105話 ◇◆懐かしさ◆◇
「入れ違い!?」
「アイム様は魔王の中でもせっかちで有名ですよ」
側近のナルがびっくりする俺に耳打ちする。
「これでも急いで出た方だと思ったのだけど…」
「カーミラとイチャイチャしてるからよ」
「リーシャ助けてくれなかったくせに…」
リーシャだけではないけど、と心の中で思ったが今は、そんなことはどうでもいい。
行き先はどうやら槍を持った女性も、聞いてないようだ。
「うーん、一度魔王城アモンに戻ろうか」
「ちょっと待ってください」
聴いたことのない女性の声がした。
凛々しくなぜか落ち着く声のする方に俺は振り向いた。
「あぁ!? あなたは!」
ミーチェが頭を下げる。
「そんなにかしこまらなくてもいいのよ」
「ミーチェ、この人誰?」
「この人が大聖母マリア様ですよ!」
確かに高価な生地で作られてそうな聖衣に、身を包みーー透き通った茶色髪、今にも全てを見透かされそうな青い瞳、大きな杖を持っている。
噂でしか聞いたことがなかったが、噂通りの容姿だ。
「ちょっとクロ様を借りてもよろしいかしら?」
俺だけなら中にある十字架にも何の問題もない。
それに俺も一度この人と話がしてみたかったし。
初めてあったはずの彼女になぜか俺は少し懐かしさを感じていた。
それがなぜなのかは分からない。
そんな事を1人で考えている中、俺は大聖母マリアの仕事部屋に来ていた。
びっくりしたのは彼女の仕事部屋は、普通の事務室のような感じの見た目でーー豪華な家具や物などもなく意外とシンプルな部屋だった。
「ふふっ、ここね。 唯一の落ち着ける場所なんだ」
「2人になるとキャラも変わるんだな」
と言いかけたけど俺は言わずにーーそうなんだ、へぇ〜という素振りを見せていた。
「クロくんであってるよね? 君どこまで覚えているの?」
質問の意味がわからない。
それに初対面のはずなのにこの態度、本当に大聖母マリアなのか?
「あぁ、その反応で分かったよ。 全然覚えてないんだね。 これからの旅で色々なことを思い出していけると思うよ。 それこそ私のことも」
「何が何だかわからないんだけど、俺に何か用事があったんじゃないのか?」
「クロくん、これから用件は言うけどーーその前に君の最初の名前だけは、どうしても伝えたくてね。 もう忘れてるだろうけどさ。 君の最初の名前」
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