028話 ◇◆2人の勇者◆◇
前の街からだいぶ離れたクロ達は、次に目指していたスフィアにたどり着く。
——スフィア——
「ここがスフィアかー。 それにしてもほんとに暑いな」
「そうですね。 バカンスなどの観光地として有名らしいです」
フラワーが雑誌の情報を元にーースフィアについて説明している。
「あっ、つめたーい」
「あ、もしかして今頭痛くなりました? その頭がキーンって痛くなるの。 アイスクリーム頭痛って、言うんですよ!」
アリサはかき氷を頬張り頭を抱えている。
その横でドヤ顔で言うミーチェ。
「あなた、無駄な知識は持ってるのね……」
アリサはパクパク頬張りながら言う。
もちろん悪気は——ないようだ。
「無駄なんて……ひどい」
「君達、この剣を持ってる人を見かけなかったかい?」
「え? あなた誰?」
「僕? ユウトって名前なんだけど一応勇者をやっているよ」
青年は笑顔で答える。
「おい、ちょっとまてよ」
ガタンと立ち上がり、アリサはかき氷を食べていたスプーンをーー勇者の首に突き立てる。
「私はあんたに命を狙われてーー背中に剣を突き刺された。 覚えているだろう?」
「背中を突き刺した? 僕が?」
勇者はキョトンとする。
「それは僕ではないね。 そもそも僕は背中に傷をつけるのもつけられるのも嫌いだ。 男なら正面で堂々と勝負だろ」
勇者は恥ずかしげもなく答える。
「いや、ありえないんだよ。 間違いなくーーその剣で刺されたのだから」
アリサは勇者を睨んでいる。
「わかってないなぁ。 だからさっき聞いただろ? この剣を持ってる人を見かけなかったかい? ってさ」
「どういう事?」
アリサはそのまま睨みながら質問をした。
「元々、勇者の剣って2本あるんだよね。 1本だと勇者が死んだ後、次が見つかるまでいなくなるでしょ?」
「そんなの当たり前よね」
「うんうん、そしたら——その間街を守る存在がいなくなる。 そうなれば色んな種族の生き物に、人間の命が弄ばれるようになる。 だから常に勇者がいる状態を作れるように——2本目は魔王が作って持ってきたんだ」
「ま、魔王?」
俺達は驚きを隠せなかった。
「そうだよ? 人間と敵対してる魔王もいるけど。 協定を結んで仲良くしてる魔王もいるんだ」
勇者は剣を見ながら話を続ける。
「魔界の剣を改造して、精巧な勇者の剣を作ってくれた。 それをもう1人の現勇者に渡したんだ。 あ、名前はカナって言うんだけどーー」
「なるほどね」
俺達は2人の会話を聞き、ある程度状況が分かった。
「で、そのカナを探しているってわけ。 あいつ極端な考え方してるからさ。 人間の言葉が通じないものは敵。 殺していいって思ってるんだよ」
勇者はあたりを見渡しながらーー話を続ける。
「最近その行動があまりにもひどいから勇者の剣を取り上げるか。 カナを拘束して魔王の元に届けるか。 どちらかを魔王直々に頼まれてね」
「話を聞いてると、どっちが正義かわからなくなるな」
俺は呆れながら言った。
「だからもし同じ剣を持ってる勇者を見つけたら教えてくれ。 アリサちゃんだっけ? その姿だったらカナも襲ってこないだろう。 同じ勇者として本当に申し訳ない」
そう言い残しーー勇者ユウトは走り去っていった。
下にある☆☆☆☆☆是非是非応援お願いします!




