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119話 ◇◆トウカイ島 繁華街◆◇


「クロ様ーートウカイ島来てご飯食べましたけど、この後どうしますか?」


 フラワーは俺にくいくいと袖を引っ張ってきた。


「ご飯の後に…? 袖を引っ張って、これはもしかして甘えてるのか? 俺を、誘っているのか…?」


 と俺も男なので変な事を考えてしまうが、こんな無垢な少女がそんなことする訳ないだろ! と自分の理性がツッコミを入れてきた。

 必死で俺は冷静を装った。


「この島で何かしら先手を打っておきたいよな」


「そうですね…。 戦争なんて始まってほしくないですもんね」


 やっぱり俺の勘違いだったようだ…。

 俺は、少し残念なようなホッとしたような気持ちになりながら話を続けた。


「兵士を募集している場所が分からないし、もう少し情報が欲しいな」


 俺達は、居酒屋鳥魔族でーーシロが大聖母マリアを狙う明確な理由が、タリスカーが魔界に対して敗戦した場合の保険だけではーーない事が分かったものの…。

 それ以上の目新しい情報を得る事は出来なかったのだ。


「おい、そこの兄ちゃん達」


「ん? 俺の事かい?」


「あぁ、そうだよ! ここ、トウカイ島には観光に来たのかい?」


 俺達は、トウカイ島の繁華街を歩いていると、出店のオーナーであろうおじさんに声をかけられた。


「その通り! この島の食べ物や飲み物本当に美味しくて、時間かけて来た甲斐がーーあったってもんだ!」


 戦争を止めるためにきたなんて言えるはずもなく、俺はおじさんの話に合わせることにした。


「兄ちゃん達、もしかして今日の夜の“あれ”目当てで来たんだろう?」


「“あれ“?」


「おいおい、今日の夜はこの島が魔界から返還された記念日だぞ? “トウカイ式典“という名のお祭りだよ! 女どもは浴衣とかいう綺麗な服を着たりーー男どもは、はっぴを着て皆で踊るわけよ! 花火も上がるし。 その日しか出ない出店もある! この島一番のお祭りだぜ? それもこれもーー初代勇者様が魔界を統べていた当時の大魔王を討伐してくれたおかげだよな!」


 昔、勇者の剣がまだ1本だった時代ーーそもそも勇者なんて概念が存在していなかった時代。

 この地上界は魔界の住民で統治されーー地上人は奴隷扱いを受けていた時代があったらしい。

 俺もこの御伽噺(おとぎばなし)はあまり詳しくないが、まさか本当にそうだったのか。

 するとマリアが俺の隣で


「この話、何か感じる事ありませんか?」


 と小さな声で囁いてきた。


「特に感じることもないけど。 だいぶ昔の話だろ? それにこれは御伽噺だろうし…」


数ある小説の中でこの作品を読んでいただいたこと本当にありがとうございます。


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