十二月・番外編(4)
────パーティー済んで一息ついて。
「トコロでアンタさぁ」
「なんだ?」
低量だったとは言えアルコールの入った頭に、青野の声がやんわり届いた。
「前にも言ったけど、ホント変わったよね」
「それはボクも思ってた」
「私もー」
「そうか? 自分じゃそういうのって、本気で分からないんだけど」
そこで指折りしつつ、まず松元から具体例を挙げ始めた。
「まず女子の話をバカにしたりせず、ちゃんと最後まで聞いてくれる」
「「うんうん」」
なんだキミタチ、仲良しか。
「口だけじゃ無くて、体を使って動いてくれる」
「「そうそう」」
まぁ青野の場合はな。
「いつの間にかドラムの達人になってた。すごい、ズルイ」
「「あるある」」
これは山口だ。こないだのライブの時の件だ。
「ほーふな知識をお持ちなのに、それをひけらかすことをしない。優しい。カッコイイ」
「「言われたー!」」
おおぅ、やめてくれみんな。その攻撃はオレに効く。
「でも最大の長所はねー」
「困ったときに助けてくれた後、テレとか一切無いのよねー。すごく自然体」
「なーんか女の子慣れしてるって言うか?」
「あっ、それは従弟妹が多いからって聞いたよ」
「夏の時に見た、確か美幸さんもだったっけ」
「えっ、知らないオンナの名前です……」
どうやらオレそっちのけで、女子会らしきものが始まったっぽい。
四人が輪になってお互いの手札を出しつつ、いかに自分が助けられたか、あるいは救われたかの話で盛り上がっている様だ。
と言うか、若干不穏なセリフが混じっていた気が。
ちょうどいい。
オレはトイレに行く風でその場をコッソリ後にし、ちょっと夜風に当たりに行くことにした。
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流石に寒いな。だがお陰でアルコールが一気に飛んだ気がする。
心身共にシャッキリし、頭までもがよく冷えた。
前世の記憶は、実はもう大分薄まっている。と言うか歴史改変し過ぎたせいで、当時の記憶には無かった事象が増えまくり、今はその対処だけでいっぱいいっぱいなのだった。
そもそも、あの「差出人不明のチョコレート」が現在までの原動力だったとは言え、これだけ不確定要素が増えてしまうと、なんかもうどうでも良くなってしまったまである。
「予定調和って、思っていたほど簡単じゃないんだなー。なんせ最後まで、一つたりとも間違えられないんだから」
それがもう盛大に狂っている。
その中でも最大の誤算が、玲華と涼木さんの登場だ。
当時、玲華とはもちろん別の学校だったし、涼木さんもバレンタインのイベントに絡む事は、本来無かったのだから。
机上の空論。
こんな風に、実際に過去と比較できるなんてこと、本来あり得ないんだよな。
そんなことが出来たらもう、それは時間そのものを観測できる視点、神様の目なんだよ。
───要するに、考えたって仕方が無いってことだ。
来年のバレンタイン当日、過去と同じように差出人不明のチョコレートが届き、そして女子達から一斉に嫌われでもしない限り。
ぶるっ。
うーむ、色んな意味で流石に冷えたな。
勝手口から屋内へ戻ると、廊下からでもわーきゃーと、姦しい声が耳に入ってくる。
それをはいはいと聞き流しつつ、オレは温かな空間へと戻ることにした。




