10話 月下美人とクラウ・ソラス
「リュウっ♡ちゃんと喋れたっ♪」
「リュウさまっ♡聞いていてくれましたか?」
「うんっ、2人とも凄く上手になったね!」
「えへへっ♡」てへへっ♡」
パーティーが始まり、俺のところにやってきたニコちゃんとパルちゃん。
俺は褒めながら2人の頭を撫でてあげる。
さて、まずはニコちゃんに確認しておかなきゃいけない事案があるね。
「それでね、ニコちゃん。俺の妻って、まだ結婚してないよね?」
「ん?もう結婚してるっ♡ほらっ?」
そう言うと、ニコちゃんは左手の甲を俺に見せてきた。
ふむ。母さんの予測は的中していたようだね。
「えっと、これの名称とか、効果を教えてくれる?」
「うんっ♡これは夫婦の誓い。生涯を相手に捧げる証っ♡互いの気持ちが分かる、浮気も分かる、能力を共有する、、だよっ♡」
「なるほど。初めの方は体感的に分かってたんだけど、最後のがよく分からないね。能力共有って事は、俺も爪を自在に伸縮出来るってことかな?」
「そうじゃなくて、ニコの力とリュウの力を合わせた力になるって事だよっ♡」
「ふむふむ。でも能力って事は、力以外もってことだよね?」
「うんっ♡だから、人間と1対1なら、リュウに勝てる奴はいないっ♡」
「ま、まぁそうだろうね、、。」
ライオスキングをソロ討伐できる人間なんて存在しないからな、、。
「あっ、それと!人型になったのもコレの効果なのかな?」
「うんっ♡能力共有の副産物で、擬人化出来るようになった♡リュウもライオスキングになれるっ♡」
「えっ!?それはちょっと面白そうだね!!後でやってみよう!あっ、そうだ!ライオスキングの14才って、人間でいうと何才くらいなのかな?」
「う〜ん、、ライオスキングの平均寿命が240才くらいだから〜、、5才くらいっ♪」
「そっかぁ。とりあえず、結婚については16才になるまで待ってくれるかな?この国のルールでは、16才まで結婚できないんだよ。」
「ふぉっふぉっ♪リュウよ、そんなの気にしないでいいのじゃ!特別に6才での結婚を許可するのじゃ〜っ♪、、皆の者!リュウ・ナポリタンとニコ・ナポリタンの結婚は、今この場にて正式に認められたのじゃ!!これに文句を言う輩は、国家反逆罪で市中引き回しの後、打首に処すのじゃっ!!」
ふむ。超見切り発進で話を進めたね。
俺は国の法律を盾に、結婚の話を先延ばしにするつもりだったんですよ!?
まぁ、、遅かれ早かれこうなってたか。
「ニコちゃん。なんか結婚しても大丈夫になったみたいだから、改めて言わせてもらうね?、、一緒に寝て起きて、一緒にご飯を食べて、一緒に幸せになってほしい。結婚しよう。」
「う、うんっ♡」グスッグスッ
「ふふっ♪泣かないで。大好きだよっ♡」
「うっ、うんっ♡ニコも大好きっ♡」
俺はニコちゃんを抱き寄せ、優しくキスをした。
唇を離すと、ニコちゃんが涙を流しながら照れ笑いして、それを見た俺もなんだか恥ずかしくなってきて照れ笑いを浮かべたのであった。
皆から祝福の拍手をもらい、雰囲気は祝賀パーティーから結婚披露宴になっていった。
パルちゃんにも色々と聞きたいことがあったのだが、まぁパーティーが終わってから聞くとしよう。
「リュウっ、ニコちゃんっ、結婚おめでとうっ♪母さんは嬉しくて泣いちゃったわっ♪」
「ありがとっ♪まぁ、結婚したといっても、すぐに何か変わるわけじゃないから、今まで通り朝起こしてくれると嬉しいですっ!!」
「ふふっ♪それは母さんじゃなくて、ニコちゃんにお願いするべきねっ?」
「うんっ♡ニコが起こすっ♡」
「頼もしいわねっ♪それで、パルちゃんはどうするつもりかしら?」
「えっと、どうするっていうのは?」
「リュウのお妾ちゃんにするのか、愛人ちゃんにするのか、第二お妃ちゃんにするのかって事よっ♪」
「い、いや。パルちゃんはシルバーウルフだよ?まぁ、ニコちゃんもライオスキングなんだけど、せめて人の姿になってもらわない事には、色々と問題あると思うよ。」
「そうね〜、、。学校で擬人化魔法を覚えるまで、パルちゃんとの事は保留にしておきましょっ♪」
「えっ?擬人化の魔法なんてあるの?」
「ええ、あるわよ?ただ超難解の魔法陣を読み解かないといけないらしくて、擬人化魔法を使える人間は今はいないわね。歴史的に見ても、過去500年で3人しか記録されてないわね〜!」
「500年で3人、、か。まぁそれでも、パルちゃんならきっと大丈夫な気がするよ!」
「そうねっ♪歴史上初の人語を使えるシルバーウルフですものねっ♪」
「うんっ♪」
「リュウっ♡ニコはお肉が食べたいっ♡」
「ふふっ、ニコちゃん?食べさせあうのは2人きりの時にした方がいいわよ?」
「ん〜?なんで??」
「だって、リュウがニコちゃんに食べさせてたら、パルちゃん・ルルちゃん・シールちゃん・ギン・シバ・ウル・母さんにも食べさせてあげる事になって、リュウは凄く大変よ?ニコちゃんは、愛するリュウに大変な思いをさせたい?」
母さんにもなの!?
「させたくないっ!!」
「ふふっ♪そうよね?」
「うんっ♡じゃあ自分で食べてくるっ♪」
「それが良いわねっ♪たくさん食べておいでっ♪」
「うんっ♪」
そう言うと、子牛の丸焼きに向かっていったニコちゃん。
一瞬で一口大の大きさに分断された子牛の肉を、その爪で突き刺して食べ始めた。
「あらあら。今のがテーブルをズタズタにした原因なのね?」
「そ、、そだね。」
「ふふっ♪明日は母さんにニコちゃんとパルちゃんを貸してくれるかしら?色々とルールやマナーを教えてあげなきゃね。」
「あっ、うん!俺もそのつもりだったんだよ!今のままだと、いつ殺傷事件を起こしてもおかしくないからね、、。」
「ふふふっ、任されたわっ♪」
母に明日の事をお願いして、今度はお爺ちゃんの元へ。
「お爺ちゃん。学校の事なんだけど、ニコちゃんとパルちゃんも行けるようにしてくれたのって、お爺ちゃんだよね?」
「ふぉっふぉっ♪はて、記憶にないのぅ?」
「ふふっ、ありがとね!」
「何のことか分からんが、これからはちょくちょく城に遊びに来てくれたら嬉しいのじゃっ♪」
「うんっ♪それとね、母さんから聞いたかもしれないんだけど、ニコちゃんの親の遺体を埋葬してあげたいんだ。力を貸してくれるかな?」
「ふぉっふぉっ♪リュウは優しいのじゃ♪それなら心配しないでも、今晩中に掘り終わるから、明日ニコちゃんを連れて行くといいのじゃ。ちゃんとお別れをしてからが良いからのぅ。」
「そうだね。お爺ちゃん、ありがとっ♪」
「ふぉっふぉっふぉっ♪、、おっと、忘れるところじゃった。ワシからの入学祝いじゃ。」
そう言うと、後ろから騎士がきてお爺ちゃんに一振りの剣を渡した。
お爺ちゃんはそれを俺に手渡すと、剣の説明を始めた。
「この剣の名前は『月下美人』なのじゃ。代々ナポリタン王家が守り抜いてきた聖剣じゃな!その昔、大天使様が使っていた聖剣じゃと伝えられておる。大切にするんじゃぞ?」
「そっ、そんな大切な剣、俺が貰っちゃっていいのっ!?」
「ふぉっふぉっ♪本当は練習用に、聖剣クラウ・ソラスをあげようと思っておったのじゃが、宝物庫を探しても見つからなかったのじゃ。いずれ月下美人もあげようと思っておったから、少し早まっただけの事じゃなっ♪これからは、リュウから子へ孫へ受け継いでいってくれれば良いのじゃっ♪」
「わ、分かった!ありがとう、お爺ちゃんっ!!」
俺は改めて月下美人を見てみる。
神秘的な虹色の輝きを見せる純白の鞘。
鞘から引き抜くと、細身の剣身は透き通ったガラスに薄っすらと月明かりが入り込んだような、とても幻想的なものであった。
鍔元には月下美人の花が一輪、蕾の状態で彫られている。
刃渡り136cmの片手直剣であるが、いくらでも振っていられるほどに軽量である。
しかし、剣身が透き通ってるなんて、割れちゃったりするんじゃないの?
「ふぉっふぉっふぉ!月下美人は割れるどころか、何をしても傷一つ付かないのじゃ!アダマンタイトの剣で試したのじゃが、アダマンタイトの方がスッパリ斬られてしまったからのっ♪」
「それは凄いね!アダマンタイトって、ミスリルよりも丈夫な金属なんだよね!?」
「そうじゃのぅ。まぁ、丈夫さは上じゃが、アレは重いからのぅ。どちらが優れているかは、人それぞれなのじゃっ!」
「確かにそうだよね。ちなみに、練習用にくれようとしてた、聖剣っていうのはどんな剣だったの?」
「ふぉっふぉっ♪クラウ・ソラスは不敗の聖剣と呼ばれておってな?決して逃れられない一撃を放つのじゃ!」
「逃れられない一撃?」
「そうなのじゃ!剣に魔力を通わせると、閃光の一撃を放てるのじゃ!!光を躱せる者などいないじゃろ?まぁ、魔力消費が激しすぎて、うちの魔術師団長でも、一回使ったら魔力切れで失神してしまうのじゃ。」
「なるほど〜。でも、そんな剣じゃ練習するたびに失神しちゃうんじゃ?」
「魔力を通わせ無ければ、なんの問題もないのじゃ。斬れ味は月下美人の次くらいに良いからのぅ。見た目もなかなか良かったしのぅ。」
「ふ〜ん?どんな感じだったの??」
「なんて言えば伝わるかのぅ。朝日のような剣じゃったなぁ。」
ん?なんか同じような感想に覚えがあるぞ?
「お、お爺ちゃん。そのクラウ・ソラスって、刃渡り120cmくらいの片手直剣で、重さ的には月下美人を少〜しだけ重くした感じだったり?」
「ふぉっ!よく分かったのぅっ!!」
「あ、あはは。」
そりゃ分かりますよ!!二階の部屋に置いてあるんだからねっ!!
はぁ〜、王城の宝物庫から勝手に聖剣を持ち出すなんて、バレたら処刑されちゃうんじゃないの!?
「ふふっ♪クラウ・ソラスならリュウにあげたわよっ?」
「ふぉっ!やっぱりローラが持ち出したのじゃ〜!」
「別に良いでしょっ?私が今のリュウくらいの時にお母さんから貰った剣なんだからっ!」
「それはそうじゃが、城を出る時に置いていくって言ってたのじゃ〜っ!」
「置いていくとは言ったけど、返納するとは言ってないわ。置かせてもらってた剣を持ってきただけよ?それに、私があげてなくても、お父さんからリュウにあげるつもりだったなら、同じ結果になったじゃない。まぁ、月下美人っていうおまけが増えたみたいだけどねっ♪」パチッ
母はそう言いながらウィンクをしてきた。
どうやら、こうなると予想していたようだね?
自慢の美母だぜっ!!
こうして、母の計らいで2つの聖剣を手に入れた俺は、試し斬りしたくてしょうがないです!
どうやってパーティーを抜け出してやろうか、、。




