093話 ◇◆吸血鬼◆◇
「君は誰なんだい?」
俺がそう質問しようとすると——。
「カーミラ! あなた、こんなところで何してるのよ?」
魔王リーシャがびっくりした様子で尋ねた。
「え? 魔王様がヴァルハラ城から居なくなってたので、こうして会いに来ただけですよ?」
カーミラはつんとした態度で言った。
「クロ、彼女も俺同様——魔王様の配下です」
ナルは俺に耳元でそっと囁いた。
「はぁ、それにしても食べ物だけだと……ちょっと力が出ないわね」
そう言いカーミラは俺の前に立った。
「あなた指出して」
「指……?」
俺は訳もわからずカーミラの言われた通り——人差し指を彼女の前に差し出した。
するとカーミラは口を開けた。
「おい、この子! ……まさか」
カプッとカーミラは俺の指を噛んだ。
ゴクッと喉を動かしているカーミラ。
「っ!?」
クロは離そうと手を振るがカーミラは離さずそのまま指を加えている。
「この娘、見ての通り吸血鬼よ」
「え? 何……!? あなたレベルカンストのテイマー なの?」
カーミラは指を噛みながら心の中で呟いた。
カーミラは口で咥えていた俺の指を離し、
「……っぷはぁ。 この人の魔力凄いわね……。 癖になりそう」
そう言ってトローンとした瞳で俺を見つめる。
「いきなり指噛まれるなんて聞いてないよ!」
俺は噛まれた指を見ながら言った。
カーミラは血を飲んだり吸うとその人の情報が分かるの。
今のであなたの職やレベルとかはバレたわね。
「他の事も分かりますけど——あまり良い気分にはならないので、基本的には他の情報は意図的には覗かないですけどね……」
カーミラは澄み切ったピンク色の髪をくるくると指で回しながら言った。
「俺の血を吸ったのも情報を読み取るため?」
俺は吸血鬼カーミラに尋ねた。
「いいえ? 単純にお腹が空いてたのと……ちょっとした好奇心です♪」
カーミラはニコッと笑顔で答えた。
カーミラの——何の悪びれる風もなく笑顔で言われたことに俺は少々イラッとしたが必死に冷静さを保つ。
「カーミラはこれからどうするの?」
「そうですね。 魔王様が拉致されたわけでもなさそうなのでそこは安心しましたが——」
カーミラはリーシャの方をチラッと見ながら話を続ける。
「面白そうなので私も暫く一緒に着いていこうかなと思ってますけどダメですか?」
「私に決める権利はないわ」
リーシャは俺の方を見ながら言った。
「はぁ……分かったよ」
俺はワガママな人が、また増えるのかと——ため息をついた。
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