゃんを見つめたまま固まった。
魔力というのは、目には見えないが無意識のうちに感じることができる。まぁ、自分の魔力に限ったことだが、、。
それを自分以外の魔力も感じるとなると、なかなか難しい。
俺は意識を集中して、ニコちゃんの魔力を探す。
「自分の魔力と違う色を探す感じっ♡」
難航しているのを察したニコちゃんは、コツというかニコちゃんのやり方を教えてくれた。
色、、か。俺自身の魔力を色に例えると、原色の黄色って感じだな。まぁこれは人によって違く感じるのだろうが、、。
ふ〜む、、あっ!!ニコちゃんの魔力を見つけた!!ニコちゃんは原色の青って感じだね!
ニコちゃんの中を、血液とは逆方向に流れてるのが分かる。
これが魔力の流れ、、。
俺は続けて、周りの魔力も感じとるように集中してみた。
ふむふむ。岩は薄い茶色って感じで、、おわっ!!ニコちゃんが座ってた岩の隣の岩、ロックゴーレムじゃんっ!!全然気づかなかったよ、、。
、、なるほど。これを練習すれば、索敵が容易になるんだね!
「ふふっ♡さすがニコの愛するリュウっ♡もう分かるようになったっ♪」
「いや〜、ニコちゃんのおかげだよ。見つけやすいように、魔力を少し放出してくれてたからね!ありがとっ♡」チュッ♡
「うふふっ♡」
お礼にホッペにキスして、2人で照れ笑い。
「ちなみに、色とか色の濃さってさ?そういう事なんだよね?」
「うんっ♡色はそのものの性質、濃さは魔力の強さっ♪」
「だよね!じゃあニコちゃんは、水属性の魔法が得意って事なんだね?」
「そうっ♪リュウは雷出せるはずっ♪」
「う〜ん。まだ雷属性魔法の魔法陣なんて、見たことないからなぁ。」
「魔法陣?そんなのニコは知らないけど、普通に使えるよ??」
「えぇっ!?どっ、どうやって!?」
「えっと、どんな魔法が使いたいか頭の中で考えて、魔力を練って形にするっ♪」
「ちょっと、やってみてもらっても良い?」
「うんっ♡じゃあ〜、雷〜っ♪」
ニコちゃんは5m先のロックゴーレムを指差した。
次の瞬間!!
ピカッと蒼白く輝く稲妻が、ロックゴーレムに命中し、バラバラに砕いたのである。
「す、凄いね、、。魔法名も言わずに、一瞬で使えるなんて。」
「ん〜??リュウだって出来るっ♡」
「そ、そうかなぁ。出来る気が全くしないんだけども。」
「大丈夫っ♡頑張って♡」
「わ、分かったよ。やってみるね!」
俺は目を閉じ、ニコちゃんが言っていたのを思い出して、頭の中でイメージする。
激しく降り注ぐ豪雷。
手に魔力を集め、それを形にするように集中し、5m先の岩石を指差して放出する。
ドガドガァアァァンッ!!!ドガガガアァァンッ!!!
バリバリバリバリッバリバリッビリッビリッ、、ビリッ、、
「あっははっ♪リュウっ、凄ーいっ♡」
「そ、、そだね。俺も自分でビックリしてるよ。」
「ねっ?出来たでしょっ♡」
「う、うん。そ、そろそろ帰ろっか?」
「うんっ♡」
俺はニコちゃんをお姫様抱っこして、家に帰る事にした。
村の南にある岩場が更地になったのを村人たちが知ったのは、3日後の事であった、、。
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家に帰ってきた俺たちは、帰りながら打ち合わせした通り、こそこそとリビングに戻り、何食わぬ顔でパーティーに復帰する。
皆、まだまだ食事に夢中で、誰も気づかなかったようだ。
「リュウっ、ライオスキングに変身しなかったね!」
「あ〜、、雷がちょっと強力すぎて、すっかり忘れてたよ。また今度やってみよっ♪」
「うんっ♡じゃあニコは、お肉食べてくるっ♪」
「いってらっしゃい♪、、さて、俺はちょっと休憩しようかな。」
と、リビングの掃き出し窓から外を見ると、カフェテラスにテーブルと椅子が設置されていた。
カフェテラスまで増設したのか。
まぁ少し試してみたい事もあるから、ちょっと行ってみるか。
俺はグラスに氷とメロンソーダを注ぎ、カフェテラスのテーブルの席に座った。
さっきはちょっと、イメージが強すぎたからあんな事になってしまったが、弱いイメージなら問題無いはず!
そう、試してみたい事というのは、無詠唱魔法のことだ。
本来なら、魔法陣からその魔法の理を読み解き、理解し、発動に必要なワードを言いながら魔力を練って、魔法名を口にすることで発動する。
ニコちゃんから教わったやり方は、本来のやり方を無視して、何も言わずに発動できるが故に、無詠唱魔法と呼ばせてもらう事にしたのだ。
さて、とりあえず失敗しても被害が少ない属性が良いよな。
火属性だと、村が火の海になるかもしれないからダメ。
雷属性はさっき失敗して、どれくらいの被害になるか分かったからダメ。
風属性も、巨大竜巻で村が更地になる危険があるな。ダメ。
水属性でも大津波で更地になるか。ダメだな。
土属性も、村が地割れに飲み込まれてしまうからダメ。
残りは聖属性と闇属性なのだが、夜が昼間のように明るくなったら目立ちすぎるし、既に暗いのに更に暗くしても、魔法の効果が分かりづらいからダメだ。
ふむ。全滅じゃねっ!?
なんとか上手く練習したいんだけどなぁ〜。
、、いや?待てよ。
アレなら周囲に被害も出ないし、成功すれば超便利になる!!
よ、よし。やってみるぞ!
俺は秘かに、魔法の練習を始めるのであった、、。




