092話 ◇◆カーミラ◆◇
少年セータは、おじいさんが治った事への嬉しさのあまり、気付いてなかった。
俺が別れ際セータの家に大きな荷物を置いて行った事を——。
「あれ、これクロさん達の忘れ物……」
セータが中身を開けると——袋の中の大量のJと一緒に手紙が入っていた。
「え?」
セータは、メモ紙のような小さな手紙を読み涙を流す。
「クロさん……」
ーーー
セータへ
この金貨は洞窟を一緒に探索した報酬です。
これからのおじいさんとの生活に役立ててください。
次は”調合師”になった君と会えるのを楽しみにしています。
クロより
ーーー
「クロさんそういえば宝石の使い道は結局、どうするのですか?」
「あの宝石はもう無いよ。 売って金貨に変えた」
俺の発言に皆びっくりする——。
「……もしかしてその金貨は」
アリサが尋ねた。
「セータの家に忘れて来たよ。 今頃セータも、気づいてる頃かもね」
「そういう事ですか」
アリサは俺の返事に対してクスッと笑った。
「えぇ!? 忘れて来たのですか? クロさんって意外とうっかりものですね」
ミーチェがニヤニヤしながら言った。
「魔王様、なんだかミーチェさんって色々と残念な方ですね……」
「そういう事は、思っても口にしないものよ」
ため息を吐きながら魔王リーシャは、側近のナルに言った。
——その頃、魔王城ヴァルハラ——
「魔王様ったら……私が魔王様の代わりに、魔王会議の為に遠出してる間に城から居なくなってるなんてね。 おい、門番」
「はい、カーミラ様! 何の御用でしょうか?」
城の門番は、背筋を伸ばし敬礼をしながら尋ねた。
「魔王様とナルはどこに行ったのかしら?」
「カーミラ様。 魔王様とナル様は——クロ・エンジュ様という男と一緒に地上にいます」
「ふぅーん。 地上ね。 あの魔王様が地上に出るなんてね……。 有難う、ちょっと探してくるわ」
カーミラは背中から翼を出し、城から飛び去った。
ーーー
「クロ、これは何かしら?」
魔王リーシャはつんつんと突きながら俺に尋ねた。
「それは、鶏の唐揚げだね。 食べ物だから突いたらダメだよ」
「これ食べたいわ」
「確かにお腹も空いて来ましたね」
フラワーがお腹をさすりながら言った。
「リーシャが突いてるし……しょうがない。 どうせ買わないとね。 おじさんこの唐揚げください」
俺はため息を吐きながらおじさんに注文する。
「あいよ1人前、100Jだ」
俺はフラワー達の分のJも支払い唐揚げを食べようとすると——。
「にいちゃん、ちょっと待った。 100J足りねぇ」
「え? きちんと人数分払ったぞ?」
「いいや一人分足りねぇよ」
俺は首を傾げながらもう100J出した。
その後隣を見ると——。
「ここの唐揚げ美味しいわね」
見たこともない少女が俺の隣でパクパクと唐揚げを頬張っていた。
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