ふぁーすとみっしょん:獣人ケモ耳少女をきゅうしゅつせよ!
『ヴァルハラの園』には、レベルと職業、種族という概念がある。種族は外見を、職業は戦闘スタイルを左右させる。レベルは、そのプレイヤーのステータスや、技・スキル・魔法の数を左右する。なお、レベルは最大100で設定されている。
真鳥が取っていた職業『スキル使い』は、最も頭を使う職業だ。無数にあるスキルをうまく選び、戦闘時にうまく組み合わせれば、真鳥のような最強になることが可能だ。しかし、スキルをうまく選べず、戦闘時もうまく組み合わせられなければ、百レベルでも雑魚になってしまう。
真鳥は複数のスキルを、複数同時に掛け合わせることで超広範囲、超高威力の攻撃を繰り出していた。そのため、プレイヤーたちから『魔王』と呼ばれていたのだ。
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『飛行』で空を飛びながら、真鳥は下を見下ろした。『鷹目』で遠方もはっきりと見えるため、空を飛びながらでも地上が確認できる。
(ん?)
小さな人影が、大きな人影複数に追いかけられているのを見つけたような気がしたため、真鳥はそちらに向かう。距離を縮めてから、『うさ耳』を起動させる。これで遠くの音も聞こえるはずだ。
「……やめて! 誰かいないの!? 助けて!」
「……怖くねえよ、嬢ちゃん。大人しく捕まんな」
「……いやぁぁ!!」
小さな人影……ケモ耳かな?……を、大柄な男たちが追いかけている。小さい方は嫌がっている。
(相手の戦力がどれくらいか分からない。だけど、このままだと寝覚が悪くなる)
「よし、戦力確認も兼ねて助けに行くか」
そう言って真鳥はものすごいスピードで男たちに接近していった。
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「よっしゃ、獣人ゲット!」
「これを売り捌けばかなりの金額になるな! 2、3日は飲みまくれるぜ!」
汚い男の声を聞きながら、少女は絶望にも近い気持ちでいた。必死に逃げていたせいで何も無いところに来てしまい、挙げ句の果てに捕まってしまったのだ。
「そんじゃお嬢ちゃん、体チェック入りまーす」
「おう! 初めて奪ったれや! ギャハハハ!」
下半身丸出しになった男がこちらに近づいてくる。何をされるか分かり、体が強張る。
「緊張すんなって。ちょーっと痛いだけだから。ほら……ゴブァッ!」
あと少しで犯される、そう思った矢先、目の前の男が文字通り弾け飛んだ。
「おいテメェ、なにしやが…ゲフッ」
「なんだ…ガハァッ」
あっという間に目の前の男たちが吹き飛ばされた。
「怪我はないか?」
誰かがそう言いながらそばに来てくれた。この人が男たちを倒したんだと、感覚的に理解した。そして、彼が白馬に乗った王子様に見えた。
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(『パワー増強』『掛ける3』『速度上昇』『掛ける5』『ショック吸収』)
怪我をせずに、相手に最大のダメージを与えられるスキルの組み合わせで、まず下半身丸出しのオッサンを殴る。と、威力が高すぎたのか完全に殺してしまったので、残りを弱めの力で殴ることにする。
(『ショック吸収』)
これで男たちを全員殴り倒し、少女の方を向いて言う。
「怪我はないか?」
「ひゃ、ひゃい! 助けてくださってありがとうございました!」
「無事ならいい」
「あの……名前を教えてもらってもいいですか!?」
「あ、うん。マトリです」
「マトリさんですね! えーっと、マトリさん、あなたについて行きたいです。ついて行ってもいいですか?」
「道案内とか、色々してくれるならいいよ」
「わかりました! 私、ラナっていいます。よろしくお願いします」
「うん、よろしく……」
かなり無理矢理仲間になった感は否めないが、尻尾と耳がピョコピョコ動いて可愛いので、許そう。とにかく、こうして道案内的な、獣人の少女の仲間が出来た。
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