042話 ◇◆抜け道◆◇
「護衛を雇った冒険者やボディーガードが私を止められないのは無理ないわ。 付いてきて」
そう言うと王女レナは俺の手を引っ張る。
「ほら、見てみてこれよ!」
「これ、どっかに続いてるのか?」
どうやら抜け道のようだ。
「これお城の地下に繋がっていてね。 私たまたま城で遊んでた時に見つけたの。 たまに抜け出して街に遊びに来てるわ」
「これ、他の人は知ってるのかい?」
「知らないわ。 私以外使っているのを見たことないもの。 昔は使ってたみたいだけど、今は使う人がーーいないみたいね」
レナは、俺に微笑みかけた。
「この近道はあなたと私の秘密よ。 誰にも言わないでね」
「どうして、初対面の俺に教えてくれたんだい?」
「私ね、誰も信じてはくれないけど。 心が見えるの」
「心が見えるのかい?」
「そう。 ーー冷たく今にも心が崩れそうな位、落ち込んでる人。ーー赤く燃え上がるように怒ってる人。ーー悪い事を考えてるドス黒い人も多いわね」
レナは指で数えながら今までに、どんな心があったのか教えてくれた。
「それでね。 あなたは凄く明るい心だったの。 でもあなた、相手に嫌な思いをさせまいと考えすぎて、逆に怒られる事もあるみたいね。 フフッ」
「うっ…」
思い当たる節しかない。
「もう少し仲間を信じて、はっきりと言うのもいいと思うわよ。 今の仲間が信頼できるならね」
かつての仲間なら、こんな事を言われても何とも思わなかったであろう。
「仲間を信じる……。 そうだな」
俺はそっと呟いた。
「綺麗で明るい心の人だったら信頼できると思って、私は声をかけたの」
「自分がいい人だとは思わないが、信頼されるのは案外悪くないものだな」
「ふふっ、あなた私と会って初めて笑ったわね。 そういえば私は名乗ったけど、あなたの名前を訊いてなかったわ」
「クロ・エンジュ。 クロでも何でも好きなように呼んでくれ」
「そうね、他の姫達をーー呼ぶときは誰にでも様付けで呼んでたの。 壁を感じる気がして嫌だったわ。 だから、クロって呼ぶわね」
「それなら俺も、レナと呼ぶよ」
「えぇ、むしろ嬉しいわ。 ちょっと街を見て回りましょ」
グイッと俺の裾を引っ張るレナ。
「はいはい、わかったよ」
◻︎
「へぇー。ここがレストランなのね。 あちらのお店とは何が違うのかしら?」
「あそこは酒場だね。 お酒を飲むのがメインの店だね」
「お酒って美味しいのかしら?」
「レナはお酒飲まないの? ワインとか嗜んでそうだけど」
「私、お酒飲んだ事ないの。 周りの人は、みんな美味しいと言っているからーー気になってはいるのだけれど……」
「なら今度、皆で酒場に行こう」
「ーー本当? 行った事ないから凄く楽しみだわ」
「私ね……この後どうしても行きたいところがあるの。 クロ、エスコートしてくださる?」
「全く……。 わがままなお姫様だ」
いろんな場所に振り回された俺は笑いながら呟いた——。
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