はじめての討伐
スキル『ショック吸収』
ある程度までの強さの物理的ダメージを、完全に無効化する。吸収の限度を超えた量のダメージは、もろに受ける(無効化できない)。自身が攻撃した時の反動も吸収できる。つまり、殴っても手が痛くならない。相手にダメージは入る。
スキル『パワー増強』
全身の筋力を1.5倍にする。重ね掛けすると、1.5×1.5×1.5×……となる。増加量が増えるということ。
「ラナ、まずどうしてここにいるんだ? 結構危険な場所だぞ」
「えーっと、まず、街を出て少ししたところであの男たちに会ってしまいました。捕まえられそうになったので逃げたんですけど、あちこち逃げてるうちに何もないここに着いちゃった、そんな感じです」
「そうか。じゃあラナは、町の場所はわかるのか?」
「大体の方角なら……」
「よし、じゃあ街に連れて行ってくれ。実は俺は旅をしていて、ここに迷い込んでしまったのだ」
もちろん、全てでっち上げだ。でっち上げだが信じて貰えそうな嘘をつく。
「わかりました! じゃあ、ついてきて下さい」
「よろしく」
ラナが歩き出すので、それについて行く。歩きがてら、ラナと少し話をする。
「マトリさんって、魔法使いですか?」
「魔法使い……とはちょっと違うな」
「そうなんですか……じゃあ、強い戦士ですか?」
「戦士ともちょっと違う」
「ふーん……でも、普通の人では全くできないことをやってましたよ。私でも見ることができないスピードでしたから」
「ラナは、強いほうなのか?」
「一応これでもBランクの冒険者ですから、そこそこは戦えますよ。あいつら数が多かったから倒せなかったんです」
「あー、そうなのか」
冒険者とは何か、全く分からなかったので、聞いてみる。
「そのー、冒険者ってなんだ?」
「あ、マトリさんって北の国の出身なんですか?」
「あー、うん。そうだ」
北の国ってなんだよ! と突っ込みたくなる。が、とりあえず話に乗っかっておく。
「北の国には冒険者はいないらしいですからね、たしかに分からないかもしれない。えーっと、冒険者は、魔物に関しての依頼を受けたり、護衛の仕事をこなしてたりします。マトリさんがしばらくこの国で過ごすのなら、冒険者になっておいて損はないですよ」
「じゃあ街に着き次第、冒険者になるよ。あと、俺実は一文無しなんだ。どうやったら金を稼げるか聞きたいんだが……」
「えーっと、魔物を狩ってそれを冒険者ギルドに売りに行けば、お金は手に入りますよ」
「じゃああれでもいいのかな」
と言いつつ俺は、向こうにいる巨大な亀を指差す。見るからにおかしいため、多分魔物だろう。
「そう……ですね。あれは魔物です。マトリさんなら討伐出来るかもしれないですね、狩りましょう」
「分かった」
「じゃあ私が囮になりますから、マトリさんは隙を突いて……マトリさん?」
彼女が何か言っているが、聞かずに飛び出す。
(スキル『炎生成レベル5』『空気押し出し』『バネ化』『パワー増強』『熱耐性レベル5』)
青白い炎を生み出し、吹き出す空気に乗せる。空気の勢いを強くし、万が一熱が跳ね返ってきた時のためにバリアを張る。
亀に向けて放つが、残ったのは亀の甲羅と完全に灰になった植物たちだった。やり過ぎたかもしれない。
「マトリさーーーん、なんで先に行っちゃうんです……か……?」
ラナが口をあんぐりと開けている。
「えーっとマトリさん、何をしたんですか?」
「燃やそうとしたんだけど……燃え尽きちゃった……良くないかな……」
「…………やり過ぎです」
やり過ぎが確定しました。
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