077話 ◇◆マール◆◇
「……弱点は輪っか。 分かったわ」
魔王リーシャはテレパシーで聞いた弱点をーー指揮官のカラスに伝えに言った。
アリサはフレイムの方を見て告げる。
「フレイム、堕天使の弱点は頭の上の輪っからしいですよ」
ーー
「アスタロトがやられたか」
堕天使アザゼルが呟く。
「アスタロトの事なので、自滅でもしたのでしょうか?」
堕天使アポリオンが笑いながら言う。
「いや、多分弱点がバレた恐れがある」
「弱点がですか?」
「そうだ……お前も注意しておけよ」
「分かりました」
「何かあったのですか?」
堕天使サマエルがアポリオンに近づいてくる。
「アスタロトがやられたらしい。 お前も気をつけた方がいいぞ」
「へぇ……。 それは大変ですね」
「お前ばらけるって指示があっただろ。 さっさと移動しろ」
「そうだったな、ついつい……」
そう言い、サマエルはアポリオンの輪っかに手を伸ばす。
アポリオンは間一髪で気付き、首を横に振りサマエルの手を躱す。
「お前……サマエルじゃないな」
「ははは、気づくのが遅いでしょ。 サマエルって堕天使。 あの人、もういないわよ」
サマエルの姿がーーそこにはなく、女が立っていた。
「私、マールって名前なの。 もうサマエルなんて呼ばないでね。 さっきまで変身のスキルを使っていたの」
「サマエルはお前に倒されたのか?」
「知らないわよ。 突然いなくなったんだもの」
「いなくなった……? あいつめ裏切ったのか」
サマエルは自分の拳を握りしめた。
「さて始めましょうか……」
ーー
「後、弱点を知らないのはマールさんか」
「クロ様、あそこで戦ってるのってマールって人ですか?」
ビートは指を差した先にーーマールとアポリオンが戦っている。
ほぼ互角な様だ。
「よし、ちょっと行ってくるよ」
俺はマールの元へ走り出した。
「ちょ、巻き込まれますよ!? クロ様ーー」
「あなた、めんどくさいわね。 それは何? 砂鉄?」
「ふっ……。 そうだ、俺のスキルは砂鉄を自由に操る事が出来る。 よく分かったな、マールとか言う女」
「自由に砂鉄を操り状況に応じて形を変えるからーー本当にめんどくさい……」
「むしろ俺の砂鉄を全て躱している事を褒めてやろう」
「マールさん!」
「クロ君、危ないから近寄らない方がいいわよ」
「堕天使の弱点は頭上の輪っかだよ!」
「貴様、どうしてそれを……」
「さっきの戦いの後、仲間が教えてくれたんだ」
「あの魔族か……。 殺してやる!」
アポリオンは側近のナルに向かって行く。
「ねぇ、逃げるの?」
アポリオンの背後に俺は立った。
「お前なぜ……俺に追いついて背後に?」
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