一月・2
「取り敢えず、玲華はマスクしとけ」
「うん」
持ってきて貰った薬箱の中から、未使用のマスクを取り出して玲華に差し出す。
そういやこの頃のマスクは使い捨てではなく、布マスクの内側にガーゼを併せて使うんだったな。
生前(?)にCovid-19やらが流行り始めた時、マスクを買い占めて高額転売を試みたクズが湧いたが、その当時の首相がこの布マスクを各家庭に無料で配布すると発表した途端、何故か路上で売られ始めたのを思い出す。
転売屋と、窃盗品売買の温床と化しているフリマサイトは疾く逝ね。
「ねートーちゃん」
「うん?」
「まさかとは思うけど、朝から何もお腹に入れてない状態でお薬飲むの?」
「そうだが?」
まぁどんな薬も空腹時は避けて、「食後」とか「食間」とかに服用するよう注意喚起は書いてあるが。
だってしょうがないじゃない、食欲皆無なんだもの。
「一応牛乳を飲んでおけば、胃壁は荒れないし、必要な栄養素は大体摂れるけどな」
「それはマズイでしょー!」
確かに、脂肪分に包まれた薬剤は胃では溶けず、効きが遅くなることは知ってるが。
「何かちゃんとお腹に入れた方がいいってー」
「えーとじゃあ、お袋がご飯だけは炊いていってくれてる筈だから、おにぎりが食いたい」
「りょーかーい!」
「みそ汁も鍋ごと冷蔵庫にあると思うから、探してみてくれ」
「はいな!」
ドバタタタタタ!
いやだから、階段でこけるなよ?
あと申し訳ないが、部屋にいなくなってくれたお陰で、感染す心配とかが無くなり、ちょっとだけホッとしている俺がいる。
と。
「ごめんくださーい」
階下から山口の声がした。




